The Japanese Journal of Antibiotics
Online ISSN : 2186-5477
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61 巻, 1 号
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  • 吉田 早苗, 古賀 哲文, 角田 正代, 小林 寅喆, 松崎 薫, ト部 恵理子, 大美賀 薫, 長谷川 美幸, 佐藤 弓枝
    2008 年 61 巻 1 号 p. 1-17
    発行日: 2008/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    2006年3月から9月の期間に, 関東周辺の医療機関における感染症患者から分離した新鮮臨床分離株に対する各種抗菌薬の抗菌力について検討した。検討菌株は好気性グラム陽性球菌420株, 好気性グラム陰性桿菌および球菌520株, 嫌気性グラム陽性球菌30株, 嫌気性グラム陰性桿菌60株, 合計1030株を用いた。Streptococcus pneumoniaeおよびHaemophilus influenzaeは小児由来株と成人由来株に区分して検討した。試験薬剤はpanipenem (PAPM), imipenem (IPM), meropenem (MEPM), biapenem (BIPM), doripenem (DRPM), cefozopran (CZOP), cefepime (CFPM), sulbactam/cefoperazone (SBT/CPZ) を用いた。
    PAPM, IPMおよびDRPMはmethicillin-susceptible Staphylococcusに対して抗菌力が強く, すべての菌の発育を≤0.06μg/mLで阻止した。またpenicillin-resistant S.pneumoniaeを含むStreptococcus属に対し, PAPMは検討したcarbapenem系薬のなかでもっとも抗菌力が強く, MIC rangeは≤0.06~0.12μg/mLであった。
    Enterobacteriaceaeに対してはMEPMの抗菌力が強く, PAPMはIPMと同等の成績であった。Extended-spectmm β-lactamase産生株を含むEscherichia coli, Klebsiella species, Proteus speciesに対しては検討に用いたcephem系薬のMICは高値を示したが, carbapenem系薬のMICは低値であった。H.influenzaeに対してはPAPMの抗菌活性はIPMと同等であった。
    嫌気性菌に対してはすべてのcarbapenem系薬がほぼ同等の強い抗菌力を示した。
    以上の結果から, PAPMは1993年に市販開始後, 13年以上を経過した時点においても強い抗菌力を有しており, 各種領域感染症の抗菌治療薬として有用性の高い薬剤と考えられた。
  • 患者背景について
    石川 秀樹, 織田 成人, 村田 厚夫, 島崎 修次, 平澤 博之, 相川 直樹
    2008 年 61 巻 1 号 p. 18-28
    発行日: 2008/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    目的: 本邦で「深在性真菌症の診断・治療ガイドライン」 (2003年2月) が発表されたあとの救急・集中治療領域における真菌症に対する診断・治療の現状を明らかにする。
    方法: 2003年5月から2004年8月まで, 日本クリティカルケア真菌症研究会に参加した救急・集中治療機能を持つ全国15の医療機関において診療した真菌感染が疑われる症例 (抗真菌薬投与症例あるいは抗菌薬不応発熱症例) について, 患者背景, リスクファクター, 治療内容, 患者転帰などを集計, 検討した。
    結果: 評価対象症例125例のうち男性が87例 (69.6%), 女性が38例 (30.4%) であった。平均年齢は59.6歳で, 36.8%が70歳以上であった。血管内カテーテル留置例は78.4%であった。抗真菌薬は89例に投与されており, 初回投与, データ登録期間中ともにフルコナゾール (FLCZ) の使用頻度が最も高かった (74.2%, 80.9%)。抗真菌薬投与前に投与されていた抗菌薬はカルバペネム系抗菌薬が最も多かった (41.6%)。血液培養は85例 (68.0%) で, 監視培養は108例 (86.4%) で実施されており, 真菌は血液培養では10例 (11.8%), 監視培養では72例 (66.7%) に検出された。血液培養ではCandida albicansが最も多く, 10例中5例 (50.0%) に検出された。監視培養でもC. albicansの頻度が最も多く, 72例中40例 (55.6%) に検出された。データ登録終了時に解熱したものは65.6%であった。データ登録終了時, データ登録開始から28日後に生存していたものは, それぞれ78.4%, 69.6%であった。
    結論: 救急・集中治療領域における患者は, 深在性真菌症のリスクファクターを有する症例が多く, 対象とした125例中血液培養陽性例は11.8%, 監視培養陽性例は66.7%であった。検出真菌の多くはCandida属であり, 抗真菌薬としてFLCZが最も多く使用されていた。
  • ガイドライン準拠, 非準拠と転帰への影響
    織田 成人, 石川 秀樹, 村田 厚夫, 島崎 修次, 平澤 博之, 相川 直樹
    2008 年 61 巻 1 号 p. 29-41
    発行日: 2008/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    目的: 2003年2月に初めて発表された本邦における「深在性真菌症の診断・治療ガイドライン」 (以下ガイドライン) が救急・集中治療領域における深在性真菌症の診断, 治療に与えた影響と患者転帰への影響について検討する。
    方法: 2003年5月から2004年8月まで日本クリティカルケア真菌症研究会に参加した, 救急・集中治療機能を持つ全国15の医療機関において診療した真菌感染症が疑われる症例 (抗真菌薬投与症例あるいは抗菌薬不応発熱症例) について, 患者背景, リスクファクター, ガイドラインに対する意識, 診断, 治療内容, 転帰などを調査した。これらをもとに, 患者に対する診断と治療の流れが本ガイドラインで推奨されている診断と治療に準じたものであったかどうかをそれぞれ判定した。さらに, 本ガイドラインで推奨されている抗真菌薬及び投与量により治療が行われていたか否かを調査し, 本ガイドライン準拠, 非準拠別の転帰についても検討した。
    結果: 評価対象例125例のうち55.2%に本ガイドラインを意識したという回答が得られた。本ガイドラインを適応した場合の診断は, 真菌症と確定診断されたもの10例 (8.0%), 臨床的真菌症と診断されたもの3例 (2.4%), 疑い例35例 (28.0%) であった。残りの77例 (616%) は, 非真菌症あるいは真菌症であるか否かが判定不能な症例であった。本ガイドラインに準拠した治療が行われていたのは, 25例 (20.0%), 本ガイドラインに準拠した治療が行われていなかったのは23例 (18.4%) で, 77例 (61.6%) は非真菌症あるいは真菌症であるか否かが判定不能な症例であった。本ガイドラインに準拠した治療が行われたか否かを判定できた症例が少なくなった理由として, 本ガイドラインに記載されている「広域抗菌薬不応の発熱3日以上」が抗真菌薬投与の前提となっていることが大きく影響していた。本ガイドラインを意識したかどうか, 及び治療の内容が本ガイドラインに準拠していたかどうかにより, スタディ終了時の転帰 (生存・死亡) に有意な違いはなかった。ICU在室日数は, 本ガイドラインに準拠した治療の方が本ガイドラインに準拠しない治療よりも長かったが, 有意な差はなかった。
    結論: 本ガイドラインは半数を超える登録患者の治療時に認知されていたが, 実際には本ガイドラインに準じた診断・治療が行われているのは少数例であることが明らかになった。その理由として, 経験的治療の対象となる真菌症疑い例における「広域抗菌薬不応の発熱3日以上」という項目が大きく影響しており, 本項目の妥当性について今後検証していく必要があると考えられた。
  • 2008 年 61 巻 1 号 p. 71
    発行日: 2008/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
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