新しく開発された経口ペネム剤SY5555のドライシロップおよび錠剤について小児科領域における体内動態及び臨床的検討を実施し, 以下の成績を得た。
1. 吸収排泄試験成績小児64例にSY5555ドライシロップ, 1回3mg/kg (以下投与量はすべて力価表示) 食後, 5mg/kg及び10mg/kg空腹時あるいは食後投与時, 1回15mg/kg食後投与時の体内動態を検討した。
SY55553mg/kgを食後投与時のCmaxは033μg/ml, T1/2は0.95時間, 5mg/kgを空腹時あるいは食後投与時のCmaxはそれぞれ2.09±1.25μg/ml, 1.21±0.70μg/ml, T1/2は1.20±1.07時間, 1.33±0.90時間, 10mg/kgを空腹時あるいは食後投与時のCmaxはそれぞれ2.96±1.89μg/ml, 2.45±1.37μg/ml, T1/2は0.89±0.43時間, 1.17±0.53時間, 15mg/kgを食後投与時のCmaxは4.30±2.15μg/ml, T1/2は0.82±0.09時間であつた。3mg/kg, 5mg/kg, 10mg/kgおよび15mg/kg投与間にはほぼ用量相関が認められた。0~6時間の尿中排泄率は, 3mg/kg食後投与で1.71%, 5mg/kg空腹時投与で4.13±1.40%, 食後投与で4.17±3.29%, 10mg/kg空腹時投与では6.02%, 食後投与では4.64±2.81%, 15mg/kg食後投与では7.97%であった。
2. 臨床試験成績
総症例数627例 (ドライシロップ投与例614例, 錠剤投与例13例) から除外・脱落の113例 (ドライシロップ投与例108例, 錠剤投与例5例) を除いた514例 (ドライシロップ投与例506例, 錠剤投与例8例) を有効性解析対象例とした。
まず, 以下ドライシロップ投与例について述べる。
1回投与量は5~10mg/kgを中心に, 主として1日3回経口投与され, 1日投与量は15mg/kgを中心とする12mg/kg以上18mg/kg未満が全症例の46.6%を占め最も多かった。
臨床効果は起炎菌判明例301例において93.0%の高い有効率が得られた。起炎菌不明例205例の有効率は92.7%であり, 両群を合計すると, ドライシロップ投与例506例の有効率は92.9%であった。1日投与量別では12mg/kg以上18mg/kg未満投与の有効率は945%で, 18mg/kg以1.27mg/kg未満投与の91.7%, 27mg/kg以上33mg/kg未満投与の91.3%と比較して遜色なかった。
細菌学的効果は82.3%の菌消失率であつた。
3日以上続けた先行化学療法が無効であつた62例のうち本剤投与により有効以上と判定された症例は56例, 有効率90.3%であり, 菌消失率は72.4%であつた。
副作用は安全性解析対象例566例中36例 (6.4%) に認められたが, その大部分は一過性の下痢または軟便 (32例5.7%) であり, 重篤なものはなかった。
臨床検査値の異常変動としては好酸球増多, GOT上昇, GPT上昇などがみられたが, 従来のセフェム剤と同程度の出現率であり, 重篤なものはなかった。
服用性については, 「のめない」は1例もなく, 「のみにくい」は0.7%のみであり, 「非常にのみやすい」または「のみやすい」と評価された割合が58.3%と高く, 本ドライシロップは小児用経口抗生剤としては服用しやすい薬剤に属すると考えられる。
錠剤は1日15.8mg/kg~24.5mg/kg分3または分2投与し, 8例中7例が有効以上, そのうち起炎菌が判明した3例についてはいずれも著効かつ起炎菌も除菌されており, ドライシロップと同様の高い効果が得られた。副作用および臨床検査値異常変動は全く認められなかった。
以上の成績から, 本剤は1日標準量として1回5mg/kg, 1日3回, 3~14日間投与, 症状により用量を適宜増減 (但し成人1日最大量1,200mgを越えない) し, 中等症までの小児市中感染症に対して有用な薬剤であると考えられる。
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