1992年6月から翌年5月までの間に全国11施設において, 尿路感染症と診断された患者から分離された菌株を供試し, それらの各種抗菌薬に対する感受性を測定した。尿路感染症患者から分離された菌の内訳は, グラム陽性菌が35.4%であり, その多くは
Enterococcus faecalisであった。グラム陰性菌は64.6%であり, その多くは
Escherichia coliであった。
Enterococcus faecalisに対してはAmpicillin (ABPC), Imipenem (IPM), Vancomycin (VCM) の抗菌力が最も強かった。
Staphylococcus aureusに対してはVCMの抗菌力が最も強く, ついでArbekacin (ABK) が良好であったが, 他の薬剤は弱かった。ABKのMIC
90が1991年度 (0.5μg/ml) と比較すると1992年度は2μg/mlで若干の抗菌力の低下があると思われる。
Staphylococcus epidermidisに対してはABKの抗菌力が最も強く, ついでCefotiam (CTM) とVCMであった。
Streptococcus agalactiaeに対しては, ほとんどの薬剤が良好な抗菌力を示したが, Amikacin (AMK) とMinocycline (MINO) は抗菌力が弱かった。
Citrobacter freundiiに対しては, IPMが強かったが, Cefozopran (CZOP), AMKも良好であった。
Enterobacter cloacaeに対してはIPM, Gentamicin (GM) が強く, ついでCPFX, TFLXが良好であった。
E.coliに対しては, ほとんどの薬剤が良好な抗菌力を示したが, ペニシリン系薬剤は弱かった。
Klebsiella pneumoniaeに対しては, ほとんどの薬剤が良好な抗菌力を示し, 1991年度と比較すると全般的に薬剤の抗菌力は良くなった。
Proteus mirabilisに対しては全般的に抗菌力は良好であったが, ABPC, MINOは弱かった。
Serratia marcescens, Pseudomonas aeruginosaに対しては全般的に抗菌力は弱かった。
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