PROTEKT (Prospective Resistant Organism Tracking and Epidemiology for the Ketolide Telithromycin) は呼吸器感染症の主要原因菌に対する薬剤感受性を把握するための世界的な疫学調査であり, 加えて, ケトライド系抗菌薬Telithromycin (TEL) の耐性肺炎球菌に対する作用機序及び耐性機序を明確にするとともに, マクロライド及びケトライド耐性肺炎球菌についての分子解析を目的としている。
TELのマクロライド耐性肺炎球菌に対する抗菌作用は, 耐性機序に関係なく発揮され, ermB遺伝子保有株, mefA遺伝子保有株及びリボソーム変異株の全てに対し強い抗菌活性を示した。この結果は, TELがermB耐性を誘導しないことに加え, 突然変異による耐性菌の選択能も極めて低い事実を反映していると考える。また, これらの作用は, TELの新規性の高い化学構造に由来しており, マクロライド系薬にはないケトライド系薬特有の特徴と考えられた。
PROTEKTの1999~2002年の調査において, 全世界的に分離された肺炎球菌13,864株中ケトライド耐性菌 (TELMIC≥4μg/mL) は10株 (0.07%) に認められた。これら10株のMICは4または8μg/mLで, 全てermB遺伝子保有株であった。このことから, ケトライド耐性肺炎球菌の出現の背景には, ermB遺伝子産物であるアデニン・ジメチラーゼの何らかの関与が考えられた。
抄録全体を表示