1982年7月から開始した外科感染症分離菌に関する21施設共同研究であるが, ここでは1994年度 (1994. 7.~1995. 6.) の成績をまとめた。1年間で調査対象となった症例は151例であり, 120例 (79.5%) から296株の細菌が分離された。一次感染症から153株, 術後感染症から143株分離されたが, 一次感染症では術後感染症と比較しグラム陽性並びに陰性の嫌気性菌の分離率が高く, 術後感染症では好気性のグラム陽性菌の分離率が高かった。好気性のグラム陽性菌では, Enterococcus faecalisの分離頻度が高く, 次いでstaphylococcus aureusであり, 嫌気性のグラム陽性菌では, 一次感染症でstreptococcus intermediusが多く分離されたが, 術後感染症では少なかった。好気性のグラム陰性菌では, 一次感染症からEscherichia coliの分離頻度が最も高く, 次いでKlebsiella pneumoniae, Pseudomonas aeruginosaなどであった。一方, 術後感染症からはP. aeruginosaの分離頻度が最も高く, 次いでSerratia marcescens, E. coliなどであった。嫌気性のグラム陰性菌では, 一次感染症および術後感染症ともBacteroides fragilis groupの分離頻度が高かった。E. coliについて, Cefazolin (CEZ) で100μg/ml以上のMICを示した株が30株中4株 (6.7%) あった。また, P. aeruginosaについて, Imipenem (IPM) で50μg/ml以上のMICを示した株が22株中5株 (22.7%) あり, わずかながら耐性化の傾向を認めた。
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