近年, 肺感染症の病像は抗生物質の開発と普及, 及び制癌剤, 免疫抑制剤等の多用, 人口の老齢化等による宿主側の変化により大きく変貌してきている。それに伴い, 肺感染症の原因菌も, グラム陽性菌が大きな位置を占めていたのが, インフルエンザ菌, クレブシェラ菌, 緑膿菌などのグラム陰性桿菌の増加により, グラム腸性菌の比重は少なくなつてきた。従つて, 最近の肺感染症で起炎菌不明の場合は, ブドウ球菌, 肺炎球菌などと共に, インフルェンザ菌, クレブシェラ菌などに抗菌スペクトラムを持つ抗生物質を選択することが必要になつてくる。
その点で, ブドウ球菌, 肺炎球菌, インフルエンザ菌に対して強い殺菌作用を持つ, Ampicillin (ABPC)(又は, Amoxicillin (AMPC)) が第1の選択剤とされてきたのは当然である。しかし, 近年, ABPC耐性インフルエンザ菌が報告され, 増加の傾向にあることは, 薬剤選択をむずかしくしている。
今回, 我々は米国Eli Lilly社が開発した新しい経口セフェム系抗生物質Cefaclor (CCL) について, 急性肺炎を対象として臨床効果及び安全性を検討したので報告する。
抄録全体を表示