症例は72歳,女性.主訴は左側腹部痛,左側腹部腫瘤であり,左側腹部に可動性のない鶏卵大の庄痛をともなう弾性硬の腫瘤を触知した.腹部CT検査,および腹部超音波検査にて魚骨による横行結腸穿通による腹腔内膿瘍と診断した.腹痛が左側腹部に限局していたこと,vital signが安定していたこと,および既往歴が何も存在せず心,肺,肝,腎,などの機能が問題ないと考え,保存的治療(絶食,抗生剤投与)を行った.炎症所見の改善した第13病日より食事を開始し特に問題なく,第30病日に退院となった.退院後4カ月経過した現在,腹部症状を認めず,問題なく経過している.
魚骨による消化管穿孔,穿通例の報告は本邦でも多数報告されているが,本例のように外科的な処置,または内視鏡による魚骨の除去を行わずに,保存的治療にて改善した報告例はなく,稀な1例である.
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