甲状腺乳頭癌を合併した家族性大腸腺腫症の1例を経験したので,臨床所見と遺伝子検索結果について,文献的考察を加えて報告する.症例は32歳,女性.28歳時に家族性大腸腺腫症と診断され,前医で定期的な経過観察を受けていた.S状結腸の有茎性ポリープに癌化が認められたため,当科を紹介された.大腸切除前のスクリーニング検査として行った頸部の超音波およびCTで甲状腺左葉に径8mm大の腫瘤性病変を認めた.細胞診の結果,乳頭癌と診断された.大腸全摘術の2カ月後に甲状腺亜全摘術が施行された.組織学的にはcribriform-morula variant of papillary thyroid carcinomaであった.末梢血と甲状腺組織からDNAおよびRNAを抽出し,
APC 遺伝子変異を検索したところ,生殖細胞系列としてcodon 1179 TATAGTTTA→TAの7bp deletion,甲状腺癌の体細胞性変異としてcodon 607のTGT→GTのT deletionが検出され,
APC 遺伝子変異のtwo-hitにより発生した甲状腺癌と考えられた.
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