1940年, 抗菌物質としてSulfanilamideの出現以来, 腹膜炎の救命率は著るしく改善され, 今日多くの抗生物質が腹膜炎の化学療法として使用されるようになつてきた。腹膜炎の起炎菌は, ほとんどすべて腸管由来であり, 常に2, 3の菌種の混合感染であると考えられるので, 腹膜炎と診断されたならば, 直ちに広範囲抗菌スペクトルの抗生物質投与を開始し, 手術の準備を進めねばならない。
その抗生物質は, 原則として経静脈的投与でなければならない。なぜならば, 筋肉内注射では十分な血中・組織内濃度が得られず, また腹腔内直接撒布は, 強度の術後癒着と腹腔内膿瘍を残すことになるからである。そのため, 大量投与が可能で, 肝・腎障害の少ない, 広範囲抗菌スペクトルをもつ抗生物質としで, 合成ペニシリン系薬剤が選ばれるわけであるが, その腹水 (膿性滲出液を含む) への移行を検討した報告はほとんどない。
われわれは, 今回, このような合成ペニシリン系抗生物質の中でも, 広範囲な抗菌スペクトルをもち, 大量投与の可能なSulbenicillin (SBPC) を使用して腹膜炎の治療をおこなv・, そのさv・, この抗生物質が果して腹水に十分に移行し, 有効に作用していたかどうかを, 腹腔ドレナージ術後10日間, 詳細に観察し, 腹膜炎の化学療法における静脈内投与の有用性を検討した。
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