新しく開発された静注用セフェム系抗生物質のFlomoxef (FMOX, 6315-S) を7歳4カ月から10歳10カ月の男児11例中2例に10mg/kg, 各3例に20mg/kg, 40mg/kgをOne shot静注, 3例に40mg/kgを30分間点滴静注で投与し, 血漿中濃度・尿中濃度及び回収率を測定した。扁桃炎2例, 急性肺炎45例, 尿路感染症10例, 化膿性リンパ節炎2例, 膿瘍2例計61症例に本剤を投与し臨床効果をみたが, 肺炎の1例に副作用が出現し, 投与日数不足のため効果の判定はできず, 臨床効果の判定できた60例の1日平均投与量は79.3mg/kg, 分3か分4, 30分間点滴静注の1例以外はいずれもOne shot静注により平均6日間の投与で, 細菌学的効果, 副作用及び臨床検査値への影響についても検討したところ, 次のような効果を得た。
1.本剤10mg/kgを2例, 各3例に20mg/kg, 40mg/kgをOne shot静注で投与した時の血漿中濃度はいずれの投与量群も投与5分後が最高濃度で, 各々平均62.5, 103.1,244.7μg/ml, 平均半減期は各々0.670, 0.915, 0.595時間, 平均濃度曲線下面積 (AUC) は各々33.0, 65.2, 133.1μg・hr/mlで, 3投与量群間にDose responseがみられた。
2.本剤40mg/kgを3例に30分間点滴静注で投与した時の血漿中濃度はいずれも投与開始30分後すなわち投与終了時がピーク値で平均151.0μg/ml, 平均半減期は0.973時間, 平均AUCは149.1μg・hr/mlであつた。
3.本剤10mg/kgを2例, 20mg/kg, 40mg/kgを各3例にOne shot静注で投与した時の尿中濃度は全例が投与0~2時間後に最高濃度を示し, 各々平均2,570, 4,410, 6,290μg/mlで, 各投与量群共に投与量にみあつた濃度を示した。投与6時間後までの回収率は40mg/kgの3例中1例で採尿に失敗したことから10mg/kg, 20mg/kg, 40mg/kgの各々2, 3, 2例でみると各々平均92.2, 72.0, 77.9%であつた。
4.本剤40mg/kgを3例に30分間点滴静注で投与した時の尿中濃度はいずれも投与0~2時間後が最高値で平均7,083μg/ml, 投与終了後6時間までの平均回収率は77.3%であつた。
5.細菌感染症5疾患, 60例に対する臨床効果は症例の多くを占めた肺炎例はすべて有効以上で, 全例では有効率98.3%と非常に良好であつた。
6.細菌学的効果は22例に判定でき95.5%が消失し, 優れた除菌率を示した。
7.本剤を投与した61症例の副作用は2例3.3%に奪麻疹が出現し, 1例は本剤との関係が多分あり, 他の1例は関連があるかもしれないとされた。臨床検査値では末梢血の検査で好酸球をチェックした50例中3例6.0%に増多がみられ, 1例は本剤との関係が明らかにあり, 2例は関連があるかもしれないとされ, 血小板数を測定した37例中1例2.7%に増多が出現したが本剤と関連はなしとされた。肝, 腎への影響としてGOT, GPT, Al.P, BUN, Creatinineを各々45, 45, 26, 34, 34例に検査したところGOTとGPTの同時異常上昇が2例4.4%にみられ, 1例は本剤との関連があるかもしれない, 他の1例は関連はないらしいとされ, Al-P, BUN, Creatinineへの影響はなかつた。
抄録全体を表示