The Japanese Journal of Antibiotics
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29 巻, 1 号
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  • 古畑 正, 山本 啓一郎, 片場 嘉明
    1976 年 29 巻 1 号 p. 1-3
    発行日: 1976/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    今回, われわれは協和醗酵から, 英国のビーチャム社研究所にて開発された経口用合成Penicillinで, Ampicillin (以下, ABPCと略す) と類似の構造をもつAmoxicillin (販売名: パセトシン) の提供を受け, 外科領域の感染性疾患および術後感染予防に対し使用してみたので, その成績を報告する。
    本剤はABPCと同じく広い抗菌スペクトラムをもち, その構造はABPCのベンゼン核のパラ位に水酸基を導入したもので, 安定な物質で, 毒性が少なく, 抗菌力はABPCにくらべて速効性で吸収性}こ優れ, ABPCと同量の投与で血中濃度の高いことが指摘されている。また, 体内で抗菌力のある代謝物はみとめられず, 尿中排泄は6時間で約60%が回収されるという。
  • 佐藤 仁, 黛 卓爾
    1976 年 29 巻 1 号 p. 4-6
    発行日: 1976/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    英国のBeecham研究所において開発された経口用広域合成Penicillin製剤であるAmoxicillin (以下, AMPC) は, Ampicillin (以下, ABPC) の側鎖のBenzene核のpara-位に水酸基を導入したもので, その特長は, ABPCとほぼ同等な抗菌力, 抗菌スペクトラムをもつていながら, 殺菌力は速効性で, また吸収の点ではABPCの同量投与で約2倍の血中濃度が得られることが報告されている。
    われわれは今回, 協和醗酵工業株式会社を通じ, 本剤 (販売名: Pacetocin) の提供を受けたので, 泌尿器科領域における感染症に使用してみたので, その成績を報告する。
  • 中山 健, 中牟田 誠一
    1976 年 29 巻 1 号 p. 7-10
    発行日: 1976/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Amoxicillin (Pacetocin Kyowa) は, Ampicillinの側鎖のベンゼン核のパラ位に水酸基を導入した構造をもち, 英国Beecham研究所で開発され, 協和醗酵KKから発売された広域経口用合成ペニシリン製剤である。
    この薬剤の特長は, 抗菌力はAmpicillinとほぼ同等であるが, 経口投与時のすぐれた吸収性にあり, Ampicillinと同量の内服においてほぼ2倍の血中濃度が得られる。また, 食事摂取による影響が少ないことが報告されている。
    本剤に対する評価は, 1973年6月に第21回日本化学療法学会総会シンポジウムにおいて報告された。われわれは今回, 泌尿器科領域における術後感染を主とする症例に本剤を使用する機会を得たので, その臨床成績を報告する。
  • 海野 良二, 山本 泰秀
    1976 年 29 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 1976/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Amoxicillin (以下AMPCと略す) は, 英国Beecham Research Laboratoriesで開発された新経口用合成ペニシリンで, Ampicillin (以下ABPCと略す) のベンゼン核のパラ位に水酸基を導入したものである。AMPCは, ABPCと同等度の抗菌力と抗菌スペクトルをもつているが, ABPCと同量投与によつてABPCの約2倍程度の血中濃度に達し, 活性のまま高濃度に尿中に排出される。また, 食事によつて吸収が影響されないという特徴がある。
    我々は今回, 協和醗酵株式会社からAMPC (製品名Pasetocin) の提供を受け, 急性単純性膀胱炎に投与する機会を得たので, その成績を報告する。
  • 久保 泰徳, 小野 利彦, 岩元 則幸, 矢島 息吹
    1976 年 29 巻 1 号 p. 17-21
    発行日: 1976/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    P. A. HUNTERら (1973) は, Beecham Research Laboratoryにおいて, Amoxicillin (以下, AMPCと略す) の基礎実験をおこない, 本剤とAmpicillin (以下, ABPCと略す) の血中濃度および組織内濃度を比較検討した結果, AMPCはABPCよりも短時間に, 高い血中濃度および組織内濃度に達することを報告した。
    これは, すでにE. A. P. CROYDONら (1971) によつても指摘されていたことで, その後, 臨床的にも追試され, 本剤の投与量に対する臨床効果 (細菌学的にも) はABPCのおよそ2倍といわれている。
    今回, われわれは, この新抗生物質のAmoxicillinを協和醗酵株式会社 (販売名: Pacetocin) から提供を受け, 主として下部尿路感染症に使用し, 特にその投与量と効果の関係を比較検討する機会を得たので, その成績を報告する。
  • 岡本 健, 吉田 昭男, 小名 愛, 池田 正夫, 村岡 純子, 脇 幾久子
    1976 年 29 巻 1 号 p. 22-26
    発行日: 1976/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Amoxicillin (α-Amino-p-hydroxy-benzyl-penicillin, 以下AMPCと略す) は, Ampicillinのベンゼン核のパラ位に水酸基を導入したイギリスのBeecham Research Laboratoriesで新らしく開発された半合成の経口用Penicillinである。
    抗菌スペクトルは, Penicillinase産生黄色ブドウ球菌を除くグラム陽性菌, Escherichia coli, Proteus mirabilis等のグラム陰性桿菌に広域に抗菌力をもち, その抗菌力はAmpicillin (以下ABPCと略す) とほぼ同様である。しかし, 消化管からの吸収はABPCより優れており, 血中濃度はABPCの約2倍に達することが特徴とされている。
    今回, 我々は協和醗酵株式会社から提供を受けたAmoxicillinを耳鼻咽喉科領域の急性炎症の治療に使用する機会を得たので, その治療成績を報告したい。
  • 宗 義朗, 土井 顕, 大郷 典子, 尾口 基
    1976 年 29 巻 1 号 p. 27-29
    発行日: 1976/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Penicillinは, 現在までに数多くの誘導体が合成されており, Amoxicillin (以下AMPCと略す) もその1つであつて, Ampicillin (以下ABPCと略す) にくらべて抗菌力は同等であるが, 吸収は, はるかによく, 同量の投与でABPCの2倍の血中濃度がえられ, 食事による影響も少ないといわれている。今回, われわれは本剤を協和醗酵工業 (株) から提供を受け, 2, 3の化膿性皮膚疾患に試用したのでその成績を報告する。
  • 玉木 久子, 木下 ゆか子, 田辺 恭子, 与儀 英明, 井上 豪円, 君島 健次郎
    1976 年 29 巻 1 号 p. 30-35
    発行日: 1976/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Spectinomycinは, Streptomyces spectabilisから分離された抗生物質で (OLIVERら), Staphylococcus, Streptococcus, Proteus, Escherichia, Klebsiella, Neisseriaなどに広く抗菌性をもち, とくに淋疾に対しこれまで用いられてきたペニシリンよりも有効といわれ, 近年広く諸外国で使用されている (SAVAGE, LAIRDら, PLATTS, DUNCANら)。
    今回われわれは, Spectinomycin入手の機会を得たので, その中枢作用を中心として, 一般薬理作用について検討をおこなつた。
  • 中村 孝, 橋本 伊久雄, 沢田 康夫
    1976 年 29 巻 1 号 p. 36-42
    発行日: 1976/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    塩酸Doxycyline (DOTC) は, 持続性のTetracycline系抗生物質であり, 広い抗菌性と, 従来のテトラサイクリンにくらべ臓器移行性が優れ1, 2, 3), さらに1日1~2回の100~200mgの経口投与によつて充分な臨床効果が得られる4, 5) 点から, 今日広く用いられている抗生剤であるが, 注射剤の提供がないため, 内服不能の患者には使用できない等の適応上の制限があつた。
    今回, 静注用のDOTCが開発され, 血中濃度の検索等6, 7, 8) で有効なことが確認されているが, われわれは本剤の100mg静注用のアンプル剤の提供を台糖ファイザー社から受け, 症例に試み, その有効なことをみとめたので, いささかの考察を加えて報告したいと考える。治験期間は昭和48年10月から50年4月である。
  • 梅沢 巌, 小川 弘子, 小宮山 寛機, 川久保 安朗, 守野 豊彦, 西山 保一
    1976 年 29 巻 1 号 p. 43-54
    発行日: 1976/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1962年, 米国Upjohn社のOLIVERらによつて発見されたSpectinomycinは, Streptomyces spectabliisの産生する抗生物質で, Actinospectacinと同一物質である。本物質は, 淋病治療薬として現在広く外国で使用されている。この物質のDihydrochloride pentahydrate塩は, 下図の構造をもち, 水溶性の白色粉末である。
    今回, われわれは, Spectinomycin dihydrochloride pentahydrateのマウスおよびラットでの急性毒性試験およびラットでの亜急性毒性試験をおこなつたので報告する。
  • 梅沢 巌, 小川 弘子, 小宮山 寛機, 川久保 安朗, 守野 豊彦, 西山 保一
    1976 年 29 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 1976/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Spectinomycin dihydrochloride pentahydrateの慢性毒性実験をラットを用いてしらべたので, その結果について報告する。
  • 松崎 明紀, 田戸 宣江, 平田 洋子, 加藤 誠, 中村 浩一, 荒川 まゆみ, 立山 治代, 亀井 敏夫
    1976 年 29 巻 1 号 p. 61-68
    発行日: 1976/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefatrizine (S-640P) に関する細菌学的評価について, CEXを対照薬剤として検討し, 次の成績が得られた。
    1. S-640Pは, CEXと同じくGram陽性菌およびGram陰性菌に対して広範囲の抗菌スペクトラムをもち, その抗菌力は, CEXと比較し, ほとんど4倍以上の高い感受性を示した。
    2. 臨床分離ブドウ球菌110株, 大腸菌517株, Klebsiella sp. 27株, Salmonella sp. 21株, Shigella sp. 16株, Streptococcus sp. 21株, 疏Diplococcus sp. 18株の感受性分布について検討した分布のピークは, CEXと比較し, 2~8倍の高い感受性を示した。
    3. 細菌の増殖曲線に対して, ブドウ球菌では0.39μg/ml (MIC) 以上の濃度で,大腸菌では3.13μg/ml (2MIC) 以上の濃度で殺菌作用を示した。
    4. マウス実験感染に対する治療効果は, Staphylococcus aureus Smith, Diplococcus pneumoniae, Klebsiella pneumoniae, Escherichia coli, Proteus mirabilisの腹腔内接種に対して薬剤の経口投与をおこなうとき, S-640PはCEXの約20~70倍にも及ぶ治療効果がみとめられた。
    5. 血清蛋白との結合率では, 動物種差がみられ, ラットで高く, 犬では低値であつた。ヒトの結合率は, サルと辱類似していた。
  • 第1報マウス,ラットにおける吸収・排泄および分布
    松崎 明紀, 中村 浩一, 平田 洋子, 松本 浩良, 落合 謙介
    1976 年 29 巻 1 号 p. 69-76
    発行日: 1976/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1. S-640PおよびCEXについて, マウスで100mg/kgおよび25mg/kgの経口投与による吸収・排泄をみた。S-640Pの血中ピークは, 30分後で, 濃度は100mglkgで67.4mcg/ml, 25mg/kgで25.8mcg/mlであった。CEXでは, 15分後にピークがみられた。尿中のRecoveryは, 100mg/kgで67.7%, 25mcg/kgで69.5%であった。S-640Pの血中濃度のピークは, CEXと比較し, 100mg/kgではほぼ同様で, 25mg/kgでは20%程度低値であった。S-640Pは,血中持続性がみられ,投与後2時間における血中濃度は,CEXにくらべ約5倍であった。
    2. ラットでは, 25, 50, 100, 200, 400, 800および1,600mg/kgの経口投与をおこなった。血中ピークは, 100mg/kg以下は1時間後, 200~1,600mg/kgでは2時間後にみられた。ピーク時の血中濃度は, 25mg/kgで47.2mcg/ml, 400mg/kgで109mcg/mlであり, 1,600mg/kgでは126mcg/mlと, Doseresposeカーブの横ばい傾向がみられた。尿中Recoveryは, 79.9~82.6%であった。ほとんどが6時間後までに排泄された。
    3. ラットにおけるin situでの胃腸管吸収実験の結果, 主要吸収部位は, 腸管部と推定された。
    4. 臓器内分布については, マウス, ラットともに10mg/kgおよび25mg/kgについておこなった。マウス, ラットともに, 腎に最も高く, 次いでプラズマ中, 肝の順位で, いずれの臓器組織においても, 血中濃度とほぼ平行した経時的推移を示した。
  • 第2報ウサギ,イヌおよびサルにおける吸収・排泄
    松崎 明紀, 小野寺 邦介, 平田 洋子, 松本 浩良, 落合 謙介
    1976 年 29 巻 1 号 p. 77-82
    発行日: 1976/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefatrizine (以下S-640Pと略す) は, 内服用として新らしく開発された半合成セファロスポリン系抗生物質で, その化学構造, 抗菌性, 薬理作用, 毒性については, すでに報告されている1~3, 6)。著者等は, 前報4) におよいて, S-640Pのマウス, ラットにおける吸収・排泄および分布について報告したが, 本報では, ウサギ, イヌおびサルにおけるS-640Pの吸収・排泄について報告する。
  • 第3報ヒトにおける吸収・排泄およびその薬動力学的解析
    松崎 明紀, 松本 浩良, 落合 謙介, 平田 洋子, 日野 美佐
    1976 年 29 巻 1 号 p. 83-89
    発行日: 1976/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    健康な成人男子に対して,Cefatrizine (S-640P) およびCephalexin (CEX) のCross ovorデザインによる経口投与をおこない, その血中濃度および尿中排泄量から薬動力学的解析を試み, 次のような成績が得られた。
    1. 250mgおよび500mgの経口投与でS-640PおよびCEXともに吸収・排泄は良好かつ速やかであつた。
    2. S-640Pの最高血中濃度は,250mg投与で4,32±0.81mcglml,500mg投与で7.96±0.56mcg/mlで, CEXの約2/3程度であつたが,生物学的半減期t1/2は約2倍で, S-640PはCEXより持続的であつた。3. S-640Pの投与後8時間までの尿中Recoveryは, 250mg投与で74%, 500mg投与で80%であり, CEXよりやや低い値であつた。
    4. 血中濃度から求めたkelおよび尿中排泄量から求めたた,.がほぼ等しいことから, 吸収されたS-640Pは, 尿中にほとんど未変化のままで排泄されることが推測された。
  • 松崎 明紀, 大多和 昌克, 秋山 勇, 山本 三千世, 冨岡 順子, 清原 美恵, 馬淵 正
    1976 年 29 巻 1 号 p. 90-106
    発行日: 1976/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    S-640Pの経口投与後の各種動物 (ラット, ウサギ, 犬およびサル) ならびに健康成人志願者における血中および尿中代謝産物について検索をおこない, 以下の結果が得られた。
    1) 各種動物に50mg/kg, 200mg/kg, 400mg/kgおよび800mg/kg, 健康成人志願者に250mg/manおよび500mg/manのS-640Pを経口投与し, 血中代謝産物について検討した結果, 未変化S-640P以外に代謝産物はみとめられなかつた。
    2) 尿中代謝産物については, 各種動物および健康成人志願者とも, そのほとんどが未変化S-640Pであるが, それ以外にきわめて微量な代謝産物が, ラットで5種類 (M-2, M-3, M-4, M-5およびM-6), 犬で4種類 (M-2, M-3, M-4およびM-5), ウサギおよびサルで3種類 (M-2,M-4およびM-5) みとめられた。
    3) 健康成人志願者のばあい, 未変化S-640P以外, 6人中4人に2種類の微量代謝産物がみとめられた。これらの代謝産物は,各種動物尿でみとめられたM-4およびM-5に一致した。
    4) S-640Pは, 各種動物および健康成人志願者とも, 投与後0~8時間までの尿中に, そのほとんどが未変化体として排泄され, 0~24時間までの未変化S-640Pの尿中平均回収率は, 50mg/kg投与のばあい, ラットで74.4%, ウサギで71.0%, 犬およびサルでそれぞれ62.8%, 58.1%であつた。
    健康成人志願者, 500mg/manのばあいは, 81.7%であり, これらは尿中総排泄量のそれぞれ98.2, 98.9, 98.6, 99.0および99.6%であつた。
    また, S-640P以外の微量代謝産物の24時間までの尿中平均総回収率は, ラットで1.4%, ウサギ, 犬およびサルでそれぞれ0.8, 0.9および0.6%程度であり, 健康成人志願者のばあいは, 0.3%と, きわめて微量であつた。
    5) 経口投与されたS-640Pは, ほとんど代謝を受けることなく, 未変化のまま8時間までの尿中に排泄される。
  • 松崎 明紀, 小野寺 邦介, 岡崎 勲, 中島 彰, 岸本 勝次, 亀井 栄一, 立田 由紀子, 平川 真弓
    1976 年 29 巻 1 号 p. 107-121
    発行日: 1976/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefatrizine (以下S-640Pと略す) は, 米国ブリストル社研究所において開発された新らしい半合成Cephalosporin系抗生物質で, 右の構造をもつ。
    S-640Pは, グラム陽性, 陰性菌に対して広範な抗菌スペクトルをもち, その抗菌力は, Cephalexinより優れていることが報告されている1, 2, 8)。その一般薬理作用, 吸収排泄, 代謝, 急性毒性, 亜急性毒性, 慢性毒性および催奇形作用については, すでに万有の研究陣によつて報告されている1)。著者等は, S-640Pの薬理学的性質についてさらに追加検討をおこない, 下記の成績を得たので併せて報告する。
  • 松崎 明紀, 亀井 敏夫, 古谷 幸子, 阿久津 貞夫
    1976 年 29 巻 1 号 p. 122-128
    発行日: 1976/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefatrizine (S-640P) の抗原性およびCephalexin, Cephaloridine, Penicillin Gとの免疫学的交差性について検討し, 次の結果が得られた。
    1. 経口投与によつて, S-640Pの抗体産生はみとめられなかつた。
    2. S-640PをFREUND scompleteadjuvantとEmulsionにして,ウサギを非経口的に感作したばあい, 溶血反応による抗体価で多少 (±) の抗体価 (最大希釈倍数) がみとめられた。同様に, PCG, CERで兎を感作したばあい, それぞれ, 29, 28の抗体価がみとめられた。CEXでは抗体価がみとめられなかつた。
    3. β-Lactam系抗生物質の交差性の検討のため,抗生物質-RSA結合物でウサギを感作したばあい,溶血反応による抗体価で, S-640Pは28の抗体価がみとめられた。同様に, PCG, CER, CEXでウサギを感作したばあい, それぞれ211, 210, 26の抗体価がみとめられた。
    4. 定量Hapten沈降阻止反応によつて,S-640P,PCG, CER, CEX相互の交差性を検討した結果, S-640Pハプテンは, S-640P抗体を他のハプテンにくらべ8~40倍強く阻止し, PCGそしてCER抗体に対しあまり阻止効果を示さなかつた。
  • 第1報マウス,ラットの胎仔および新生仔の発育に及ぼす影響
    松崎 明紀, 阿久津 貞夫, 向川 秀生, 島村 達夫
    1976 年 29 巻 1 号 p. 129-143
    発行日: 1976/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新らしいセファロスポリン系経口抗生物質であるCefatrizine (以下S-640Pと略す) について, DDB4系マウスおよびWistar系ラットを用い, 妊娠時経口投与による胎仔に及ぼす影響および出産後の新生仔の発育に及ぼす影響について検討したので, その成績を報告する。
  • 第2報妊娠ウサギに対する経口投与時の胎仔に及ぼす影響
    松崎 明紀, 阿久津 貞夫, 向川 秀生, 小林 こずる
    1976 年 29 巻 1 号 p. 144-152
    発行日: 1976/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefatrizine (S-640P) の催奇形性についてウサギを用い検討した。S-640Pは,妊娠8日から16日までの9日間にわたつて経口投与をおこなつた。投与量および妊娠ウサギの匹数は, 800mg/kg群7匹, 400mg/kg群9匹, 100mg/kg群10匹, 25mg/kg群8匹, 対照群8匹とした。
    1. S-640Pの経口投与によつて, 800mg/kg, 400mg/kgという高薬量群では, 妊娠ウサギの摂餌量・摂水量は低下し, 体重減少がみられた。また, 投与の3~5日後に腸内菌叢のアンバランスによると思われる下痢, 死亡例, 流産例がみられた。S-640Pの毒性はみられなかつた。
    2. 胎仔の外形および内臓異常は, 800mg/kg, 400mg/kg, 100mg/kg, 25mg/kgおよびControl群のいずれにも1例もみとめられなかつた。下痢や栄養障害等の2次的要因と考えられるが, 800mg/kg, 400mg/kg等の高薬量群では, 30g未満の未熟仔が高率にみられた。
    3. 胎仔の骨格標本では, いずれの薬量群においても, 異常は全くみとめられなかつた。
    800mg/kg, 400mg/kg群では, 胎仔体重の低い例に併行して化骨形成遅延がみとめられた。
    以上の結果からみて, S-640Pは妊娠ウサギに対して催奇形性のない薬剤であると考えられる。
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