私共は1988年から臨床分離株の常用抗菌薬に対する感受性の疫学的調査を全国的規模で実施している。
今回はUTI患者尿から分離された頻度の高い菌種の抗菌薬感受性について報告する。調査期間は1991年9月~12月。参加施設は全国各地の病院臨床検査部123施設。調査で検討した菌株数は総計7, 694株。分離株の同定および薬剤感受性試験は各臨床検査部で実施, その結果を所定の調査用紙に記入し, これらを回収し, 解析, 集計した。
なお, 感受性測定はNational Committee for Clinical Laboratory StandardsにもとつくKB ディスク法によった。
次の10菌種について行う。
Staphylococcus aureus (MRSA MSSA), Coagulase-negative staphylococci (CNS),
Enterococcus faecalis, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Enterobacter cloacae, Citrobacter freundii, Serratia marcescens, Proteus mirabilis, および
Pseudomonas aeruginosa。結果の概略は以下の通りである。なお, ディスク法で「S」を示したものを感性株とした。
S. aureus:MRSAには被験薬剤に対し, ほとんどの株が耐性。MSSAにはセフェム剤, Imipenem (IPM), Clindamycin, Minocycline (MINO) に対し約90%の株が感性。
CNS:Cefotiam (CTM), IPM, MINOに対し約80%の株が感性。
E. faecalis:IPM, Ampicillin, Piperacillinに対し約90%の株が感性を示し, ほかの薬剤にはほとんどの株が耐性であつた。
E. coli, K. pneumoniae:セフェム剤, IPM, アミノ配糖体剤, 新キノロン剤に90%以上の株が感性。
E. cloacae, C/reundii: IPMに90%以上の株, Gentamicin (GM), Onoxacinに70~80%の株が感性。Smarcescen 5:IPMとGMに70~80%の株が感性。
P. mirabilis:ペニシリン剤, セフェム剤, IPM, アミノ配糖体剤, 新キノロン剤に多くの株が感性。
P. aeruginosa: IPM, Ceftazidime, AMK, Cefsulodin, Cefoperazone, PIPCに対し70~90%の株が感性。
尿路感染症の治療は, 特別な場合を除いて, 抗菌化学療法が中心となる1)。その際起炎菌の同定とその菌に対する抗菌薬感受性試験の成績に基づき投与薬剤が決定されるのが一般的である。さらに, 尿路感染症の主要な起炎菌について抗菌薬感受性の動向を把握しておくことも, 抗菌薬を選択する上に必要なことである。
抄録全体を表示