The Japanese Journal of Antibiotics
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32 巻, 5 号
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  • 紺野 昌俊, 生方 公子, 高橋 洋子, 沢井 稔, 斉藤 洪太
    1979 年 32 巻 5 号 p. 583-597
    発行日: 1979/05/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    近年, Penicillin系, Cephalosporin系薬剤の誘導体が次々と開発されつつあるが, それらの新誘導体の特徴は, グラム陰性桿菌に対してより優れた感受性をもつてはいるものの, 最小発育阻止濃度 (MIC) の測定にさいして, 接種菌量によつてMICが大きく変動するという特性をもつているものが多い1, 2)。従来, このような接種菌量によるMICの変動は, これらの物質のβ-Lactamaseに対する安定性の強弱に主な理由があるとされていたが, β-Lactamaseに強い安定性をもつていなくても, 優れたMICを示す物質もあり, 単にβ-Lactamaseに対する安定性ばかりではなく, これら新物質の細菌細胞膜の易透過性とか, その透過速度関与のほか, これらの物質が結合して抗菌作用を発揮するための菌側にある種々のTarget proteinへの親和性の良否も関係しているということをも併せ考えざるを得ない物質も出現してきた。
    以上のような理由から, グラム陰性桿菌に対して, 極めて優れた抗菌力を示すCefotiam (CTM) 3)を選び, 従来からあるCephalosporin系薬剤の中で最も殺菌力の強いCefazolin (CEZ) を対照として, CTMの抗菌作用について検討をおこなつたので, ここに報告する。
  • 有効2症例とその髄液中濃度
    小林 裕, 森川 嘉郎, 春田 恒和, 藤原 徹, 黒木 茂一
    1979 年 32 巻 5 号 p. 598-605
    発行日: 1979/05/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新生児期細菌感染症の起炎菌にグラム陰性桿菌 (GNR) が多く, なかでもEscerfcia coliが主役を演じることは古くから知られており, 化膿性髄膜炎においても同様である1, 2)。GNR髄膜炎は難治であり, アミノ配糖体の髄腔内注入を要するぱあいが多い3-5)が, E.coli髄膜炎は, Ampiciloin (ABPC) 感性株であれば, 単独で治療可能である。ただし, KAPLANら6)は最近のE.coli株の約2/3が最小発育阻止濃度 (MIC) 5μg/ml以上であったとし, このばあいABPCにGentamicin (GM) を併用することを推奨している。しかし, GMの有効髄液中濃度はなかなか得難い7-9)うら, 実際上主役を演じるのは, ABPCと考えるべきで9), ABPC耐性株が著明に増加し10), Cephalospo血耐性株もまた出現増加の傾向にある11, 12)今日, 耐性株のない新抗生剤の早急な検討が必要である。この点, β-Lactamaseに安定で, しかもE.coliにすぐれた殺菌力をもっCefmetazole (CMZ) 12, 18)は新生児期細菌感染症に対する有力な武器となり得ると期待されるが・新生児期は, 髄膜炎であつても固有の症状が現われにくく, しかも敗血症との随伴例が多い14)ので, 髄膜炎に有効でないと, 新生児期の選択剤としては適格でないと考えられる。
    そこでわれわれは, 先ず家兎黄色ブドウ球菌性髄膜炎を用いて検討した結果, 本剤は静注後かなりの髄液中濃度は得られるが, 反面, 髄液中からの消失が速やかであつた15)。また, B群溶連菌性髄膜炎に使用して著効を得たが, 50mg/kg静注1時間後の髄液中濃度は3.3μg/mlで16), E.coli髄膜炎のばあいの適否には問題が残された。
    今回われわれは, E.coli髄膜炎と考えられる2例に本剤を使用して効果をおさめ得た。わずか2例にすぎないが, 上述の観点から, その成績は重要な意義をもつと考えられるので, 報告したい。
  • 特に胆道系疾患について
    葛西 洋一, 中西 昌美, 沢田 康夫, 中村 孝, 橋本 伊久雄, 三上 二郎, 佐橋 佳郎
    1979 年 32 巻 5 号 p. 606-611
    発行日: 1979/05/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    最近, 腹部一般外科においても, 胆のう炎, 胆石症等の胆道系疾患を扱うことが多くなり, 特に急性胆のう炎患者が救急で運ばれてくることも, 稀ではなくなつた。これらの患者は, 急性腹症あるいは胆のう炎等として, 治療, 軽快, 再発をくりかえして, 抗生剤による治療を長期間おこなつていることがかなり多い。したがつて, 各種の抗生剤歩すでにかなり長期間, しかも不充分な使用量を使用され, 入院の上, 化学療法をおこなつても, すでに種々の抗生剤に耐性をもつでいる起炎菌のために, 内科的治療だけでは効果をあげ得ないことも, 日常たびたび経験するところである。
    特に最近では, 広く用いられている合成Penicillin剤, あるいはCephalosporin剤にも耐性をもつβ-Lactamase産生菌の存在が指摘され, これは術後の感染においても, 治療上の大きな問題となつてきた。
    これらの耐性菌に対して有効な抗β-Lactamase性をもつ抗生剤の開発が望まれるところである1)。
    我々は最近, β-Lactamaseに抵抗性をもつ新Cephamycin系抗生剤, Ceftnetazoleの試用をおこなう機会を得た。
    今回, 急性または亜急性の胆道系炎症性疾患に対して, Cefmetazoleを使用し, 急性症状の軽快後に手術をおこない, この術中にCefmetazoleを静注し, 血中濃度, A, B胆汁濃度, 胆のう壁内濃度の測定を施行した。この測定ができた患者は6例であつた。そこで, この6例についてCeflnetazoleの臨床効果と組織内濃度の関係を検索して, 興味ある所見を得たので報告する。
  • 斎藤 豊一
    1979 年 32 巻 5 号 p. 612-613
    発行日: 1979/05/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    現在ひろく使用されているセファロスポリン系薬剤にしても, ひろく用いられていればいるだけβ-Lactamase (Cephalosporinase) 産生菌が増加することが予想され, β-Lactamase抵抗性をもっCeplnalosponin剤の出現が望まれる。
    Cefmetazoleは, 1972年に開発されたβ-Lactamaseに抵抗性をもつ新らしい抗生物質である。
    さらに, Indole (+) Proteus, Serratiaなどにも強い抗菌力をもち, 嫌気性菌のうちBacteroides fragilisにも有効であるといい, 腎毒性, 一般毒性も従来のセファロスポリン系薬剤より少ないといわれている。
    我々は, 本剤を尿路感染症に対して応用したので, その経験をのべる。
  • II. THE ABSORPTIONO F SULBENICILLINF ROM THE BLADDER
    NOBUO KAWAMURA
    1979 年 32 巻 5 号 p. 614-623
    発行日: 1979/05/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    The present series of experimental studies was undertaken to give solutions to the following questions: (1) can antibiotics administered intravesically be abiorbed from the wall of the bladder?,(2) if so, does their intravesical injection prove to be effective in the treatment of cystitis? and (3) if this true, can their intravesical injection provide an advantage over their systemic use since a larger dose can be given at a higher concentration by the former method of administration?
    If an antibiotic is transferred in a substantial amount to the blood following its intravesical administration, the end result of such medication may be identical with that of administration by systemic routes since the antibiotic transferred into the circulation will eventually be recovered in the urine after being excreted by the kidney or through the wall of the bladder. It may be said, then, that a large intravenous or intramuscular: dose can be used more advantageously than cumbersome, frequent intravesical doses, although. this may not always be true with all types of antibiotics. If, on the other hand, an intravesically administered antibiotic is not transferred to the blood in substantial quantities or is promptly eliminated from the circulation after being transferred to it and, moreover, proves to be comparable to its systemic administration in terms of therapeutic efficacy against infection, this particular mode of antibiotic therapy may be suited for the treatment of patients with hepatic and/or renal impairment, those in whom injection is impractical as well as piegnant women
    These considerations led us to conduct basic and clinical studies of sulbenicillin (SBPC) in order to determine whether this antibiotic can permeate into the blood or can pass through bladder walls following intravesical injection, to what extent it is recovered in urine and whether or not it is clinically effective
  • 金沢 裕
    1979 年 32 巻 5 号 p. 624-626
    発行日: 1979/05/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    最近のグラム陰性桿菌感染症の増加につれ, これら細菌に対して強い抗菌力を示すことの多いアミノグルコシッド系薬剤は, その使用適用が漸次拡大しっつあると考えられる。
    アミノグルコシッド系薬剤は, 一般に筋肉内投与によつて使用されているが, 他の抗生剤においても問題になつているように, 筋肉注射の局所的副作用発現のおそれ, さらに, 一部のペニシリンなどに指摘されたような薬剤による感作の可能性の高いことなどから, 静注法の検討が強く望まれた。
    また, 肺化膿症など病巣に有効薬剤が移行するには, ある程度の高い有効血中濃度を一定時間持続することが有用であると推定される。最近, 広く用いられているペニシリン剤, セファロスポリン剤も, 中等度以上の感染症には, 筋注にかわつて静脈内投与が主流となりつつある。
    したがつて, アミノグルコシッド系薬剤についての静注法を活用するために, 今回はその代表的薬剤の1っであるDibekacinをとりあげ, 本剤の主要適用の1っと考えられる呼吸器感染症患者について点滴静注後の血中濃度の推移を検討した。
  • 滝本 昌俊, 吉岡 一
    1979 年 32 巻 5 号 p. 627-630
    発行日: 1979/05/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    抗生物質の体液内濃度をBioassayによつて測定するばあい, その測定値には, 測定者による大きなばらつきがあり, 抗生物質の体内動態を検討する上で大きな障害となつている。著者らは, Bioassayによる測定値の再現性を高める目的で, 現在広くおこなわれている2次拡散法について, 抗生物質の膠質 (寒天) 内単純拡散の物理学的検討をおこなった。
  • 大原 啓介, 窪田 博吉, 橋場 永尚, 高地 刀志行, 漆原 徹, 菊地 紀夫, 四元 徹志, 伊藤 健次郎, 市村 公道, 内田 朝彦, ...
    1979 年 32 巻 5 号 p. 631-637
    発行日: 1979/05/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Sodium (2S, 5R, 6R)-6- [(R)-2-(4-hydroxy-1, 5-naphthyridine-3-carboxamido)-2-phenylacetamido】-3, 3-dimethy1-7-oxo-4-thia-1-azabicyclo [3, 2, 0】heptane-2-carboxyoate (PC-904) は, 住友化学工業株式会社において新らたに開発された注射用半合成ペニシリンで, AmpicillinのAmino基に4-Hydroxy -3-carboxy1-1, 5-naphthyridineを導入したものである。広範囲の抗菌スペクトラムをもち, 特に緑膿菌をはじめとする多くのグラム陰性菌に強い抗菌力をもち, グラム陽性菌に対してもCarbeniciiiin (CBPC) と同等以上の抗菌力を示すとされ, その作用は殺菌的である。本剤は, 肝臓への移行が良好で, 胆汁中に高濃度に排泄され, 尿中への排泄は25~30%といわれる1)。胆汁中への移行が良好なことから, 胆道疾患における効果が期待されている。
    今回われわれは, 胆道疾患手術症例に本剤を使用し, その臨床的効果について検討し, 併せて, 本剤の血中および胆汁中濃度, 胆汁分離菌に対する抗菌力についての測定もおこなつたので報告する。
  • 大田 迪祐, 池辺 璋, 泉川 欣一, 岩崎 博円, 原 耕平
    1979 年 32 巻 5 号 p. 638-641
    発行日: 1979/05/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    ロイコマイシン (LM), ジョサマイシン (JM) などの16員環マクロライド系抗生物質は, 経口剤としてはアシル化して使用され, 注射剤としては, 酒石酸塩などの形で一般に使用されているが, 14員環マクロライド系抗生物暫にくらべて, その血中濃度が低いとされている。その原因としては, これら16員環マクロライド系抗生物質のマイカローズの4'位に結合するアシル残基が分解をうけたり1, 2), 体内で大環状ラクトンの14位が水酸化をうけたりして3)抗菌活性を失うためであろうと報告されており, したがつて, 直ちに分解されないような誘導体の開発が望まれている。Isoleucomycin A5 (以下HI-78と略) は, 一応この条件を満足させたもので, 東洋醸造によつて開発された, 図1のような構造式を示す誘導体である4)。図1 HI-78の構造式一方, マイコブラスマのうちでも, Mycoplasma Pneumoniae (以下M. pneu.と略) は, ヒトの異型肺炎をおこさせる病原体として知られているが, このものは細胞壁をもたないため, これら細胞壁に障害を与えて抗菌作用を示す抗生物質であるペニシリン系やセファロスポリン系抗生剤には感受性を示さない。最も強力な抗マイコプラスマ作用を示す抗生物質は, マクロライド系抗生物質であることは, 諸家の成績にもみられているが5~7), 新らしいマクロライド系抗生物質が登場すれば, 当然のことながら, 抗マイコプラスマ作用についても充分の検討を加えなければならない。
    我々は, 本剤のマィコプラスマに対する試験管内抗菌力と, さらにはM. pneu.に対しての試験管内抑制効果について検討をおこなつたので, その成績について報告する。
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