百日咳は, 昭和25年に12万人をこえる発生をみ, その後, 予防接種の普及によつて毎年減少の傾向を辿り, 昭和49年には393人となつたが, ここ4, 5年来多発するようになり, 昭和52年5,420人, 昭和53年9,626人と増加し, 今年度はさらに増加の傾向がみられ, 新生児, 乳児症例に遭遇することも多くなつているのが本邦の現況であろう1)。
従来, 百日咳の治療としては, 感性抗生剤であるMacrolide (ML) およびTetracycline (TC) 系製剤の内服が使用され, その有効性がみとめられているが, ただ, 難点とするところは, 新生児, 乳児の継続内服は必ずしも容易ではなく, この年令層では, 至適抗生剤の注射による治療法の出現が希望されていた。また, 年少小児の百日咳に合併しやすい肺炎では, 予後を悪化させ, しかも百日咳菌と他種菌との混合感染が原因となることが多く, この治療には, 百日咳菌ばかりでなく, 広く諸菌が感性な抗生剤の利用が必要とされている。
新らしく本邦で製剤されたCephalosporin (CEP) 系製剤Cefbperazone (CPZ)(Fig.1) は, 松本等の報告によると, 百日咳菌に対するMICは0.006-0.013mcglmlに分布し, 従来の感性抗生剤であるMLs, TCsに比較して遙かに優れていることが明らかにされており2), 一方, 本剤には各種球, 桿菌も感性で, また, 静注によって呼吸器系に高度に移行することが証明されているので3), 今回, 年少小児の百日咳に対して本剤の静注を主体として治療をおこなつてみた。以下, 今日までの概況について報告する。
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