Clindamycin-2-palmitate hydrochlorideは, Clindamycin (CLDM) のパルミチン酸とのエステルで, 水溶性であるが,
in vitroでは, そのままの形で微生物に対し不活性である。これを生体に経口的に投与すると, 水解され, 初めて活性のあるCLDMとなる。本剤は, 白色~灰白色の粉末で, これを用に臨んで45mlの蒸溜水を加えてよく混和すれば, その5mlのなかに75mgのCLDM-baseを含有することになり, この液は室温で2週間安定であるが, その間冷蔵庫内に保存するとゲル化するので, そのさいには, 使用に先立つて室温程度に加温しておかなくてはならない1)。
CLDM-palmitateそのものの抗菌活性は, きわめて低く, そのMICは
Staphylococcus aureusでは50~200mcg/ml,
Streptococcus hemolyticus 50mcg/ml,
S. fecalis50->200mcg/ml,
Escherichia coli>200mcg/ml,
Proteus vulgaoris>200mcg/ml,
Klebsiella pneulnoniae>200mcg/mlという1) が, これが体内に吸収されCLDM-baseの形となれば,
S. aureusには0.05-0.2mcg/ml,
St. pyogenes<0.0125-0.05mcg/ml,
St. viridans 0.006-12.5mcg/ml,
D. pneumoniae<0.0125-0.05mcg/ml,
St. fecalis 0.8-12.5mcg/ml,
Hemophilus influenzae 0.8-6.3mcg/mlであるという1)。
小児にCLDM-palmitateを体重1kgあたり2, 3, 4mg 1回経口投与したばあい, 血中濃度のPeakは約1時間後に1.25~2.5mcg/mlとなつて, 約6時間まで有効血中濃度が保持され, これらの成績にもとついて, 小児に対する本剤の使用は, 1日1kgあたり8~16mgが適当で, この量を4等分して投与すれば, 有効血中濃度が持続的に保持されるばかりでなく, 特異な副作用の出現もみられないという2)。
私たちは, たまたまCLDM-palmitateの試供をえ, 小児期2, 3の急性感染症に使用する機会をえたので, その成績の大要を報告する。
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