日本大腸肛門病学会雑誌
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35 巻, 1 号
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  • ことに診断を中心に
    由井 三郎, 西野 光一, 冬広 雄一, 奥野 匡宥, 梅山 馨, 井関 基弘, 木俣 勲, 高田 季久, 赤尾 満
    1982 年 35 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 1982年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    近年海外渡航の増加とともに,アメーバ赤痢に罹患する症例も増加する可能性あり,膿粘血便を主訴とする患者を診る時には,他の炎症性腸疾患と鑑別する必要がある.我々は過去7年間に5例の腸アメーバ症を経験した.全例男性で,青壮年層にみられた.主訴は膿粘血便3例,水様性下痢2例,下血2例などで,海外渡航歴は3例に認められ,1例は戦時中台湾でアメーバ赤痢に罹患した症例であった.直腸鏡では全例に周囲の盛り上がったタコイボ状潰瘍を多数認め,病変部位は直腸及び一部S状結腸下部に限局していた.直腸鏡によって得られた擦過粘血液及び生検組織より4例に栄養型アメーバを,残り1例は糞便より浮遊法によって嚢子型アメーバを検出した.Seramebatestは施行した3例すべてに陽性であった.以上腸アメーバ症の診断には典型的な潰瘍の観察と,直腸鏡により得られた粘血液,生検組織よりのアメーバの検出,及び免疫学的診断法(Seramebatest)が有用であった.
  • 病理組織学的検索を中心に
    神野 大乗, 植田 哲生, 山中 克憲, 根本 儀一郎, 国松 正彦, 加藤 克彦, 坂部 孝, 岡野 匡雄
    1982 年 35 巻 1 号 p. 10-14
    発行日: 1982年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    昭和45年から昭和55年に至る11年間に施行された結腸癌治癒切除例は129例であった.12例に他臓器浸潤がみられ合併切除が施行されたが,組織学的に真の他臓器癌浸潤は8例で他の4例は炎症性癒着に起因するものであった.他臓器浸潤例の部位別頻度は肝彎曲部が最多で結腸癌治癒切除4例中3例であった.リンパ節転移は12例中2例に陽性がみられたのみであったが,脈管侵襲では静脈侵襲12例中9例,リンパ管侵襲12例中10例であった.
    遠隔成績は手術死,他病死各1例を除き10例中7例(炎症性癒着3/3,癌侵潤4/7)が生存中であり,予後はかならずしも悲観的でないため,他臓器への癌浸潤が疑われるときは積極的に合併切除すべきと考える.
  • 小林 世美, 吉井 由利, 杉原 康弘, 春日井 達造
    1982 年 35 巻 1 号 p. 15-18
    発行日: 1982年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸癌に対するスクリーニングとして,便潜血テストを胃集検に併用し,その施行上の問題点を検討した.ヘモカルト(グァヤック法,感度5千倍)を用い,胃集検X線検査の数日前から軽い食事制限を行い,3目連続で採便し,1日でも陽性塗示したものを陽性者とした.対象は,40歳以上の1090人で,陽性者は113人,10,3%であった二次スクリーニングとして,問診,理学的所見,直腸診と直腸診で採取した便で,便潜血スライドシオノギB(グァヤック法,感度2万倍)を用いでテスト,陽性者は,潜血食にて更に2日連続採便し,シオノギBで再検した.その結果要精検率を2.1%にしぼりえた.精検は先ず大腸X線検査を行い必要があれば内視鏡検査を行った.癌は発見されなかったが,ポリープ4例が発見された.この方法を全国的に普及させるためには,マスコミを通しての一般の啓蒙と対がん協会との協力関係の確立が必要である.
  • 成田 則正
    1982 年 35 巻 1 号 p. 19-28
    発行日: 1982年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    これまで利用されることの少なかったGolgi法をヒトの大腸に用いて,その壁在神経を3平面の立体的立場から,形態学的に検索した.
    脳卒中,頭部外傷および心筋硬塞で死亡した男性16例の解剖時に採取した粘膜病変のない大腸と下痢,便秘または腹部膨満のみられた器質的疾患患者4例の大腸をホルマリン固定し,Golgi法で鍍銀した.その後,セロイジン包埋を行い,連続切片を作製して光顕にて観察した.
    その結果,筋層問神経叢と粘膜下神経叢の間には両者を連絡する神経線維が存在し,便通異常を示した器質的疾患群ではともに,これらの神経線維に病変をみとめた.
    以上のことから,筋層間神経叢と粘膜下神経叢との間には腸管の運動に関与する神経回路が想定され,ここに変化が及ぶと便通異常が発症すると推察された.
  • 浅江 正純, 浦 伸三, 山口 敏朗, 殿田 重彦, 家田 勝幸, 江川 博, 勝見 正治
    1982 年 35 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 1982年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    最近,我々はS状結腸にmucosal brideを認めた2症例に遭遇したので報告する。症例1:37歳男性.左下腹部痛を主訴に来院.既往歴として13歳の時粘血便で1週間加療を受けた.現病歴は,昭和54年2月頃より左下腹部痛,肛門出血および体重減少を認め,7,月入院した.症例2:36歳,女性.母親が赤痢で死亡.既往歴に,1歳頃母親と同様の赤痢様症状を呈した.現病歴は,昭和55年8,月頃より左下腹部痛と体重減少を認め,9月初診となった.2症例とも注腸透視,大腸内視鏡により,S状結腸に大小不同の多彩なポリープがmucosal bridgeを形成しているのが認められた。症例1は,切除標本の組織学的所見より,浅い潰瘍の瘢痕や粘膜下層とリンパ節における肉芽腫が認められ,腸結核が疑われた.症例2は,細菌性赤痢によるものと考えられ,経過観察中である.mucosal bridgeの発生過程について諸説があるが,今回我々は,炎症性ポリープの癒合によるものであろうと考えた.
  • 市川 敏郎, 宇都宮 譲二, 岩間 毅夫, 八重樫 寛治, 永井 健一, 斉藤 克浩, 鈴木 均, 前田 学, 松原 修, 神山 隆一
    1982 年 35 巻 1 号 p. 35-41
    発行日: 1982年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    私共は,ポリポージスを伴わない家族性大腸癌の特長として(1)家族性,(2)近位性,(3)多発性,(4)若年性を保因者同定の臨床的指標と考えている.その方法により稀有な大腸原発のびまん性浸潤癌の1例を発見した.患者は31歳の男子,母は43歳の時直腸癌にてMiles手術を受け,52歳の時S状結腸癌にてS状結腸切除術を受けた.母の弟は55歳の時結腸癌および前立腺癌の手術を受けた.父方の祖父は55歳胃癌で死亡した.患者の母は家族性大腸癌と考え,本症例を含むその子3名に検査を施行した.他の同胞2名は大腸に異常なかったが,本症例では,肛門輪より10cm口側よりS状結腸にかけて約16cmの辺縁不整な狭窄像を認めた.直腸S状結腸癌と考え,1979年12月直腸S状結腸切除術を施行した.固定標本上で病変は11.0×8.5cmであり,びまん性浸潤癌であった.組織型は,高分化腺癌で,主として粘膜下層への浸潤がみられ,漿膜下層,筋層には広範な線維増生がみられた.
  • 特に組織免疫学的検索にふれて
    宇佐見 詞津夫, 保利 恵一, 荻野 憲二, 谷本 典隆, 神谷 厚, 大久保 憲, 小谷 彦蔵, 若菜 久男, 由良 二郎, 竹内 一正
    1982 年 35 巻 1 号 p. 42-48
    発行日: 1982年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    我々の施設で最近大腸に発生した腺扁平上皮癌を2例経験した.1例はS状結腸に生じたもので,異常に発達したリンパ節転移のため姑息的釦除に終つた.他の1例は上行結腸に生じたもので,リンパ郭清を含めて右半結腸切除術を施行した.切除標本の検索では1例は周辺部は腺癌であるが,その中心部に扁平上皮癌を認め,その表層部に中間的組織像が存在していた.他の1例は周辺部は扁平上皮癌でその中心は腺癌で,その移行部には中間的組織像を同様に認めた.これらの組織像から我々の2症例は,腺癌の扁平上皮化生が直接生じたものと考えられる.予後の面では2例とも良好な経過をたどっている.特に第1例は主病巣のみの切除に終った進行癌であったが,1年近くになるも全身状態は良好である.免疫組織学的には,他の癌腫と比較して局所の免疫グロブリンの産生能は保たれているようであり,このことと予後と関連があるのではなかろうかと考えている.
  • 1982 年 35 巻 1 号 p. 49-97
    発行日: 1982年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
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