1. アミカシン (AMK) に対する各種臨床分離菌の
in vitroディスク感受性結果の信頼性について30μg (昭和, 自家製), 10μg (自家製) ディスク阻止円直径をMIC実測値と比較し考察した。特にNCCLS 3分類評価法, 昭和ディスク4分類評価法, British Society for Antimicrobial Chemotherapyのin vitro MIC break pointについて吟味, 検討を行った。
2. 北野病院 (大阪市) において, 昭和63年に無作為に分離された269株について究明した。AMKのMICは,
Staphylococcus aureusの分離株の53%が≤3.13μg/ml, 90%が≤12.5μg/ mlにあった。Staphylecoccus epidermidisは45%がMIC≤156μg/ml, 69%が≤125μg/mlにあった。Enterococcus faecalisすべてがMIC≥50μg/mlにあった。Escherichia coli, Klebsiella pneumoniaeすべての菌株がMIC≤3.13μg/mlに, Proteus mirabilis及びProteus vulgarisの MICも大半が≤3.13μg/mlにあつた。Pseudomonas aeruginosa, Serratia marcescensの大半も MIC≤12.5μg/mlにあった。Citrobacter spp., Enterobacter aerogenesのMICは≤1.56μg/ml であった。
3. 30μg, 10μg AMKディスク阻止円直径とMIC実測値とはよい負の相関関係を示した (T=-0.807~-0.897)。昭和ディスクテスト4分類評価法は (+++) MIC≤3μg/ml,(++) MIC >3~15μg/ml,(+) MIC15~60μg/mlにBreak pointsが, NCCLSの3分類法は (S) MIC ≤16μg/ml,(R) MIC≥32μg/mlに, 又British Society for Antimicrobial Chemotherapyは MIC4μg/mlと16μg/mlにBreak pointsが設定されている。昭和, 自家製30μg AMKディスクにおいて, 4分類評価法ではFalse positiveが10.8~13%, False negativeが1.5~3.3%認められた。3分類法評価ではFalsne positiveが5.2~6.3%, False negativeが1.1~1.9%みられた。10 μg AMKディスクに3分類法を適応するとFalse positive 1.9%, False negative 5.6%であった。British Society for Antimicrobial ChemotheTapyの分類を30μg AMKディスクに適応すると False positive 10.8~13.4%, False negative 0.4~2.2%, 10μgディスクではFalse positive 2.2%, False negative 5.6%がみられた。
4. MRSA (Methicillin-resistant S. aureus) のアミノ配糖体系抗生物質に対する昭和ディスク感受性テストではゲンタマイシン, トブラマイシン, シソマイシン, ミクロノマイシンなどは (卅) と (-) のBimodal分布を示し耐性株が多かつたが, AMK, ネチルマイシン, アルベカシン, イセパマイシンなどはほとんどすべての菌株が (+++)(++) のMonomodal分布を示した。
5. 本邦において推奨されているAMKの成人に対する常用投与量は, 1回に100~200mg (筋注又は静注) である。この場合, 血中のAMKレベルは6~19μg/mlとなる。このような薬動力学的知見, 加えてAMKの血中濃度がin vitro MICの8倍以上の時, 臨床効果が最大となる事実を考慮し,
in vitro MICのBreak pointを評価した場合, 昭和ディスク4分類評価法と British Society for Antimicrobial Chemotherapyの2点分類評価法は妥当であり, NCCLSの3分類評価法より優れていると思われる。
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