The Japanese Journal of Antibiotics
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48 巻, 8 号
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  • 池本 秀雄, 渡辺 一功, 森 健, 猪狩 淳, 小栗 豊子, 近藤 宇史, 小林 邦彦, 佐藤 清, 松宮 英視, 斎藤 玲, 寺井 継男 ...
    1995 年 48 巻 8 号 p. 965-998
    発行日: 1995/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    我々は1981年以来全国各地の病院・研究施設と共同で呼吸器感染症分離菌を収集し, 分離菌の各種抗菌薬に対する感受性, 患者背景と分離菌などを経年的に調査してきた1~8)。今回は, 1991年度の調査結果を報告する。
    1991年10月~1992年9月の間に全国20施設において, 呼吸器感染症患者529例から採取された検体を対象とした。それらの検体 (主として喀痰) から分離され, 起炎菌と推定された細菌は631株であった。このうち, MICの測定できた菌株数は612株であった。その内訳はStaphylococcus aureus 96株, Streptococcus pneumoniae 112株, Haemophilus influenzae 111株, Pseudomonas aeruginosa (Non-mucoid) 114株, Pseudomonas aeruginosa (Mucoid) 39株, Moraxella subgenus Branhamella catarrhalis 41株, Klebsiella pneumoniae 20株, Escherichia coli 12株などであった。
    主要菌株の抗菌薬に対する感受性は, 各薬剤とも前年とほぼ同様の成績を示した。S. aureusではMPIPCのMICが4μg/ml以上の株 (Methicillin-resistant S. aureus) が56株, 58.3%を占め, 前年に比べ耐性菌の発現頻度に上昇傾向が認められた。
    又, 患者背景と感染症と起炎菌の推移等についても検討した。
    患者背景については, 年齢別の分布では高年齢層の感染症が多く, 60歳以上が64.9%を占め, 高齢者の割合は前年とほぼ同程度であった。疾患別の頻度では, 細菌性肺炎, 慢性気管支炎がそれぞれ32.1%, 37.296と多く, 以下気管支拡張症, 気管支喘息 (感染併発, 以下同様) の順であった。疾患別の起炎菌の頻度についてみると, 細菌性肺炎ではS. aureus 19.9%, P. aeraginosa 21.8%, S. pneumoniae 12.6%, 慢性気管支炎ではS. pneumoniae 23.5%, H. influenzae 20.5%, 気管支拡張症ではH. influenzae 29.2%, P. aeruginosa 47.7%, 気管支喘息ではH. influenzae 27.3%, S. pneumoniae 30.3%, M.(B.) catarrhalis 15.2%が上位を占めた。
    抗菌薬の投与の有無, 日数ごとにみた分離菌についてみると, 投与前に分離頻度が多い菌はS. pneumoniae (26.2%), H. influenzae (23.4%) である。一方, S. aureus (20.5%), P. aeruginosa (36.2%) では逆に投与後に頻度が多い傾向を示したのは前年と同様の結果であった。又, 投与期間が8~14日の例では, 前年同様P. aeraginosa (39.1%) の頻度が多かったが, 4~7日ではS. aureus (35.3%) 及びP. aeruginosa (35.3%) の分離頻度が高かった。
    MRSAの分離頻度についてみると, 因子・手術の有無によるMRSAの分離頻度は「有り」で61.8% (47/76), 「無し」で45.0% (9/20) となり, 因子・手術の有りの例でMRSAの分離頻度が高い傾向を示した。抗菌薬の投与前・後におけるMRSAの分離頻度は「投与前」で38.6% (17/44), 「投与後」で75.0% (39/52) となり, 抗菌薬投与後で明らかに高値を示した。
  • 青木 信樹, 甲田 豊, 吉川 博子, 薄田 芳丸
    1995 年 48 巻 8 号 p. 999-1002
    発行日: 1995/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    ニューキノロン剤であるSparfioxacinの透析導入慢性腎不全患者における体内動態を検討した。明らかな肝障害のない透析導入患者5例の非透析日に本剤200mgを朝食後60分に経口投与し, 血中濃度推移をHPLC法にて測定した。血中濃度のピーク値は一様でなく, 2~12時間後に得られ, 0.71~2.37μg/mlの濃度を示した。血中濃度半減期は19.1~34.5時間で, 平均で25.7時間であった。血液透析に導入されるに至っていない高度の腎機能障害患者に比較して, 明らかな延長を認めた。この成績から, 血液透析導入腎不全患者においては, 常用量の投与であれば2日に1回あるいは週3回の透析例の場合は透析終了時に内服するのみで, 充分な血中濃度の維持が可能であると考えられた。
  • 鶴岡 勉, 宮田 愛子, 吉田 隆, 井上 重治
    1995 年 48 巻 8 号 p. 1003-1008
    発行日: 1995/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Escherichia coli (E. coli) K-12JE1011を用いて, 緩慢な増殖時の細菌に対するCefminox (CMNX) の溶菌力を, 類縁のセファマイシン系のCefmetazole (CMZ) やAmpicillin (ABPC) と比較した。37℃で培養した時, その増殖速度は, Doubling timeで30分であった。この時, CMNX, CMZ, そしてABPCの溶菌を示す最小濃度は, それぞれ0.39, 3.13, 125μg/mlであった。12℃で培養した時, Doubling timeは720分または816分となり, 増殖速度は37℃の場合の24倍または27.2倍遅くなった。この場合, 3剤の明確な溶菌を示す最小濃度はそれぞれ, 0.78, 25,100μg/ml以上と37℃で培養した時のそれぞれ2倍, 8倍, 8倍以上高くなった。従って, CMNXの溶菌力は余り増殖速度の影響を受けず, 緩慢な増殖をした細菌に対して低濃度でも発揮された。このCMNXの強い溶菌力の原因を調べるため, E. coliペプチドグリカンの断片を遊離する活性を, 以上の3剤に加えて5つのβ-ラクタム剤について測定した結果, CMNXの活性が1番強く, それぞれの活性はMIC値とは必ずしも比例しなかった。以上の溶菌効果は増殖の遅い定常期初期の菌の殺菌に反映し, 類薬5剤の中でCMNXが最も速く且つ残存細菌数の少ない殺菌作用を示した。
  • 古口 昌美, 鈴木 由美子, 田中 節子, 深山 成美, 石原 理加, 出口 浩一, 小田 清次, 中根 豊, 福本 寅雄
    1995 年 48 巻 8 号 p. 1009-1025
    発行日: 1995/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1993年7月~1994年12月に, 当所において収集または分離・同定した眼科由来臨床分離株を対象として, Norfloxacin (NFLX) の抗菌活性を検討することを目的に, NFLXと対照薬剤の最小発育阻止濃度 (MIC) を測定して, 以下の結果を得た。
    1.1986年~1987年に検討された眼感染症由来臨床分離株に対するNFLXのMIC分布に比較して, NFLXのMIC80が8倍以上 (3管差以上) に上昇した菌種は, Corynebacterium spp., Enterobacter spp., Serratia spp., Burkholderia cepacia, Flavobacterium spp., Alcaligenes spp. であるが, これらの菌種のNFLX耐性株の大部分はOfloxacin (OFLX) にも耐性なニューキノロン系耐性株であり, 更にその一部はアミノグリコシド系, β-ラクタム系にも耐性な多剤耐性株であった。
    2. Pseudomonas aeraginosaに対するNFLXのMICはOFLXに勝っていた。
    3. 眼感染症におけるいわゆる「特定菌」としてのStaphylococcus aureus, Moraxella spp., Haemophilus spp.及び P. aenuginosaに対するNFLXの抗菌活性は依然として強く, 上記の「特定菌」に対するNFLXのMIC80は0.05~1.56μg/mlであり, NFLX点眼液は眼感染症における主な臨床分離株に対するAbove the MIC, Time above MICを保持していることが示唆された。
  • 鈴木 由美子, 古口 昌美, 田中 節子, 深山 成美, 石原 理加, 出口 浩一, 小田 清次, 中根 豊, 福本 寅雄
    1995 年 48 巻 8 号 p. 1026-1032
    発行日: 1995/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1994年に当所で検出したHaemophilus influenzaeのNew Quinolones (NQ) などの薬剤感受性を検討して以下の結果を得た。
    1. 供試300株中のNQ耐性株の割合は26株 (8.7%) であった。26株の由来は慢性下気道感染症由来22株, 中鼻道内容由来2株などであり, 小児由来株にはNQ耐性株は存在しなかった。
    2. NQ耐性株に対するNQ薬剤間の交差耐性が示唆された。そして, NQ耐性株にはclavulanic acid/Amoxicillin, Cefteram, Cefpodoxime, Cefditoren, Cefodizime (CDZM), Cefpiromeの強い抗菌活性が認められた。更に, NQ耐性株及びβ-ラクタマーゼ産生株を含む全供試株に対するCEPsのMIC90は低く, 中でもCDZMが≤0.025μg/mlで最も低い値であった。
    3. β-ラクタマーゼ産生株は300株中の47株 (15.7%) であり, β-ラクタマーゼ産生株は小児由来株が高い割合であった。
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