今回, 我々は, カルバペネム薬である, meropenemおよびbiapenemについて動物実験を用いたin vitrfoで得られたTime above MIC (T>MIC) 目標値が臨床でも応用可能か検討するとともに, 既報の動物実験を用いた
in vitroで得られた好気性菌に対するT>MIC目標値が, 嫌気性菌とも相関を示し, 嫌気性菌感染症に対しても臨床応用が可能か臨床症例を用いて検討を行った。その結果, meropenemおよびbiapenemの臨床効果, 細菌学的効果はともに, T>MIC 25%以上で約70%, T>MIC 30%以上で80%以上の数値を示す結果となった。一方, 嫌気性菌の単独感染および, 好気性菌と嫌気性菌の複数菌感染における, カルバペネム薬のT>MIC目標値と臨床効果の相関をみたところ, 膿瘍を形成した嫌気性菌単独菌感染症では相関を見ることが出来なかったが, 好気性菌と嫌気性菌の複数菌感染においては, T>MICが20%以上確保出来れば, 90%以上の臨床効果が得られる結果が示された。以上の結果は, カルバペネム薬でbacteriostatic effectを得るためのT>MIC目標値が20%以上とするCRAIG, W.A.やDRUSANO, G.L.らの報告を支持する結果であった。今回の結果から, 実地臨床でも, また嫌気性菌感染症でも, PK-PD理論に基づいて抗菌薬の投与設計を行うことが有用であると考えられた。
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