Sultamicillin (SBTPC) はAmpicillin (ABPC) とβ-Lactamase阻害剤のSulbactam (SBT) をエステル結合させTosyl塩とした薬剤で, 同一分子中にABPCとSBTを当量ずつ含有し, 本邦ではその経口錠剤が1987年7月から発売され, その後, 小児用製剤として細粒が開発された。
そこで, 8歳5カ月から11歳5カ月の男児6例中各3例に本剤の細粒それぞれ10, 15mg/kgを食直後に経口投与し, 血漿中濃度, 尿中濃度及び回収率を測定した。又, 臨床効果の判定できなかった2例を除いた咽頭炎5例, 扁桃炎5例, 喉頭炎1例, 気管支炎1例, 肺炎8例, 猩紅熱1例, 腸チフス1例, 膿痂疹16例, 節2例, 膿瘍6例, リンパ節炎1例, 尿路感染症10例, 計57例に10平均投与量27.1mg/kg, 分2~4 (分2は1例, 分3は53例, 分4は3例) で, 平均9日間投与し, その臨床効果, 細菌学的効果をみると共に, 皮膚・軟部組織感染症から分離された
Staphylococcus aureus22株中12株のβ-Lactamase産生能と接種菌量10
8, 10
6CFU/mlにおけるSBTPC, ABPC, SBT, Methicillin (DMPPC), Cloxacillin(MCIPC), Cephalexin, Cefaclorの7剤のMICを測定, 脱落症例を加えての副作用及び臨床検査値への影響を検討したところ, 次のような結果を得た。
1. 10, 15mg/kg投与群におけるABPCとSBTの平均血漿中濃度はいずれも投与1時間後に最高濃度を示し, 各投与量群の同時間でのABPC濃度は各々2.34, 5.57μg/ml, SBTではそれぞれ1.87, 4.66μg/mlで, いずれの投与群でもABPCに比較し, SBTの濃度はやや低く, 症例ごとにみても同様で, 両投与群間にDoseresPonseがみられ, 濃度曲線下面積でみても同様であった。両投与群におけるABPCの平均半減期は各々1.93, 1.12時間, SBTではそれぞれ1.97, 1.22時間で, 各投与群でのABPCとSBTの平均半減期は類似し, 症例ごとにみても同様の傾向を示したが, 10mg/kg投与群は15mg/kg投与群よりABPCとSBT共に平均半減期は延長した。
2. 血漿中濃度を測定した同一症例での尿中濃度ではABPC及びSBTが最高濃度を示した時間は2~4時間が多く, 10, 15mg/kg投与群の投与後6時間までの平均回収率はABPCでは各々62.4, 72.0%, SBTではそれぞれ57.8, 65.4%で, 両投与群共にABPCがSBTの回収率に比較し, やや高かった。
3. 臨床効果は57例中50例が有効以上で, 有効率は87.7%と良好であった。
4. 細菌学的効果は35株中30株が消失し, 消失率は85.7%で, 臨床効果に類似した。
5.
S. aureus12株のβ-Lactamase産生能ではすべてにその産生がみられ, 5株41.7%がLow producer, 7株58.3%がHigh producerであつた。同じ12株の接種菌量10
8, 10
6CFU/mlにおける薬剤感受性では, いずれの接種菌量でもSBTPCのMICはABPCと類似か小の傾向を示し, MCIPC, DMPPCに次ぐかDMPPCと類似のMICを示した。
6. 副作用は発疹と下痢が1例, 下痢だけが2例に出現した。なお, 本剤の服用を嫌う症例はなかった。
7. 臨床検査値では好酸球増多が23例中2例8.7%に出現した。
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