The Japanese Journal of Antibiotics
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41 巻, 4 号
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  • 原 耕平, 小林 宏行
    1988 年 41 巻 4 号 p. 347-360
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Aztreonam (AZT) は米国スクイブ社で開発された注射用抗生物質で (Fig. 1), 従来の2環系β-ラクタム抗生物質であるペニシリン系あるいはセファロスポリン系とは異なり, β-ラクタム単環構造を有している。本母核構造が細菌由来であつたことから, 本系統のものはモノバクタム系 (Monocyclic bacterially-produced β-lactam antibiotics) と総称され, 他の2環系β-ラクタム剤とは別のカテゴリーに分類されている。
    本剤は日本, 米国, ヨーロッパなど多くの国々で基礎的・臨床的研究がなされ, すでに市販されているが, 本稿では本邦における検討成績を中心に本剤の特徴を述べる。
  • 由良 二郎, 品川 長夫, 石川 周, 水野 章, 早坂 滉, 白松 幸爾, 石引 久彌, 相川 直樹, 鈴木 啓一郎, 高橋 孝行, 酒井 ...
    1988 年 41 巻 4 号 p. 361-389
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1984年及び1985年の外科感染症由来の分離菌について, 全国6大学病院による共同研究を行い, 以下の成績を得た。
    1. 対象患者総数は1984年172例, 1985年211例で, このうち細菌が検出された症例数はそれぞれ147例及び174例であり, 細菌検出率は両年とも80%以上であつた。
    2. 分離された総菌株数は1984年267株, 1985年293株で, 材料別では両年とも腹腔内滲出液が最も多かつた。
    3. 一次感染由来の分離菌は両年度とも大腸菌が15~21%と最も多く, ついでバクテロイデス, ブドウ球菌の順である。
    一方, 術後感染症由来の分離菌としては腸球菌が増加して16~22%と最も多く, ついで緑膿菌が占めるが, 大腸菌と嫌気性菌は減少し, 分離菌種の多様化と, 分離頻度の均等化, 平均化の傾向が認められる。
    4. 術式別の術後感染症分離菌としては, 無菌手術ではブドウ球菌, 準無菌手術では腸球菌と緑膿菌が上位を占めている。汚染手術では腸球菌>大腸菌>クレブシエラ=緑膿菌=バクテロイデスの順で多く分離されている (1985年)。
    5. 宿主抵抗性減弱因子のない症例における分離菌は大腸菌, バクテロイデスなどが上位であるのに対して, 減弱因子を持つ場合は術後感染症由来菌の場合と同様に, グラム陰性桿菌の増加による分離菌種の多様化と, 分離頻度の均等化の傾向が認められた。
    6. 抗生剤投与の前後で層別した場合の分離菌は, 投与前では大腸菌, ブドウ球菌, バクテロイデス, クレブシエラなどが上位を占めたが, 投与後では腸球菌が最も多く, 1985年ではついで緑膿菌が第2位を占めており, 最近のセフェム系抗生物質の繁用結果であると考えられる。
    7. 1982~1985年の4年間のグラム陽性菌及びグラム陰性菌及び嫌気性菌の分離頻度については, グラム陽性菌には著変はみられず, グラム陰性菌の減少傾向と嫌気性菌の増加傾向がうかがわれた。
    8. 黄色ブドウ球菌, 腸球菌, 大腸菌, 肺炎桿菌, 緑膿菌及びBacteroides fragilis groupの6菌種の, 主要抗生剤に対する感受性の変化を1982年から1985年までの4年間について検討した。緑膿菌以外の5菌種ではMIC80の変動は小幅で, 明らかな耐性化傾向は認められなかつた。緑膿菌ではAmikacinを除くと年度によるMIC80の変動が大きく, 今後注意を要するとみなされた。
    なお, メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) については検討中であるが, Cefazolin及び Gentamicinに対する感受性の動向から, 十分な注意が必要と考えられた。
  • 藤井 良知, 目黒 英典, 西村 忠史, 小林 裕, 春田 恒和, 豊永 義清, 岡田 隆滋, 古川 正強, 喜多村 勇, 小倉 英郎, 本 ...
    1988 年 41 巻 4 号 p. 390-398
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    生後2ヵ月から8年11ヵ月の男児9例, 女児3例の重症な化膿性髄膜炎計12例にAztreonam (AZT) の単独療法を行つた。
    1日投薬量は134~400mg/kg, 投薬回数は1日3~4回, 投薬日数は10~28日であつた。
    起炎菌はNeisseria meningitidis 2例, Escherichia coli 3例, Haemophilus influenzae 6 例のほか脊髄髄膜瘤があり, 化膿性髄膜炎を繰り返す菌不明1例があつた。
    臨床効果は12例中5例が著効, 7例が有効で有効率100%であつた。菌検査が経過に従つて行われている9例では除菌率100%で, すべて72時間までに菌の消失がみられている。
    副作用は1例に下痢をみたが, 本剤使用前からのもので投薬を続けて消失した。GOT軽度上昇が1例に認められたが, 治療後速やかに前値に復した。
    AZTはH. influenzae, E. coli, N. meningitidisなどグラム陰性菌による化膿性髄膜炎には安全, 有効な抗生剤であり, 迅速抗原検出法が一般化された今日有用性が高いものと考えられるが, 将来緑膿菌性髄膜炎あるいは新生児期適応について検討を要するものと考える。
  • 小児呼吸器感染症におけるAmpicillin坐剤の臨床
    青河 寛次, 庄司 孝, 土山 憲一, 山路 邦彦
    1988 年 41 巻 4 号 p. 399-404
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Ampicillin (ABPC) の臨床分離株に対する抗菌力, ABPC坐剤の小児における血中濃度と臨床効果の検討を行い次の結果を得た。
    1. ABPCはStreptococcus pyogenes, Streptococcus haemolyticus, Haemophilus influenzae に対し, 鋭い抗菌力を示している。
    2. 125mg, 250mgの坐剤投与による血中濃度は30分後に2.2, 3.6μg/mlと高濃度を示した。
    3. ABPC坐剤を, 高熱を伴う急性呼吸器感染症15例に投与し臨床効果を検討した。有効率は78.6%であり, 重篤な副作用は認めなかつた。
  • 板垣 信生, 長谷川 廣文, 辻野 正隆, 高橋 計行, 山本 義久, 今田 聰雄, 堀内 篤
    1988 年 41 巻 4 号 p. 405-408
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Continuous ambulatory peritoneal dialysis療法施行中の慢性腎不全患者に対し, Cefotiam の投与を行い, その体内動態を検討した。
    1. 静脈内投与では, 6時間後の血清中濃度は25.9mg/Lであり, T1/2βは5.09時間であった。又, 透析液の最高値は6時間後の12.4mg/Lであつた。
    2. 腹腔内投与では, 15分後の血清中濃度は3.0mg/Lで, 最高値は4時間, 6時間後の 14.0mg/Lであった。又, 6時間後の透析液濃度は108.6mg/Lであつた。
  • 本田 英一郎, 島本 宝哲, 原 邦忠, 西尾 暢晃
    1988 年 41 巻 4 号 p. 409-414
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    中枢神経系は血液一脳関門 (Blood-Brain-Barrier以後BBB) の存在により, 抗生物質などの高分子物質の脳内への移行は極めて悪いのが実状である。
    今回は脳血管障害などの頭蓋内Accidentにより頭蓋内環境が変化した場合, 特に急性期群と慢性期群に分け, 全身投与されたCefoperazone (CPZ) がどの程度髄腔内に移行するかについて比較検討を行つた。
    その結果, CPZ2g投与後1時間目の髄液中濃度は急性期群 (発症後8日以内にCPZを投与した群)(4例) では2.06~9.38μg/ml (4.55±3.41μg/ml), 一方慢性期群 (発症後30日以降に投与した群)(3例) では0.2~2.55μg/ml (1.29±1.28μg/ml) と急性期群で高濃度移行が認められた。この理由は急性期状態ではBBBの部分的破壊, 不安定化の他に頭蓋内圧をコントロールする際の利尿・降圧剤の影響が考えられる。又, CPZ投与後6時間目においても髄液中濃度は1.42~4.30μg/ml (3.29±1.29μg/ml)(急性期群) と高濃度が維持された。
    なお, 急性期群だけでCPZ1g, 2gと投与量を変化させ, Dose dependentについて検討したが, CPZ1gと2gでは明らかなDose dependentが得られた。
  • 井田 士朗, 西岡 きよ, 滝島 任, 佐藤 清紀, 菊田 豊, 大浪 更三, 八巻 正昭, 木村 博, 工藤 国夫, 森 精一, 町田 淳 ...
    1988 年 41 巻 4 号 p. 415-426
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    75名の呼吸器感染症患者に対しCefotetan (CTT, Yamatetan ®) を点滴静注し, その臨床効果について検討した。疾患の内訳は細菌性肺炎40例, 慢性呼吸器疾患の急性増悪33例, 肺化膿症2例であつたが, 細菌性肺炎における有効率は82%, 慢性気道感染症では85%, 全体の有効率83.8%であつた。
    主な呼吸器起炎菌Haemophilus influenzae, Brmhamella catarrhalis, Streptococcus pneumoniaeの臨床分離株についてCTTの抗菌力を他剤と比較した。H. influenzaeに対してはβ-Lactamase産生の有無にかかわらず全株3.13μg/ml以下のMIC値であつた。B. catarrhalisではCefpiramideと同程度の抗菌力で1.56μg/ml以下のMIC値であった。S. pneumoniaeに対しては被験薬剤 (Benzylpenlicillin, Ampicillin, Cefotiam, Cefoperazone, Cefmenoxime) 中最も抗菌力が弱かったが, それでも3.13μg/ml以下で全菌株の発育を阻止した。
    本剤29を1時間で点滴静注した時の最高血中濃度は点滴静注終了直後で, それは342±25.7 μg/ml, 血中半減期は2.48±0.41時間であった。又, 本剤の最高喀痰中濃度は症例ごとに大きなばらつきがみられたが, おおむね0.40~1.80μg/ml程度であった。
    副作用には, 発熱, 発疹をきたした症例が4例, 5.3%であったが, その他に, 本剤投与によると考えられる間質性肺炎の症例が1例認められた。臨床検査値異常は大多数がTransaminase 上昇例であり13例, 17.3%を占めた。
  • 中西 憲之, 芝田 和夫, 松下 忠弘, 谷 佳都, 山口 東太郎
    1988 年 41 巻 4 号 p. 427-436
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Aspoxicillin (ASPC) の大腸菌に対する抗菌作用へのN4-Methyl-D-asparagine側鎖の寄与を明らかにするためにDehydroxyaspoxicillin (AB-ASPC) の殺菌作用及びペニシリン結合蛋白質 (PBP) への親和性をPiperacillin (PIPC), Mezlocillin及びApalcillinを対照薬として検討した。Escherichia coli K-12に対してAB-ASPCはASPCと同様に接種菌量が2×108CFU/mlと高い場合でも殺菌的に作用し, 位相差顕微鏡による観察では菌体をSpheroplast様あるいはBulge様構造に変化させ溶菌することが示された。一方, PIPC等の既存のアシル・ウレイドペニシリン剤では伸長化した細胞だけ観察され溶菌像は認められなかつた。これらの形態変化は走査電子顕微鏡でも観察された。AB-ASPCの溶菌作用がASPCと同様に優れていることは, E. coliχ1776の自己融解酵素 (Autolysin) のトリガー活性が対照薬剤と比較して強いことからも裏づけられた。ASPCはE. coli K-12のPBP 1A, 1Bs, 2及び3と結合しその親和性の強さとパターンはAmpicillinと良く似ていた。AB-ASPCはASPCと比較してPBP 1A, 1Bs との結合が弱く, 逆に3との結合が幾分強かった。AB-ASPCの上記の性質から考えて, ASPC がアシル・ウレイドペニシリン剤の中で大腸菌に対し溶菌を伴う最も強い殺菌作用を示すのは側鎖のN4-Methyl-D-asparagineによるものと考えられる。
  • 今泉 宗久, 新美 隆男, 内田 達男, 梶田 正文, 高橋 隆, 内田 安司, 浅岡 峰雄, 天野 謙, 小鹿 猛郎, 阿部 稔雄
    1988 年 41 巻 4 号 p. 437-459
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1. Cefotetan,(CTT) 1g, 30分間点滴静注による血清中濃度は投与開始30分値が平均99.4μg/mlであり, その後漸減し, β相における半減期は2.45時間であった。CTT 1g, 1時間点滴静注による血清中濃度は投与開始1時間後平均104.1μg/mlと最高値を示し, 2, 4, 6時間値がそれぞれ平均で63.4, 34.3, 27.0μg/mlであり, β相における半減期は2.35時間であつた。
    2. CTTの正常肺組織内濃度は30分点滴静注投与ではTmax1.82時間で, Cmax19.8μg/g であり, 1時間点滴静注投与では投与開始2時間値が平均39.7μg/gと最高値を示し, 3, 4, 6 時間値はそれぞれ32.2, 22.2, 8.76μg/gであり, Tmax1.82時間で, Cmax30.5μg/gであつた。
    3. Cefbuperazone (CBPZ) 1g, 1時間点滴静注による血清中濃度は投与開始後1時間値で平均83.3μg/mlと最高値を示し, 2, 4, 6時間値はそれぞれ40.4, 19.8, 9.62μg/mlでありβ相の半減期は2.03時間であった。
    4. CBPZの正常肺組織内濃度は投与開始1時間値が平均31.6μg/gと最高値を示し, 3, 4, 8時間値がそれぞれ16.2, 11.0, 4.56μg/gであり, Tmax1.67時間で, Cmax21.9μg/gであつた。
    5. CBPZの細気管支組織内濃度は投与開始後3, 5時間値が平均7.87, 4.85μg/gであり, 血清ピ一ク値に対する比率は9.4, 5.8%であつた。
    6. CBPZの肺門リンパ節内濃度は投与開始後2, 3, 3.5, 4, 5時間値が平均7.49, 5.96, 10.2, 7.63, 3.52μg/gであり, Tmax2.23時間で, Cmax7.93μg/gであった。
    7. CTT及びCBPZはCBPZ症例で原因不明の食道瘻から膿胸を発生した1例を除けば, 術後感染症の発生はなく, 又, 重篤な副作用の出現もなく, 呼吸器疾患の術後感染予防に両者ともに有用であった。
  • 佐々木 文章, 高田 尚幸, 秦 温信, 及能 健一, 内野 純一
    1988 年 41 巻 4 号 p. 460-466
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefbuperazone (CBPZ) を乳癌, 甲状腺癌患者の術後に投与し, 創部滲出液中濃度と術後感染予防効果について検討した。
    対象症例は乳癌9例, 甲状腺癌10例である。CBPZ2gを生理食塩水100mlに溶解し, 手術後1時間以内に30分かけて点滴静注した。CBPZ投与前及び投与後6時間にわたり滲出液, 静脈血を経時的に採血し, CBPZ濃度を測定した。本剤を1回29, 1日2回術後2~6日間にわたつて点滴静注した。
    乳癌患者の滲出液中の濃度のピークは投与直後から3時間後に分布し, 平均66.3±23.9μg/ml であった。投与6時間後に平均33.3±11.2μg/mlであり, 全例で血清中濃度を上回る高値を示した。甲状腺癌術後の滲出液中濃度は症例間で差が著しかったが, 乳癌患者とほぼ同様の結果であった。術後創感染例もなく, 又, 本剤によると思われる自他覚的副作用, 臨床検査値具常も認められなかつたことから, CBPZは乳癌, 甲状腺癌の滲出液中に十分濃度の移行がみられ, 感染予防において有用性のある薬剤と結論した。
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