新しく開発されたMacrolide系抗生物質(MLs)のRokitamycin (RKM) ドライシロップを6ヵ月から15歳10カ月の小児の皮膚・軟部組織感染症中, 膿痂疹41例, ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群 (SSSS) 1例, 皮下膿瘍2例, 計44例に1日平均投与量31.3mg/kg, 分3か分4で, 平均6日間投与し, これらの症例から分離した
Staphylococcus aureus30株と
Streptococcus pyogenes2株, 計32株の接種菌量106cells/mlに対しMLsのRKM, Ery-thromycin (EM), Josamycin (JM), Midecamycin acetate4剤, そのうち
S. aureus20株と
S. Pyogenes1株, 計21株に対しては同じ接種菌量でβ-Lactam系抗生物質中Penicillin系抗生物質のAmpicillin (ABPC), Methicillin (DMPPC), Cloxacillin (MCIPC) 3剤, Cephem系抗生物質のCefaclor (CCL) 1剤, 計4剤についてMICを測定すると共に臨床効果, 細菌学的効果及び副作用と臨床検査値への影響を検討したところ, 次のような結果を得た。
1. 薬剤感受性試験では
S. aureusに対するRKMのMIC90は0.39μg/mlで, MIC25μg/ml以上の耐性株はなく, 8薬剤中最も抗菌力が優れ, 次いでMCIPC, DMPPCの順であつた。
S. pyogenesではわずか2株, 薬剤によっては1株の感受性測定であつたが, RKMはABPC, EMに次ぐ抗菌力を示し, JM, CCLと同程度であつた。
2. 44例に対する主治医判定の臨床効果は膿痂疹の有効率97.6%, SSSS1例と皮下膿瘍2例はいずれも有効以上で, 全疾患での有効率は97.7%と優れた成績が得られた。
3. Scoreによる臨床効果判定では投与3日後3疾患中37例に判定でき有効率89.2%, 投与5, 7日後は各々24,21例に判定できいずれも有効以上を示し, 90%以上の有効率を得るには1日投与量は20~40mg/kg, 分3か分4で5日間以上の投与が必要と思われた。
4. 細菌学的効果は2菌種の混合感染1例を個々にし,
S. aureus36例中24例で判定でき消失率は79.2%,
S. Pyogenesの2例はいずれも消失し, 全体では80.8%の消失率であつた。
しかし, 起炎菌として
S. aureusが分離されたが本剤投与により皮膚の病的所見が早期に消退し, 検体の採取ができなかつた12例を菌消失とみなすと38例中33例で消失になり, 消失率は86.8%と良好であった。
5. 全例に副作用の出現はみられず, 服用を嫌う症例もなかつた。臨床検査値への影響では本剤投与前後で各項目共に検査された症例は少なかつたが, 異常値を示した症例はなかつた。
以上の成績から本剤は小児における軽症から中等症の中でも比較的軽症の皮膚・軟部組織感染症に対して1日投与量20~40mg/kgを分3か分4で, 5日間投与することによつて良好な臨床効果が期待できると考えられる。
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