1959年, BELISARIO1) によって表在性皮膚癌または表皮内癌に対する局所的化学療法が開始され, 1965年, KLEINら2) によって5%5-フルオロユラシル (以下5-FUと略す) 軟膏の閉鎖密封法が開発されて, 皮膚癌に対する治療上の新分野がひらかれた。
私共3, 4, 5) も1969年以来, 5%5-FU軟膏を用いて皮膚の扁平上皮癌, 基底細胞癌, BOWEN病, 外陰部PAGET病などに対する効果を知り, 本治療法によって腫瘍組織が選択的に破壊, 脱落し, 治療の終了とともに周辺部の健康表皮から表皮再生がおこって疲痕治癒させうることを経験した。
本治療法の利点は, 治療法が簡単で, 誰でもおこなうことができ, 通院治療が可能であり, また, 薬剤の吸収による全身性副作用がほとんどみられず, 患者に与える苦痛を最少限に抑えることができる点であり, また, 臨床的には明らかでない程度の小腫瘍も発見, 早期治療させうる点である。しかし, 一方で, より深い腫瘍に対しては効果の判断が困難で, 治療の中断によって再発を来たすことがあり, また腫瘍の組織学的特性と治療効果の関係が明らかでない点などの問題点も多い。そのほか, 5-FU軟膏以外の化学療法剤の効果は, まだ明らかにされておらず, 局所的化学療法と他の治療法との併用療法に関する成績も未検討である。
1965年, 梅沢ら6) によって発見されたブレオマイシン (日本化薬, 以下BLMと略す) は, 全身投与すると, 皮膚の原発性扁平上皮癌に特異的に有効で, 急速な腫瘍の変性と縮小とがみとめられるり。しかも, 臨床効果と薬剤の組織内濃度および不活性化の程度とは, 相関関係にあることが知られている8)。
このように, 皮膚, とくに表皮の悪性腫瘍である扁平上皮癌に特異的に抑制効果の強いBLMを表題の局所的化学療法に応用して, 皮膚癌および表皮内癌に対する臨床効果を知り, 治療面に応用する可能性を見出すのが本研究の目的である。
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