Cefatrizine (以下CFTと略記) は, 米国ブリストル社で開発された経口用半合成セファロスポリン系抗生物質である。
その構造式は, Fig.1に示すように, 7-Aminocephalosporanic acid (7ACA) の3位に1, 2, 3-Triazole-5-thiolをもち, 7位をp-Hydroxy-D-phenylglycineでアシル化したものである。
広い抗菌スペクトラムをもち, その抗菌力はCephalexin (以下CEXと略記) との比較では, グラム陽性菌で2~4倍, グラム陰性菌で4~8倍強いといわれている1~3)。
五島らによれば, CFTのMICは, 使用菌種のすべてにおいて, CEXより全体に値が小さく, CEXにくらべ抗菌作用が強いことが示されている。また,
E.coli NIH JC-2を用いた形態変化に関する実験では, Filament形成の程度が, CFTはCEXよりも少なく, 108/mlの菌量では, CFTは0.78-12.5μg/mlでFilament形成がみられ, 25μg/mlで溶菌する。一方, CEXでは, 100μg/mlでもまだFilament形成がみとめられ, 溶菌には至つていないことなどから,
in vitroでCFTがCEXにくらべ殺菌作用が強いと結論している4)。
また, 紺野は, 抗生物質の抗菌力の評価は, 単にMICを測定しただけでは不十分であり, Filamont形成に対する薬剤の濃度幅および溶菌に至るまでの濃度などの観察を含めて検討する必要があると述べている5)。
今回, 我々は,
in vitroで示されたCFTのすぐれた抗菌力が, 臨床にどのように反映するのかを客観的にしらべるため, 子官頸癌根治術術後に細菌尿を示した患者を対象として, CFTまたはCEXを二重盲検下で投与し, 尿中細菌数を指標として経時的に追跡し, 検討をおこなつたので報告する。
抄録全体を表示