The Japanese Journal of Antibiotics
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50 巻, 8 号
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  • 日本におけるコンセンサスを求めて
    正岡 徹
    1997 年 50 巻 8 号 p. 669-682
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    白血病に合併する感染症の特徴は, 好中球減少を背景に発生することであり, 一般的に好中球数が1,000/μl以下になると感染症の頻度が増加し, 500/μl以下で重症感染症が多く,100/μl以下で致死的感染症に罹患しやすい1)。血液疾患そのもの, またその治療によって招来される感染症をいかに予防あるいは治療するかは, その治療成績の向上に極あて重要な因子である。事実, 血液疾患における細菌感染症の予防・治療法の進歩は, より強力な化学療法の施行をより安全なものとし, 種々の致死的血液疾患の治療成績向上に貢献してきた。
    しかしながら, 深在性真菌症に対する診断, 予防, 治療は細菌感染症に比較して遅れをとってきた。この理由の1つとして深在性真菌症治療剤としてはamphotericin Bとflucytosineの2剤しか使用できなかった時代が長く続いたことがあげられる。1980年代後半よりazole剤の使用が可能となり, 1989年にはtriazole系のfluconazoleが, 1993年には同系のitraconazoleが上市された。また, もう1つの問題点であった深在性真菌症の診断に関しては, 血清学的診断法として真菌細胞壁構成成分であるβ-D-glucanを検出する方法や, Candida抗原を検出する方法が実用化され, 深在性真菌感染の存在を推測することが可能になった。これらのことより, 血液疾患に合併する深在性真菌症をより早期にまたより適切に治療することが近年可能となった。
    また, 血液疾患合併感染症では起炎菌の確認には至らないものの, 血清学的診断法が陽性であったり, 発熱が続くなど真菌感染症を疑わせる臨床徴候がある症例に対して, 経験的に抗菌剤を早期投与する, いわゆる,empiric therapyが日常診療において施行されている。このempiric therapyの実施基準は確立されておらず投与開始のタイミング, 診断方法,投与薬剤の選択・投与量, 投与終了時期について様々な考え方があると思われる。
    そこで, 今回は白血病治療に合併する真菌感染症のempiric therapyについて日本におけるコンセンサスを求めることを目的として,全国から血液疾患の治療に携わる医師および医真菌学の基礎研究者に参加して頂き, 討議を行った。
  • 猪狩 淳, 井上 松久, 西野 武志, 渡辺 直樹, 上原 信之, 吉田 浩, 今福 裕司, 柴野 正, 佐藤 誠子, 小林 功, 高橋 綾 ...
    1997 年 50 巻 8 号 p. 683-703
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    カルバペネム耐性の傾向を検討する目的で, 全国20施設で研究グループを組織し, 臨床分離株を収集し, カルバペネム系抗菌薬を中心に抗菌力を検討した。1994年10月から12月までに, 各施設で分離された11菌種1326株について, 17種類の抗菌薬の最小発育阻止濃度 (MIC) を微量液体希釈法により測定した。
    その結果, カルバペネム系抗菌薬は,
    1. MSSA, Streptococcus pneumoniaeに対し強い抗菌力を示し, Enterococcus faecalisに対してもABPCと同程度の抗菌力を示したが, MRSAには抗菌力は弱かった。
    2. Haemophilus infuluenzaeには, OFLXが最も強い抗菌力を示し, MEPMがこれに次ぐ抗菌力であった。他のカルバペネム系は, FMOX, CTM, ABPCと同程度の抗菌力であった。
    3. Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Enterobacter cloacae, Bacteroides fragilis groupに対するカルバペネム薬は強い抗菌力を示し, 他のβ-ラクタム系抗菌薬よりその抗菌力は優れていた。同様に, Serratia marcescensに対するカルバペネム薬は, 他のβ-ラクタム系抗菌薬より強い抗菌力を発揮したが, 一部耐性株も検出された。
    4. Pseudomonas aeruginosaに対してカルバペネム薬は, CAZ, AZT, AMKと同程度であった。
  • 小原 康治, 中村 昭夫, 重信 普律, 陳 佳, 澤井 哲夫
    1997 年 50 巻 8 号 p. 704-710
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Fosfomycin (FOM) は種々の細菌に関して, 他の抗生物質との併用効果が知られている。ここでは日本で臨床分離されたFOM感受性およびFOM耐性肺炎桿菌に対するFOMとβ-ラクタム剤, アミノ配糖体剤, マクロライド剤との併用効果について検討した。
    その結果, FOMは使用全株に対しAmpicinin (ABPC) やCefminox (CMNX) のβ-ラクタム剤やErythromycin (EM) およびMidecamycin (MDM) のマクロライド剤との併用に関して相乗作用を示すことが明らかとなった。
    また, β-ラクタム剤において, Penicinin Vとの併用に関してはFOM感受性株Tf365Aで相乗作用を, FOM耐性3株では相乗もしくは相加作用を示した。Pheneticillinに関してはFOM高感受性株Tf341A株で相乗作用を, 他の株では相加または相加に近い相乗作用を示した。Bekanamycinに関してはTf341A株とFOM耐性株Tf170Bで相乗作用を, 他の株では相加作用を示した。
    一方, アミノ配糖体剤において, FOM感受性2株でKanamycinとDibekacinの各併用に関しては相加作用を, Amikacinとの併用に関しては相乗作用を示したが, 耐性3株では5種のアミノ配糖体剤に拮抗作用を示した。
    以上から, 全てのFOM感受性や耐性の肺炎桿菌への相乗効果はABPC, CMNX, EM, MDMなどの4剤で特異的であり, これらと, 一次選択薬剤として用いられるFOMとの臨床の場での併用効果の有用性が示唆された。
  • 佐藤 征, 三浦 富智, 工藤 恵美, 工藤 幸生, 斎藤 芳彦, 金原 市郎, 辻野 守康, 工藤 肇
    1997 年 50 巻 8 号 p. 711-716
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    臨床材料から分離したMRSA (mecA陽性) 12株を用いてVCMとIPM, PAPM, MEPMとの併用効果をinvitroで検討した。FICindexが≤0.50の相乗効果を認めた株はVCM/IPMの組み合わせで67% (8/12), VCM/PAPMで75% (9/12), VCM/MEPMで67% (8/12) であった。単剤で1MIC=1MBCを示した株はVCMで42%, IMPで42% (5株), PAPMで67% (8株), MEPMで75% (9株) であった。FBC indexが≤0.50の相乗効果を認あた株はVCM/IPMの組み合わせで42% (5株), VCM/PAPMで50% (6株), VCM/MEPMで75% (9株)で, VCMとMEPMの組み合わせで最も相乗効果が高かった。これらの成績からVCMとCarbapenem剤との併用療法は腎機能が低下している人のMRSA感染症の治療に有効であることが示唆された。
  • 正宗 良知, 國井 康男, 渡邊 至, 今岡 洋一, 桃野 哲, 豊島 隆, 豊田 統夫, 阿部 基, 大内 清昭, 神山 泰彦
    1997 年 50 巻 8 号 p. 717-726
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    下部消化管の手術後に発症した感染症に対する第二世代セフェム系抗生物質とアミノ配糖体系抗生物質であるIsepamicin (ISP) の併用効果を基礎的・臨床的に検討した。
    薬剤投与症例は35例で, 有効性の解析は判定不能の2例を除いた33例で検討した。感染症の内訳は表在性二次感染26例, 腹膜炎は7例であり, それぞれの有効率は92%, 71%, 全体で88%であった。第二世代セフェム系抗生物質はCefotiam (CTM), Cefmetazole (CMZ), Cefuroxime (CXM) が使用され, またISPとの併用による各薬剤間の有効性に有意差はなかった。
    細菌学的検討としては, 単独菌感染例は14例中14例が有効以上で有効率100%であったが, 複数菌感染例では2菌種検出が10例中9例, 有効率90%, 3菌種以上検出例9例中6例, 有効率67%であった。
    副作用は35例中3例, 9%に発現したが重篤なものはなかった。
    35例全例から薬剤投与前に69株の細菌が分離され, グラム陰性菌が44株で過半数を占めた。菌種別ではE. coli14株 (20%), E. faecalis13株 (19%), P. aeruginosa6株 (9%) の順に多数を占めた。全菌株に対する各薬剤の感受性をin vitroで測定した結果, ISPのMIC50は1.56μg/ml, MIC90は100μg/ml, CTMはそれぞれ6.25μg/ml,>100μg/ml, CMZはそれぞれ12.5μg/ml,>100μg/ml, CXMは25μg/ml,>100μg/mlであった。各第二世代セフェム系抗生物質とISPの併用効果はISPの濃度依存的に増加した。
    基礎および臨床的成績から, 下部消化管術後感染症に対する第二世代セフェム系抗生物質とISPの併用療法は有用であるものと考えた。
  • 杉田 麟也, 出口 浩一, 藤巻 豊, 原田 品子, 清水 浩二, 木村 繁, 渡辺 洋, 小松 信行, 岡野 和洋, 内藤 雅夫, 野村 ...
    1997 年 50 巻 8 号 p. 727-737
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    市中診療所14施設において, 1995年10月から1996年6月までの期間に小児副鼻腔炎患者にcefditoren pivoxil (CDTR-PI; メイアクト, 抗菌活性体はCDTR) 穎粒を, 3mg/kg×3/dayと同728 (60) 5mg/kg×3/day投与の2群に分けて経口投与して臨床効果と検出菌に対する抗菌力を検討し, 以下の成績を得た。
    1. 小児副鼻腔炎の総症例343例から595株を分離・同定した。臨床有効率は, 3mg/kgと5mg/kg投与群それぞれ80/94例 (85.1%) と85/95例 (89.5%) であった。そのうち, penicillin intermediate Streptococcus pneumoniae (PISP) 感染に対する臨床効果は,それぞれ80.8%と83.3%であり, 5mg/kg投与群の治療効果が若干高かった。
    2. 分離株595株中197株 (33.1%) がS. pneumoniaeであり, うちPISPが49.7%を占めており高い分離頻度を示している。年齢的には2歳以下に高い分離率を示した。S. pneumoniaeの生物型は, PSSPではtype I>type II>type IIIであり, 一方PISPはtype I<type IIでtype IIIは0%であった。
    3. 他の主要な分離菌は, Staphylococcus aureus7.1%, Streptococcus pyogenes 3.7%, Haemophilusi influenzae 32.1%, Moraxella (Branhamella) catarrhalis17.6%であった。
    4. 細菌学的効果は3mg/kg及び5mg/kg投与群それぞれ121/141例(85.8%), 138/152例 (90.5%) であった。PISPの除菌率 (陰性または減少) は, 中鼻道でそれぞれ71.9%と85.7%, 上咽頭では39.3%と51.6%であった。中鼻道に比し上咽頭からの除菌率は低かった。
    5. CDTRの鼻漏内移行濃度は, 3mg/kg及び5mg/kg投与群それぞれ平均0.55μg/ml及び0.77μg/mlであった。
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