頭頸部領域の悪性腫瘍, ことに上皮性腫瘍は, 病理組織学的に扁平上皮癌が大多数であることは周知のとおりである。 また, 当領域における扁平上皮癌に対して, 多くは外科的療法を主体とすることも, 現時点では論ずるに当らない。 ただし, 高齢者, その他手術不能例に対する保存的治療法や, 術前, 術後の補足的治療法として化学療法, 放射線療法は, 欠くことのできない治療法の1つである。
さて, 1962年梅沢ら1)が開発した放線菌の1種である
Streptomyces verticillusによつて生産される抗腫瘍性抗生物質であるBleomycin (以後BLMと略す) は, 開発以来多大な研究から, 特異的に扁平上皮癌に対して有効であることが発見され (市川2)), さらに非上皮性腫瘍である悪性リンパ腫に対して有効であることも明らかにされた (木村3)) 。 以後, とくに扁平上皮癌に対する当抗生物質の抗腫瘍効果に関する臨床治験報告は, 枚挙にいとまがないほど, 膨大であり, われわれ臨床腫瘍治療学にたずさわる臨床医として, 本薬剤は貴重である。
このBLMは, 厳重な全身管理のもとに投与しなければ, 重篤な肺炎様症状, 掌・手指の硬化, 腎障害等の副作用も出現することもある。
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