The Japanese Journal of Antibiotics
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47 巻, 3 号
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  • 島田 馨
    1994 年 47 巻 3 号 p. 219-244
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Panipenem/Betamipron (PAPM/BP, CS-976) は三共株式会社で開発された新規のカルバペネム系抗生物質Panipenem (PAPM) と有機アニオン輸送系阻害剤Betamipron (BP) を1: 1 (重量比) に配合した注射用抗生物質である (Fig. 1)。
    PAPMは各種細菌の産生するβ-ラクタマーゼに安定であると共にその阻害活性も強く, MRSA, Enteromcus faecalisを含むグラム陽性菌, Pseudomonas aerugisaを含むグラム陰性菌, Bactoides fragilis, Closidim diffcileを含む嫌気性菌等に強力な抗菌活性を示す。また, 各種病原菌によるマウス感染治療実験においても優れた効果が認められており, 中枢神経系への作用も極あて弱い。PAPMのウサギ腎毒性試験ではCephaloridine (CER) の腎毒性より低いことが認められたが, 安全性を更に高める為に, 腎毒性発現部位へのβ-ラクタム剤取り込み抑制作用を有する有機イオン輸送抑制剤のBPとの配合剤が開発された。
    BPは腎デヒドロペプチダーゼ1阻害作用や一般薬理作用を有さない安全性の高いアミノ酸誘導体である1~3)。
    本剤の基礎的・臨床的検討は, 前臨床試験後, 第一相試験が1987年および1990年 (追加試験) に, 一般臨床試験が1988年から1991年にわたって実施され, その間に比較試験を実施し, 本剤の有用性が確認された。その成績は第38回日本化学療法学会総会 (1990年12月7日, 岐阜) において新薬シンポジウムとして発表され, この報告は日本化学療法学会雑誌 (Chemotherapy) に39巻SupPl. 3として発表されている。
    以下, PAPM/BPの概要について記述する。
  • 山城 芳子, 島倉 雅子, 南 新三郎, 福岡 義和, 保田 隆, 渡辺 泰雄, 成田 弘和, 赤間 美徳
    1994 年 47 巻 3 号 p. 245-254
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1993年5月~6月に富山市民病院において分離された22菌種260株, ならびに1992年6月~ 7月に同施設で分離されたStaphylococcu aureusおよび, Pseudomonas aeruginosa計87株に対するTosufloxacin (TFLX) の抗菌活性を測定し, 他のニューキノロン系抗菌薬 (Ofloxacin, Cipro-floxacin, Sparfloxacin, Fleroxacin) と比較した。その結果, 1993年分離株に対してはTFLXは多くの菌種で優れた抗菌活性を示し, 特にMethicillin-susceptible S. aureus, Methicillin-susceptible Staphylococcus epidermidis, Methicillin-resistant S. epidermidis, Enterococcus faecalis, Escherichia coliではTFLXのMIC50は0.025~0.39μg/mlで最も低い値を示した。また, Klebsiella pneumoniaeP. aeruginosaに対するMIC50も0.05および0.39μg/mlと低かった。しかし, 一方でTFLXに耐性 (TFLXのMIC≥6.25μg/ml) を示す株も認あられ, これらの耐性株は他のキノロン系抗菌薬と交叉耐性を示した。特にMethicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) では60%以上の株がキノロン系抗菌薬に耐性であつた。また, MRSAでは1992年分離株に比べ1993年分離株の耐性菌分離頻度が明らかに増加しており, 同様の傾向はP. aeruginosaにおいても認あられた。MRSAのコアグラーゼ型は, II型が大半を占め, キノロン耐性のMRSAはすべてII型であった。
  • 猪狩 淳
    1994 年 47 巻 3 号 p. 255-267
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    私共は1988年から臨床分離株の常用抗菌薬に対する感受性の疫学的調査を全国的規模で実施している。
    今回はUTI患者尿から分離された頻度の高い菌種の抗菌薬感受性について報告する。調査期間は1991年9月~12月。参加施設は全国各地の病院臨床検査部123施設。調査で検討した菌株数は総計7, 694株。分離株の同定および薬剤感受性試験は各臨床検査部で実施, その結果を所定の調査用紙に記入し, これらを回収し, 解析, 集計した。
    なお, 感受性測定はNational Committee for Clinical Laboratory StandardsにもとつくKB ディスク法によった。
    次の10菌種について行う。Staphylococcus aureus (MRSA MSSA), Coagulase-negative staphylococci (CNS), Enterococcus faecalis, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Enterobacter cloacae, Citrobacter freundii, Serratia marcescens, Proteus mirabilis, およびPseudomonas aeruginosa。結果の概略は以下の通りである。なお, ディスク法で「S」を示したものを感性株とした。
    S. aureus:MRSAには被験薬剤に対し, ほとんどの株が耐性。MSSAにはセフェム剤, Imipenem (IPM), Clindamycin, Minocycline (MINO) に対し約90%の株が感性。
    CNS:Cefotiam (CTM), IPM, MINOに対し約80%の株が感性。
    E. faecalis:IPM, Ampicillin, Piperacillinに対し約90%の株が感性を示し, ほかの薬剤にはほとんどの株が耐性であつた。
    E. coli, K. pneumoniae:セフェム剤, IPM, アミノ配糖体剤, 新キノロン剤に90%以上の株が感性。
    E. cloacae, C/reundii: IPMに90%以上の株, Gentamicin (GM), Onoxacinに70~80%の株が感性。Smarcescen 5:IPMとGMに70~80%の株が感性。
    P. mirabilis:ペニシリン剤, セフェム剤, IPM, アミノ配糖体剤, 新キノロン剤に多くの株が感性。
    P. aeruginosa: IPM, Ceftazidime, AMK, Cefsulodin, Cefoperazone, PIPCに対し70~90%の株が感性。
    尿路感染症の治療は, 特別な場合を除いて, 抗菌化学療法が中心となる1)。その際起炎菌の同定とその菌に対する抗菌薬感受性試験の成績に基づき投与薬剤が決定されるのが一般的である。さらに, 尿路感染症の主要な起炎菌について抗菌薬感受性の動向を把握しておくことも, 抗菌薬を選択する上に必要なことである。
  • YORIKAZU ISHIKAWA, TAKASHI SHIMIZU, YUKIO SAKIYAMA, SYUZO MATSUMOTO, Y ...
    1994 年 47 巻 3 号 p. 268-271
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    免疫不全状態にある小児8例に合併した深在性真菌感染症に対してFluconazole (FLCZ) を投与し有効性を検討した。原疾患のうちわけは急性白血病3例, 悪性リンパ腫1例, 先天性免疫不全症2例, その他2例である。真菌感染は真菌血症1例, 尿路感染症1例, 肺炎4例, 真菌血症疑い2例である。判定不能な1例を除いた7例中6例が有効であり, 副作用は認められなかった。FLCZは免疫不全状態にある小児に合併した真菌感染症に対し有効かっ安全な薬剤である。
  • 佐藤 吉壮, 岩田 敏, 秋田 博伸, 小林 道弘, 横田 隆夫, 砂川 慶介
    1994 年 47 巻 3 号 p. 272-279
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    4例の深在性真菌感染症に対してFluconazole (FLCZ) を静脈内投与し, 臨床的効果及び細菌学的効果を検討した。臨床的効果は4例中3例が有効であつた。細菌学的効果は4例中3例が消失であった。副作用, 検査値異常は認められなかった。
    2例で血中濃度の検討を行った。FLCZの投与量は, 1日1回3~6mg/kg点滴静注で良好な血中濃度が得られた。
    これらの結果からFLCZは小児科領域における深在性真菌感染症に対し有用性の高い薬剤であると考えられる。
  • 神谷 齊, 庵原 俊昭, 安田 尚樹, 櫻井 實, 伊藤 正寛, 東 英一, 井戸 正流, 中野 貴司
    1994 年 47 巻 3 号 p. 280-288
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Fluconazole (FLCZ) はトリアゾール系抗真菌剤であり, Candida属, Aspergillus属及び Cryptococcus属による深在性真菌症に対し高い有効性が確認されている薬剤である。今回, FLCZ 小児科領域臨床試験の総合研究班の一員として, 新剤形のFLCZ細粒剤を使用する機会を得たので, 注射剤と併せて小児深在性真菌症に対する有効性及び小児に対する安全性について検討した。我々は6例の真菌感染症の治療に本剤を使用し, 良好な成績を得た。対象とした疾患は真菌性蜂窩織炎2例, 食道カンジダ症2例, 真菌性気管支炎1例及び口腔内真菌感染症1例の計6例であり, その原因真菌はCandida albicans 4例, Aspergillus fumigatus 1例, Aspergillus flavus 1 例であつた。臨床効果は著効3例, 有効3例, 真菌学的効果は消失5例, 減少1例という成績であった。また易感染状態にあり真菌感染症のリスクが高いと思われた5症例に予防を目的に本剤を投与し, これら5例において真菌感染症の併発及び不明熱等は認あられなかった。なお, 細粒剤又は注射剤投与中において副作用, 臨床検査値異常は認あられず, 小児においても安全性の高い薬剤であると思われた。
  • 関 秀俊, 瀬野 晶子, 酒詰 忍, 篠田 和子, 新谷 尚久, 和田 泰三, 和田 英男, 小泉 晶一, 谷口 昂, 堀田 成紀, 太田 ...
    1994 年 47 巻 3 号 p. 289-295
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    血清学的に深在性真菌症と診断した基礎疾患を有する小児の患者にFluconazole (FLCZ) の注射剤と細粒剤を投与し, 血清学的及び臨床的効果を検討した。注射剤をカンジダ性多発性肝脾膿瘍あるいはアスペルギルス症を合併した急性白血病各々1名に, さらに細粒剤をD-アラビニトールの上昇を認めた神経芽細胞腫1名と再生不良性貧血1名に投与した。いずれも特に問題となるような副作用を認めず, 血清学的にも臨床的にも改善し有効であった。
    また, 未熟児1名を含む新生児6名にFLCZ (3mg/kg体重) を静脈内投与し, 血漿中濃度推移を検討した。血漿中濃度半減期は37.4~41.2時間と成人や学童児に比較し延長しており, 投与する上で注意が必要であると考えられた。
  • 杉田 久美子, 三宅 宗典, 滝谷 公隆, 村田 卓士, 西村 忠史, 青木 繁幸
    1994 年 47 巻 3 号 p. 296-303
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Fluconazoleはトリアゾール系抗真菌剤で, 経口及び静脈内投与が可能で, 組織移行性は良好で副作用発現も少ないことから, 小児の深在性真菌感染症に対し安全に使用でき, その効果が期待できる。
    我々は6症例に対し, 本剤を経口 (細粒剤) 及び静脈内投与した。起炎菌はCandi6aalbiCans 及びCandidasp. で, 疾患はカンジダ敗血症3例, 消化管カンジダ症2例, 皮膚カンジダ症1例であった。5例について真菌学的, 臨床的評価を行ったが, 敗血症の2例は真菌の減少はみられず, 臨床的効果も無効であつた。1例は真菌の減少はみられたが臨床的効果は無効であった。消化管カンジダ症1例は真菌は消失, 1例は不明であつたが, 臨床効果はともに著効であった。皮膚カンジダ症を加えた6例で副作用, 臨床検査値について評価したが, 明らかな異常は全例で認あられなかった。
    今回カンジダ敗血症例での治療成績は不良であったが, 重症例が多かったこと, 治療時期の問題が考えられ早期診断早期治療が重要となると思われた。
  • 脇口 宏, 久川 浩章, 篠原 示和, 渡辺 誠司, 岡田 泰助, 三崎 泰志, 友田 隆士, 森田 英雄, 倉繁 隆信
    1994 年 47 巻 3 号 p. 304-308
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    小児の深部真菌感染症に対して, Fluconazole (FLCZ) による治療を試み, 2例で効果が見られたので報告する。
    症例1は再発ALLの治療中にカンジダ性食道炎を合併した7歳男児。FLCZ6mg/kg/日の投与で, 10日後には解熱した。D-ArabinitolとFungal Indexが著しく上昇し, 解熱とともに低下した。症例2はALLの治療中にカンジダ性肺炎を合併した14歳男児。FLCZ3mg/kg/日の投与で, 2週間後には一時軽快したが, 白血病細胞の増加とともに再度増悪して死亡した。肺炎発症時, D-Arabinitolが陽性で治療によつて低下したが, 死亡4日前には再度上昇し, Cand-Tecも陽性となった。症例3は神経芽細胞腫の治療中にカンジダ性肺炎を合併した7歳女児で, FLCZ の効果なく死亡した。
    FLCZによると思われる副作用は見られなかった。
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