The Japanese Journal of Antibiotics
Online ISSN : 2186-5477
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49 巻, 6 号
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  • 小原 康治, 橋本 一
    1996 年 49 巻 6 号 p. 533-543
    発行日: 1996/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    放線菌の二次代謝産物として発見されたホスホマイシン (FOM) は, 細胞壁のペプチドグリカン合成初期段階のエノールピルビル転移酵素を阻害し抗菌作用を発揮する。 FOMはグルコース6-リン酸 (G6P) 取り込み系およびL-α-グリセロリン酸 (αGP) 輸送系を利用して透過する。
    FOMの最小発育阻止濃度は嫌気条件下で低ドし, このために腸管内でのFOM効果増強を生じ耐性菌が出現しにくいとされている。突然変異FOM耐性菌は10-6~10-8の頻度で低・中等度耐性菌が出現してくるが, FOMとの接触が続くと耐性が段々高度になる。 このようなFOM耐性化はヘキソースリン酸取り込み系の欠失, αGP輸送系の欠失や標的酵素遺伝子の一塩基突然変異により生じる。 臨床分離のFOM高度耐性セラチアでは伝達性プラスミド上のFOM耐性遺伝子fosAが腸内細菌に伝播し, その遺伝子産物であるFOM: グルタチオン付加酵素 (FOM: GST) の性状が知られている。 表皮ブドウ球菌のプラスミド性FOM耐性遺伝子fosBは非伝達性で, FosA蛋白と同一起源とされている。緑膿菌のFOM高度耐性に関しては非伝達性で, 内膜に緩く結合している FOM: GSTにより耐性化していると考えられている。 肺炎桿菌のFOM耐性に関しては, FOM: GSTおよび不透過性機構が知られている。これらの臨床分離細菌のFOM耐性遺伝子fOsAの起源はFOM生産放線菌自己耐性遺伝子にあるとされるが, FOM生産放線菌の自己耐性遺伝子 (fomAとfomB) による耐性機構との関連は未だ不明である。 他に, FOM生産菌である Pseudomonas syriingaeの自己耐性は膜不透過性およびFOMリン酸化機構 (fosC遺伝子) によることが知られている。 以上のように臨床分離FOM耐性菌の耐性機構および遺伝子解析や, FOM生産菌の自己耐性機構の詳細な解析が行われつつあり, これらの知見が今後の新しいFOM系抗生物質の開発を方向づけると期待される。
  • 品川 長夫, 由良 二郎, 真辺 忠夫, 真下 啓二, 石川 周, 水野 章, 平田 公一, 傳野 隆一, 向谷 充宏, 石引 久彌, 牛島 ...
    1996 年 49 巻 6 号 p. 544-554
    発行日: 1996/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    本研究は, 1982年7月から1995年6月の間の多施設における外科感染症からのPseudomonas aeruginosaの分離頻度とその薬剤感受性の変遷について検討したものである。一次感染症においてP. aeruginosaの分離頻度は調査期間を通じ数%と低かったが, 術後感染症からは10~20%の頻度であり, 第2~3位の分離頻度であった。一次感染症では, P. aenlginosu分離例の72.9%が複数菌感染であり, 同時に分離された細菌としては EscherichiacoliやEnterococcus spp. などが多かった。術後感染症では67.3%が混合感染であり, 同時に分離された細菌としてはEnterococcus spp., Methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA)を中心とするS. aureus, Klebsiella spp. などが多かった。最近の1年では, Gentamicin (GM), Amikacin (AMK), Cefsulodin (CFS), ztreonam (AZT), Carumonam (CRMN), Cefozopran (CZOP), Ceftazidime (CAZ), Ofloxacin (OFLX) のMIC90はともに12.5μg/mlであったが, Imipenem (IPM)では50μg/ml以上のMICを示した株が22株中5株(22.7%)あり, 耐性化の傾向を認めた。また, Minocycline (MINO) には全株が25μg/ml以上のMICを示した。わずかながら耐性菌の増加を認めたことから, 今後とも P. aeruginosaの動向には注意が必要であると考えられた。
  • その3. 感受性の推移
    熊本 悦明, 広瀬 崇興, 横尾 彰文, 引地 功侃, 茂田 士郎, 白岩 康夫, 亀岡 浩, 吉田 浩, 田崎 寛, 入 久巳, 内田 博 ...
    1996 年 49 巻 6 号 p. 555-657
    発行日: 1996/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1994年6月から翌年5月までの間に全国10施設において, 尿路感染症と診断された患者から分離された菌株 (Enterecoccus faecalis, Staphylococcus aureus, Citrobacter spp., Enterobacter spp., Escherichia coli, Klebsiella spp., Proteus mirabilis, Pseudomonas aeruginosa, Serratia spp.) を供試し, それらの各種抗菌薬に対する感受性を測定し, 1989年度~1993年度までと1994年度の感受性を比較した。比較は菌種を単純性尿路感染症, カテーテル非留置複雑性尿路感染症, カテーテル留置複雑性尿路感染症の3群に分類して行った。E.faecalisでは, 1993年度と比べるとAmikacin及びキノロン系薬剤に対する感受性が若干良くなった。S. aureusでは, 単純性尿路感染症から分離された4株がほとんどの薬剤に対して良好な感受性を示した。Citrobacter spp. 及びEnterobacter spp. では, 感受性に大きな変化は認められず Imipenem及びGentamicin の抗菌力が強かった。E. Coliではペニシリン系薬剤に対する感受性株がやや減少したが全体的に大きな変化は認められなかった。Klebsiella spp. ではペニシリン系薬剤に対する感受性株がやや減少し, アミノグリコシド系薬剤に対して耐性株が検出された。P. mirabilis では感受性分布に大きな変動は認められず Minocycline を除き良好な感受性を示したが, キノロン系薬剤に対して耐性株がみられた。P. aeruginosaでは Tobramycinに対して感受性に二峰化傾向がみられた。Serratia spp. については前年度までと比較すると全般的に感受性は良好であった。
  • 宗本 滋, 蘇馬 真理子, 黒田 英一, 浜田 秀剛, 中田 光俊
    1996 年 49 巻 6 号 p. 658-662
    発行日: 1996/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Staphylococcus aureus による成人髄膜炎に対し, Cefpirome (CPR) を使用しその髄液中濃度を経時的に測定し, 良好な結果を得たので報告した。CPR 2g を静脈内投与し, その血中濃度, 髄液中濃度を投与前, 投与後1時間, 2時間, 6時間, 10時間と2回目投与後1時間, 2時間, 6時間, 14時間に測定した。その結果 CPR は髄膜炎例では髄液移行が良く有効な薬剤と考えられた。
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