The Japanese Journal of Antibiotics
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52 巻, 8 号
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  • 堀田 国元, 石川 淳, 石井 亮一, 斎藤 文子, 吉良 清子, 荒川 宜親, 池 康嘉
    1999 年 52 巻 8 号 p. 525-532
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    平成10年に日本各地の病院で臨床分離されたアルベカシン (Arbekacin; ABK) 耐性菌43株を対象に, 菌学的性状, アミノグリコシド耐性, およびメチシリン耐性遺伝子mecAとABK耐性遺伝子aac(6') /aph(2') の存否について試験を行った。菌学的性状試験によって33株は黄色ブドウ球菌, 10株は腸球菌と同定された。ABK耐性に関しては, 0.5%食塩含有普通寒天平板にABKを添加して試験した結果, 100μg/ml以上の高度耐性を示した株は7株 (MRSA2株, 腸球菌5株) で, 臨床情報の23株と大きく異なった。2つの耐性遺伝子に関しては, 両方一度に検出できるPCR条件を確立・調査した結果, 黄色ブドウ球菌33株はすべてmecA陽性 (すなわちMRSA) で, うち23株がaac(6')/aph(2') 陽性であった。腸球菌はいずれもmecA陰性で, 5株がaac(6')/aph(2') 陽性であった。
    以上から, 日常的臨床検査によりABK耐性MRSAと判定された株は再同定の必要があること, ABK耐性の的確な検定法を確立する必要性があること, ABK耐性MRSAの判定にとってmecAaac(6')/aph(2') の検出が必要で, PCRによる同時検出法は有用であることが認められた。
  • 川田 晴美, 北山 暁子, 福岡 隆, 石井 千加, 阿部 友美, 角田 正代, 土門 春樹, 大屋 哲, 宇津井 幸男
    1999 年 52 巻 8 号 p. 533-540
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    ペニシリン感性および耐性肺炎球菌に対するcefbodoxime proxetil (CPDX-PR) のin vitroおよびin vivo抗菌力を他の経口β-ラクタム薬, cefdinir (CFDN), cefditoren pivoxil (CDTRPI) およびfaropenem (FRPM) と比較検討した。
    臨床分離penicillin-susceptible Streptococcus pneumoniae (PSSP: MIC of penicillin G, ≤0.063μg/ml), penicillin-intermediate S. pneumoniae (PISP: MIC of peniciliin G, 0.125~1μg/ml) およびpenicillin-resistant S. pneumoniae (PRSP: MIC of penicillin G, ≥2μg/ml) に対するCPDX, CFDN, CDTRおよびFRPMのinvitro活性 (MICs) を寒天平板希釈法により測定した。これらのPSSP27株, PISP23株およびPRSP23株に対するCPDXのMIC80はそれぞれ0.032, 1および8μg/mlであり, CFDN (0.063, 4および8μg/ml) と同等か優れ, CDTR (0.016, 0.5および1μg/ml) およびFRPM (≤0.008, 0.25および1μg/ml) よりも劣っていた。
    ddY系, 雄マウスの肺内にPRSPの臨床分離株9605, 9601 (血清型6型) または10692 (血清型19型) を経鼻的に接種して感染を惹起した。投与量2~50mg/kgで感染18, 26, 42および50時間後に薬剤治療を行った。感染66時間後にマウス肺および血液内の生菌数を測定した。各薬剤とも投与量に依存した治療効果を示した。これらのPRSPによる感染に対してCPDX-PRは使用薬剤中最も優れたin vivo効果を示した。PRSP9605, 9601および10692に対する薬剤のMICはそれぞれCPDXが4, 4および2μg/ml, CFDNが16, 16および4μg/ml, CDTRが1, 1および0.5μg/ml, FRPMが1, 0.5および0.5μg/mlであった。このようにCPDX.PRはCPDXのMICから予測される効果よりも優れたin vivo効果を示した。これは今回の実験に用いた他の薬剤を上回るCPDXの良好な体内動態によるものと思われた。
  • 那須 孝昭, 岡本 清美, 中西 俊博, 西野 武志
    1999 年 52 巻 8 号 p. 541-553
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    腸管出血性大腸菌 (EHEC) O157株に対する新規経口ペネム系抗生物質faropenem (FRPM) のIN VITROにおけるMIC, 殺菌作用, verotoxin (VT) 遊離およびlipopolysaccharide (LPS) 遊離作用を, 他系統抗菌薬と比較検討した。
    FRPMのMICは好気的条件および嫌気的条件下でそれぞれ0.78μg/mlおよび0.39μg/mlであり, その抗菌力は好気的条件下ではampicillin, amoxicillin (AMPC), fosfbmycin (FOM), kanamycin (KM), minocycline (MINO) およびclarithromycin (CAM) より強く, cefdinir (CFDN), cefditoren (CDTR) およびnorfloxacin (NFLX) よりはやや弱かった。一方, 嫌気的条件下での本薬の抗菌力はCFDN, CDTRおよびNFLXと同程度であった。
    増殖曲線に及ぼす影響ではFRPMを含むβ-ラクタム系薬, FOM, NFLXおよびKMは強力な殺菌作用を示し, MINOおよびCAMは静菌作用を示した。
    Verotoxinの遊離に関してFRPMを含むβ-ラクタム系薬およびFOMは, verotoxin type 1 (VT1) 遊離を促進したが, verotoxin type 2 (VT2) の遊離には抑制傾向を示した。また, NFLXでは若干のVT1遊離と顕著なVT2遊離が観察されたが, KM, MINOおよびCAMでは1MIC以上の濃度でVT1およびVT2の遊離が抑制された。
    LPS遊離量は, FRPM, AMPCおよびFOMでは非常に少なかったが, CFDN, CDTRおよびNFLXでは顕著な遊離が認められた。KM, MINOおよびCAMの場合には, LPS遊離量は比較的少なかった。
    FRPMは今回検討したVT1遊離以外の作用で, 治療上良好と考えられる特性を有し, EHEC感染症に対して本薬が臨床的有用性を示す可能性が示唆された。
  • 遠藤 和敬
    1999 年 52 巻 8 号 p. 554-561
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    アミノ配糖体系抗生物質である, Arbekacin (ABK), Astromicin (ASTM), Isepamicin (ISP), Netilmicin (NTL) およびd-Tubocurarine (dTC) の筋弛緩作用を家兎の脛骨神経を電気刺激し, 前脛骨筋の単収縮張力を指標としてin vivoに検討した。
    4種の抗生物質の累積投与により, 前脛骨筋の単収縮の張力は量依存性に低下した。それらのED50値の低い順は, NTL=30.2mg/kg (4.2×10-2mmol/kg) <ABK=78.3mg/kg (1.4×10-1mmol/kg) <ASTM=215.2mg/kg (3.6×10-1mmol/kg) <ISP=359.7mg/kg (6.3×10-1mmol/kg) であり, ED50値が最小であったNTLの筋弛緩作用が4種の抗生物質のうちで一番強かった。
    これらの抗生物質による神経筋遮断効果の回復期 (対照値の25%) に, ネオスチグミンまたはCa塩を投与すると, 単収縮張力は増加して両薬とも拮抗効果が認められた。
    各抗生物質のED50値から, dTCに対する相対的効力を臨床常用量で補正した値を比較すると, いずれの抗生物質もdTC相当0.6mg以下となり, 4種の抗生物質の筋弛緩作用はStreptomycinやKanamycinほど強くなかった。しかし, 他のアミノ配糖体系抗生物質と同様に, 周術期のそれらの投与にあたっては, 呼吸抑制や筋無力症状に留意する必要がある。
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