新しく開発されたエステル型経ロセフェム剤Cefditoren pivoxil (ME1207) の粒剤について小児科領域における体内動態及び臨床的検討を実施し, 以下の成績を得た。
1. 吸収排泄試験成績小児における体内動態を3mg/kg (以下投与量は総て力価表示) 及び6mg/kg単回投与で検討した。
3mg/kg及び6mg/kg投与時のC
maxはそれぞれ1. 54±0. 68μg/ml, 2. 85±1. 03μg/ml, T
maxは227±1. 08時間, 2. 06±1. 16時間, T1/2は2. 221. 95時問, 1. 68±0. 66時間, AUC(0-∞)は7. 43±368μg・hr/ml, 1190±4. 51μg・hr/mlであり, 用量相関が認められた。尿中濃度はいずれの投与量でも2-4時間で最大濃度を示し, 投与後8時間までの累積尿中排泄率は3mg/kg投与で19. 4±6 6%, 6mg/kg投与で17. 1±5. 2%であった。
2. 臨床試験成績総症例数459例に2疾患重複診断の11例を加え, 除外・脱落の25例を除いた445例を有効性解析対象例とした。
1回投与量は3-6mg/kgを中心に, 主として1日3回食後に投与され, 1日投与量は> 75-105mg/kgが全症例の48. 8%を占め最も多かった。
臨床効果は起炎菌が分離できた319例について97. 5%の高い有効率が得られた。起炎菌が不明であつた126例の有効率は96. 8%であり, 両群に有意差がないので合計すると, 445例全例の有効率は97. 3%であった。1日投与量別では> 7. 5-10. 5mg/kg投与の有効率は97. 2%で, > 105-19. 5mg/kg投与の有効率97. 0%と同様であった。
細菌学的効果は90. 4%の菌消失率であった。3日以上続けた先行化学療法が無効であった66例のうち有効以上の症例は63例で, 有効率は95. 5%であり, 菌消失率は89. 4%であつた。
副作用は安全性解析症例456例中19例 (4. 296) に認められたが, その大部分は一過性の下痢であり, 特別なもの及び重篤なものはなかった。
臨床検査値の異常変動としては好酸球増多, 血小板増多, GOT・GPT上昇などがみられたが, 従来のセフェム剤と同程度であり, 重篤なものはなかつた。
服用性の面でも特に問題はなかった。
以上の成績から, 本粒剤は1日標準量として1回3mg/kg, 1日3回投与, 症状により適宜増減 (但し成人1日量600mgを越えない), 3-14日間投与により, 中等症までの小児市中感染症に対して甚だ有用な薬剤であると考えられる。
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