抗生剤の消費状況を知ることが耐性菌の現状を理解し, その将来の予測からさらに対策にまで結びつくことはいうまでもない。
その抗生剤の使用の実態を知るには, 年間抗生物質検定量で日本の逐年の傾向を知ることができるので, この方面からの調査をおこなって来た1, 2)。その他の方法として, 病院薬剤部における受払, 病院における処方箋・患者病歴に記入された処方の記録からのぬきとり調査である程度の傾向を推定した研究はあるが, 抗生剤消費の正確な数値を把握し, 願各年度における比較, 各診療科における差を大学病院レベルで観察した成績はない。
高価な抗生物質がどのように使用されているかの実態を知ることは, 病院・薬剤部の業務上の参考となるばかりでなく, その病院内における耐性菌の発生と防止にも有力な参考となるものであるが, これがおこなわれていないことは, その作業がはなはだ困難であることによる。
私達はこの度, 昭和49, 50, 51年の3年間, 帝京大学病院において発行された院内処方箋をすべて調査し, その中から抗生物質使用件数を集計し, その抗生剤の種類, 使用頻度と使用量, 経口, 注射剤の区分, 入院・外来患者別, また診療科別の特徴の有無を観察した。なお, 小児科については, さらに昭和53年度までの分析調査をおこなつているが, これは改めて報告する。
なお, 本病院では抗生剤の使用についての特別な管理はおこなわれておらず, 各科各医師の自由こまかされている。なお, 小児科には感染症専門家がおり, ある程度, 抗生剤使用について管理がおこなわれている。
研究方法: 当該年度の院内処方箋で抗生剤の処方がおこなわれているものの件数を調査した。経口剤では, 外来患者が主となる。また, 急性感染症, 慢性感染症では, 処方箋の処方日数が異なり, 小児・成人では処方量に大差があるので, 抗生剤別に使用量を総計して同時に示した。両者を併せて, 使用の傾向が明らかにされよう。
注射剤では, 処方箋によつて払出して, 病室または外来において使用された注射剤のバイアルまたはアンプル数で示した。また, その容量に差があるので, 各抗生物質としての全重量を計算し併記した。なお, 局所用抗生剤は除外した。
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