新しく開発されたCephem系の注射用抗生物質であるCefbdizime (CDZM) を23歳から28歳, 平均24歳, 体重54-73kg, 平均64kgの健康男性8例を各々4例ずつに1,000mg及び2,000mgを1日2回, いずれもワンショット静注で5日間投与し, 糞便内細菌叢に対する影響と糞便中濃度を測定, 同じ糞便から分離した種々の細菌に対するCDZM, Cefmetazole, Cafotadme (CTX), Cefbperazoneの薬剤感受性を測定すると共に副作用と種々の臨床検査値への影響を検査したところ, 次のような結果を得た。
1.1,000mg1日2回投与群の糞便内細菌叢では投与開始3日後におけるEnterobacteriaceaeの検出例は2例減少し, 個々の菌種についてみた場合でも, 減少か検出限界以下 (10
2cells/g以下) のもめが多く, 投与開始5日後すなわち投与終了後のEnterobacteriaceaeも同様の傾向を示し, その後菌数は増加し, 投与終了10日後のEnterobacteriaceaeの平均菌数は投与開始日の平均菌数と同台にまで回復したが, 個々の菌種でみた場合には投与開始前の菌数に回復しないものもあつた。その他のグラム陰性桿菌では1例で
Pseudomonas sp. が投与開始3日後一過性に菌数が増加したが, その後は減少傾向にあつた。グラム陽性菌では一定の変化は示さなかつた。Yeasthkeorgallism (YLO) は投与3日後から投与終了3日後まで平均菌数の増加がみられたが, 投与終了10日後には減少した。嫌気性菌中
Bacteroides fragilis group と総嫌気性菌数は特徴的な変化はなかつた。
Clostridium difficile は2例から分離され1例は投与開始日, 投与開始3日後, 投与終了3-20日後1.1×10
3-2.0×10
6cells/g域を示し, 他の1例は投与終了20日後に1.8×10
5cells/g検出された。D-1toxinは投与開始前1例, 投与開始3日以後3例から250ng/gか500ng/g検出された。
2,000mg1日2回投与群の4例ではEnterobacteriaceaeは投与開始3日後, 投与開始5日後 (投与終了日), 投与終了3日後は減少か検出限界以下例が多く, 個々の菌種についても同様で, 1,000mg1日2回投与群より影響は大で, その後菌数は漸次増加し, 投与終了20日後のEnterobacteriaceaeの平均菌数は投与開始日の平均菌数と類似の菌数にまで回復したが, 個々の菌種でみた場合には投与開始前の菌数に回復しないものもあつた。その他のグラム陰性桿菌, グラム陽性菌では特徴的な変化はなかつた。YLOは投与開始3日後, 投与開始5日後 (投与終了日), 投与終了5日後で菌数の増加がみられ, その後漸次投与開始前の菌数にまで回復した。嫌気性菌中
B. fragilis group は投与開始3日後にやや減少傾向を示した例があり, 総嫌気性菌数では特徴的な変化はなかつた。
C.difficileは2例から検出され, 1例は投与開始前3日, 投与開始日, 投与開始3日後にそれぞれ1.3×10
5, 1.0×10
4, 30×10
4cells/g分離され, 他の1例は投与終了5, 10, 20日後にそれぞれ1.3×10
6, 4.0×10
6, 1.0×10
7cells/g検出された。D-1toxinは投与開始前1例, 投与開始以後2例から250-1,000ng/g検出された。
2.Bioassay法による糞便中濃度は1,000mg1日2回投与群中3例で投与開始3日後, 投与開始5日後 (投与終了日) で測定でき1.5-2,025μg/g域, 2,000mg1日2回投与群では4例で投与開始3日後, 投与開始5日後 (投与終了日), 投与終了3, 5日後のいずれかで判定でき, 0.8-4,195μg/g域を示し, 高速液体クロマトグラフィー (HPLC) 法による濃度と著しい違いはなかつた。
3.本剤投与例の糞便から検出された種々の細菌の接種菌量10
8, 10
6cells/mlに対するCDZMのMICはグラム陽性球菌, グラム陰性桿菌共に菌種にもよるがCTXのMICと著しく差があるとは言えなかつた。
4.副作用は1,000mg投与群に腹痛・下痢1例, 2,000mg投与群に下痢1例を認めたが各々投与終了翌日, 4日後に治療せずに消失し, 重篤なものではなかつた。臨床検査値の異常値はすべてのCaseに認められなかつた。
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