The Japanese Journal of Antibiotics
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56 巻, 4 号
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  • 河野 茂, 大石 和徳, 桑原 正雄, 中浜 力
    2003 年 56 巻 4 号 p. 249-258
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    2000年に日本呼吸器学会が市中肺炎ガイドラインを発表してから約3年が経過し, その効用についての評価が可能な時期に至った。そこで, 本座談会では肺炎実地診療という見地から, 定型・非定型肺炎の鑑別の実効性, 記載抗菌薬の有用性という点を中心に市中肺炎ガイドラインの効用を評価するとともに, 近々行われる見直しについて, ガイドライン発表後に登場した新規抗菌薬を考慮し, レスピラトリーキノロンの位置づけを含めた方向性を議論する。さらに, 中国, 台湾, 香港, ベトナム, そしてカナダなどで猛威を振るった新型肺炎SARS (Severe Acute Respiratory Syndrome) を踏まえ, 今冬のインフルエンザ流行期に懸念される臨床現場での恐慌を避けるべく, 目下注目されている主な肺炎に対する診断と治療の具体的な留意点とともに, 医療のみならず行政も含めた日本全体のSARS対策のあり方に言及する。
  • 島田 馨
    2003 年 56 巻 4 号 p. 259-271
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    塩酸バンコマイシン点滴静注用 (VCM) はメチシリン・セフェム耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) による感染症治療薬として1991年10月に発売された。その後6年間に, GPMSPに準拠し実施された市販後調査の結果は次のとおりである。
    対象は全国1,099施設, 1991年10月から1997年9月に本剤を静脈内投与された3,037例で, このうち再調査が不可能であった28例を除外した3,009例を安全性評価対象例, また, この中から適応外疾患等の182例を除いた2,827例を有効性評価対象例とした。本剤の1日投与量は小児では40mg/kg, 成人・高齢者では1gまたは2gで1~3週間投与が多く, 経年的に1日投与量の減少, 投与期間の短縮傾向が認められた。疾患別の改善率は肺炎など, 呼吸器系感染症では70%台であったが, その他の敗血症, 骨髄炎などでは80%以上であった。また, MRSAに対する細菌学的効果は66.9%の菌消失率であった。臨床検査値異常を含む副作用の発現症例数は404例 (13.43%), 561件であり, 高齢者でとくに副作用発現率が高い傾向は認められなかった。
    以上より, VCMはMRSA感染症に対して確実に効果が期待できる有用性の高い薬剤であり, MRSAが起炎菌と確定された症例に対しては速やかに投与すべきであると思われる。なお, 使用の際には年齢や腎機能などを考慮し, 適正な用法.用量を選択すれば, 副作用も抑制できると考えられた。
  • 金田 充博, 津田 順子, 飯田 奈美, 五十嵐 友美, 田嶋 博樹, 木津 純子, 堀 誠治
    2003 年 56 巻 4 号 p. 272-280
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    市中病院におけるキノロン薬 (経口) と非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs)・解熱鎮痛薬 (AAA) 併用の実態調査を6ヶ月間にわたり実施した。キノロン薬は, 外来処方せん (112,424枚) の0.97%に処方されており, そのうち15.6%がNSAIDs・AAAと併用されていた。処方されたキノロン薬では, レボフロキサシンが81.7%を占めていた。キノロン薬と併用されたNSAIDs・AAAをみると, アセトアミノフェンおよびその配合剤とキノロン薬との併用が多く, 併用処方の60.6%であった。NSAIDsでは, チアプロフェン酸, ロキソプロフェンナトリウムなどが多く, 添付文書上併用注意となっているもの (注意となっている系統のNSAIDs) が多かった (併用処方の37.3%)。一方, セフェム薬 (経口) では, その58.8%がNSAIDs・AAAと併用されていた。キノロン薬・NSAIDsの併用は実際に処方されており, 今後, これらの薬物における相互作用の個別化, 安全性の確立が必要と考えられた。
  • 西村 忠史, 杉田 久美子, 谷口 恭治, 植村 隆, 原田 佳明, 木野 稔, 森川 嘉郎
    2003 年 56 巻 4 号 p. 281-288
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    溶連菌咽頭扁桃炎の小児外来患者65例を対象に, Clarithromycin (CAM) とCefdinir (CFDN) の臨床効果と安全性を検討した。抗原陰転および「日本化学療法学会小児科領域抗菌薬臨床試験における判定基準」に基づいて判定したところ, 有効以上はCAM群26例 (有効率78.8%), CFDN群27例 (87.1%) であり, 両群間に有意差を認めなかった。細菌学的検討では, 菌消失率はCAM群で94.7%, CFDN群で93.8%であり, 両群間に有意差を認めなかった。CAM, CFDNに対する薬剤感受性は良好であった。有害事象は両群で中等度の下痢が1例ずつ認められたが, 試験薬の投与継続中に軽快した。以上の結果から, 溶連菌咽頭扁桃炎の小児外来患者では, マクロライド系抗菌薬CAMとセフェム系抗菌薬CFDNの臨床効果と安全性は高く, かつ同等であることが示唆された。
  • 藤田 昌樹, 吉田 稔, 石橋 凡雄, 原 信之, 山田 穂積
    2003 年 56 巻 4 号 p. 289-293
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    注射用Ciprofloxacinは, 重症例や先行抗菌薬の効果が不十分であった症例に対しても, 満足すべき臨床効果が得られ, 安全性にも問題がなかったことより, 成人市中肺炎における選択肢のひとつとして妥当な抗菌薬であると考えられる。
  • その1グラム陽性菌
    鈴木 由美子, 西成 千里, 遠藤 晴美, 平松 信祥, 秋山 計充, 小山 常雄
    2003 年 56 巻 4 号 p. 294-308
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1996年から2001年度までに得られた臨床分離菌株に対する, セフェム系抗菌薬cefozopran (CZOP) の抗菌力を年次的に検討すると共に, その他のセフェム系, オキサセフェム系, カルバペネム系, およびペニシリン系抗菌薬の抗菌力と比較した。対象とした臨床分離株は, 毎年1月から12月の1年間に臨床材料から分離されたグラム陽性菌: Methicillin susceptible Staphylococcus aureus (MSSA), Methicillin resistant Staphylococcus aureus (MRSA), Staphylococcus epidermidis, Staphylococcus haemolyticus, Streptococcus pyogenes, Streptococcus agalactiae, Streptococcus pneumoniae, Enterococcus faecalis, Enterococcus faecium, Enterococcus avium, Peptostreptococcus spp.(P. anaerobius, P. asaccharolytious, p.magnus, P. micros, P. prevotii) の15菌種1,274株であった。CZOPは6年間, いずれの菌種に対しても安定した抗菌力を示した。CZOPはMRSAとS. haemolyticusで経年的なMIC90値の低下傾向, S. pneumoniaePeptostreptococcus spp. で上昇傾向という, 若干の変動が観察されたものの, そのMIC90は承認時までに調査した成績とほぼ同等であった。また, S. pneumoniaeはcefbirome (CPR), cefbpime (CFPM), nomoxef (FMOX), sulbactam/cefbperazone (SBT/CPZ), imipenem (IPM) に対して, Peptostreptococcus spp. はFMOX, SBT/CPZ, IPMに対して感受性の低下が認められた。
    しかしながら, この感受性の低下は, MICの範囲が各薬剤で毎年ほぼ一定して広いこと, 並びにいずれの年次においても菌株毎の感受性に非常に大きなばらつきがあることから, 必ずしも抗菌力の低下と結びつけることはできないと考えられた。
    今回の6年間にわたる調査結果から, CZOPのグラム陽性菌に対する抗菌力に大きな経年的変動は認められず, 市販後においても強い抗菌力が維持されていることが示唆された。
  • その2グラ厶陰性菌
    鈴木 由美子, 西成 千里, 遠藤 晴美, 平松 信祥, 秋山 計充, 小山 常雄
    2003 年 56 巻 4 号 p. 309-335
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1996年から2001年までの6年間に得られた臨床分離株を対象として, セフェム系抗菌薬cefbzopran (CZOP) の抗菌力を測定し, その年次的推移を検討すると共に, その他のセフェム系, オキサセフェム系およびカルバペネム系抗菌薬と比較した。
    対象とした臨床分離株は, 毎年1月から12月の1年間に臨床材料から分離されたグラム陰性菌: Moraxella subgenus Branhamella catarrhalis, Escherichia coli, Citrobacter freundi, Citrobacter koseri, Klebsiella pneumoniae, Klebsiella oxytoca, Enterobacter aerogenes, Enterobacter cloacae, Serratia marcescens, Proteus mirabilis, Proteus vulgaris, Morganella morganii, Providencia spp.(P. alcalifaciens, P. rettgeri, P. stuartii), Pseudomonas aeruginosa, Pseudomonas putida, Burkholderia cepacia, Stenotrophomonas maltophilia, Haemophilus influenzae, Acinetobactor baumannii, Acinetobactor lwoffii, Bacteroides fragilis group (B. fragilis, B. vulgatus, B. distasonis, B. ovatus, B. thetaiotaomicron), およびPrevotella spp.(P. melaninogenica, P. intermedia, P. bivia, P. oralis, P. denticola) の32菌種3,245株であった。CZOPは, M.(B.) catarrhalis, E. coli, C. freundii, C. koseri, K. pneumoniae, K. oxytoca, E. aerogenes, E. cloacae, S. marcescens, P. mirabilis, P. vulgaris, M. morganii, Providencia spp., P. aeruginosa, およびA. lwoffiiに対して良好な抗菌力を保持し, それぞれのMIC90は, 承認時までの調査成績とほぼ同等あるいはより優れたものであった。一方, H. influenzaeに対しては, MIC90が経年的に上昇し, 調査期間中で6管の差が認められた。このMIC90の経年的上昇傾向はcefpirome, cefcpime, nomoxefでも同様に認められた。
    したがって, CZOPのグラム陰性菌に対する抗菌力は, 今回検討したほとんどの菌種で維持されていることが明らかであったが, B. CepaoiaおよびH. influenzaeに対しては抗菌力の低下が示唆された。
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