セファセトリル (以下CECと略す) は, 1965年スイスのCiba-Geigy社研究所におv・て合成されたセブプロスポリンC誘導体の1っで, 図1に示す化学構造をもっ。化学構造上からは, 3位の側鎖からセファロチン (CET), セファピリン (CEPR) と近縁の物質とv・える。
本剤については, すでに本邦においても基礎, 臨床両面から十分検討され, それらの成績は第21回口本化学療法学会東日本支部総会 (1974年11月) および第22回日本化学療法学会西日本支部総会 (1974年12月) において総括的に討議され, 化学療法学会としての評価がなされているが, 本剤の特徴は
1.近縁のCET, CEPRと同様に, 体内でエステラーゼの作用を受け, 3位が加水分解を受けるが, その程度が低い1剣3)(すなわち, 代謝分解による不活化率が低い)。
2.そのために血中および臓器内濃度がCET, CEPRより高い1, 3)。
3.大腸菌, 肺炎桿菌の耐性化がCET, CEPRより少ない4~7)。
4.β-ラクタマーゼ抵抗性がセファゾリン (CEZ) より高い8, 9)。
5.腎障害性はのETと同程度でセファロリジン (CER), CEZより少ない10, 11)。などに要約される。
本剤を人に投与したときの血中濃度, 尿中排泄等についても, すでに上田5), 中川3), 大久保12), 徳永13), 那須14), 石山15), 柴田16), 為末17), 名出18), 熊沢19) らによつて検討されている。
ところで, 我々の心臓外科の領域で抗生剤を使用する機会が最も多いのは, 術後の感染予防の目的で使用するばあいである。心臓手術のばあい, 人工心, 肺等の機器の使用や, 人工弁, 人工血管, パッチ等の非生体材料の装着等の, 特殊事情があるため, 一般外科のばあい以上に, 感染対策は重要である。したがって, 使用すべき抗生剤の条件としては, 抗菌力と共に手術部位である心臓組織内への移行性の良否もきわめて重要であると考えられる。
CECの心臓内移行性については, 海外ではRFGAMFY, C.20), ADAM, D.21) らによつて検討されているが, 国内での成績は未だ見当らないため, 当科入院患者で開心術施行症例を対象として若干の検討をおこなったので報告する。
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