1990年1月~12月に全国の医療施設から送付されてきた, 臨床分離株及び各種感染症患者採取材料から分離・同定したMethicillin-resistant
Staphylococcus aureus (MRSA) 多数株の生物学的検討を行い, 以下の結果を得た。
1.供試1,047株の内訳は動脈血・静脈血由来6.9%, 気道系由来43.3%, 外科・皮膚科領域由来30.2%, 耳鼻咽喉科・眼科領域由来3.8%, 泌尿器科領域由来7.2%, 糞便由来5.1%, その他3.6%であり気道系由来株が高い割合だった。
2.コアグラーゼ型はII型76.4%, III型2.1%, 1V型15.4%, VII型5.3%, その他0.8%でありII型が高い割合に認められた。
由来別では気道系由来株はII型の割合が有意に高く, 外科・皮膚科領域, 耳鼻咽喉科・眼科領域由来株にはIV型の占める割合が高い傾向が認められた。
一方, コアグラーゼ型の分布は施設別には偏重する傾向だったが, 地域別には大きな差異が認められなかった。
3.エンテロトキシン型はA型22.8%, B型10.5%, C型54.9%, その他11.7%でC型の割合が高く, C型はコアグラーゼII型, 更にA型はコアグラーゼIV型との有意な相関が認められた。
4.Methicillinの最小発育阻止濃度値 (MIC) 値) ≥100μg/mlを高度のMRSA, 同じく≤50μg/mlを中程度のMRSAとすると, コアグラーゼII型株は高度のMRSAが94.8%であるが, コアグラーゼIV型株は中程度のMRSAが78.9%であり, 高度のMRSAはコアグラーゼII型に有意に偏重していた。
5.これら多数のMRSAに対するVancomycin (VCM) のMIC50は0.78 μg/ml, 更にMIC
90は1.56 μg/mlであり, VCMは近年において我が国で分離されるMRSAに対しても強い抗菌活性を発揮し得ることが示唆された。
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