The Japanese Journal of Antibiotics
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52 巻, 5 号
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  • 池本 秀雄, 渡辺 一功, 森 健, 猪狩 淳, 小栗 豊子, 寺井 継男, 井上 洋西, 中舘 俊英, 伊藤 忠一, 吉田 武志, 大野 ...
    1999 年 52 巻 5 号 p. 353-397
    発行日: 1999/05/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1997年10月~1998年9月の問に全国17施設において, 下気道感染症患者440例から採取された検体を対象とし, 分離菌の各種抗菌薬に対する感受性及び患者背景などを検討した。これらの検体 (主として喀痰) から分離され, 起炎菌と推定された細菌512株のうち503株について感受性を測定した。分離菌の内訳はStaphylococcus aureus 100株, Streptococcus pneumoniae81株, Haemophilus influenzae85株, Pseudomonas aeruginosa (non-mucoid株) 71株, Pseudomonas aeruginosa (mucoid株) 27株, Moraxella subgenus Branhamnella catarrhalis33株, Klebsiella pneumoniae17株などであった。S. aureus 100株のうちOxacillinのMICが4μg/ml以上の株 (Methicillin-resistant S. aureus: MRSA) は55.0%検出され, 1996年の67.3%に比べ10%以上減少した。ArbekacinとVancomycinはMRSAに対して強い抗菌力を示し, 本年度もABK耐性株やVCM低感受性株は検出されなかった。S. pneumoniaeに対する抗菌力はカルバペネム系薬剤が強くPanipenem, ImipenemのMIC80は0.063μg/mlであった。またペニシリンに低感受性を示す株 (Penicillin-intermediate S. pneumoniae: PISP+Penicillin-resistant S. pneumoniae: PRSP) の分離頻度は1995年の40.3%から緩やかに減少し本年度は30.9%であった。H. influenzaeM.(B.) catarrhalisの各薬剤に対する感受性はいずれも良好であったが, 1995・1996年に比べ両菌種ともCeftazidimeに対して感受性の低下が認められた。P. aeruginosaは多くの薬剤に耐性化を示す傾向にあるが, ムコイド産性株にはMeropenem, Imipenem, Tobramycinの抗菌力が強く, ムコイド非産性株にはTobramycinとCiprofloxacinの抗菌力が比較的強かった。K. pneumoniaeはAmpicillinを除く薬剤に対して良好な感受性を示し1996年の成績と比較しても良かった。
    患者背景については, 年齢別の分布で70歳以上の高齢者が年々増加しており, 本年度は45.5%を占めた。疾患別の頻度ではあまり変化はなく, 細菌性肺炎が33.6%, 慢性気管支炎が29.1%と多かった。これら感染症からの抗菌薬投与前後における分離菌株数は, 慢性気管支炎では抗菌薬投与後に比べ未投与の症例からの分離株数が多いが, 細菌性肺炎では1995年以降で投与後での分離株数が投与前より多くなっており, 薬剤投与後におけるS. aureusP. aeruginosaの分離頻度の増加は, これらの菌の薬剤感受性低下傾向を示唆すると思われる。抗菌薬の投与の有無投与日数ごとの分離菌及び投与薬剤種類別の分離菌についてみると, 投与前に多く分離された菌はS. pneumoniae24.5%, H. influenzae21.4%, S. aureus 18.4%, P. aeruginosa 12.2%などであった。S. aureusは投与15日以上で減少したが, P. aeruginosaは薬剤投与により減少することはなく15日以上では47.8%分離された。投与された薬剤の種類ではペニシリン系及びセフェム系薬剤の投与症例からの分離菌は S. aureusが最も多く31.7~58.3%を占めた。またマクロライド系薬剤投与例ではP. aeruginosaの分離頻度が高く50%近くを占めた。
  • 真下 啓二, 品川 長夫, 平出 公一, 傳野 隆一, 向谷 充宏, 石引 久彌, 牛島 康栄, 相川 直樹, 山崎 元靖, 岩井 重富, ...
    1999 年 52 巻 5 号 p. 398-430
    発行日: 1999/05/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1982年7月から外科感染症分離菌とその薬剤感受性に関する多施設共同研究を行ってきているが, ここでは1996年度 (1996年7月~1997年6月) の結果を中心にまとめた。1年間で調査対象となった症例は217例であり, このうち177例 (81.6%) から406株の細菌が分離された。一次感染症から162株, 術後感染症からは244株が分離され, 一次感染症では術後感染症に比べ嫌気性菌の分離率が高く, 術後感染症では好気性グラム陽性菌の比率が高かった。全体では好気性グラム陽性菌はEnterococcus spp.の分離頻度が最も高く, このうち術後感染症ではEnterccoccus faecalisが多くを占めたが, 一次感染症ではEnteroccccus aviumが多かった。Enteroccccus spp.に次ぐのはStaphylococcus spp.であり, とくに術後感染症からの分離頻度が高かった。嫌気性グラム陽性菌では, 一次感染症, 術後感染症ともにPeptostreptccoccus spp.Streptcccccus spp.が多く分離された。好気性グラム陰性菌については, 一次感染症ではEscherichia ccliが最も多く, 次いでKlebsiellapneumoniae, Pseudomonas aeruginosaの順であった。これに対し, 術後感染症ではP. aeruginosaの分離頻度が最も高く, 次いでE. coli, Entercbacter cloacaeなどであった。嫌気性グラム陰性菌では, 一次感染症, 術後感染症ともにBactercides flagilis groupの占める比率が高かった。年次的には一次および術後感染症ともに好気性グラム陰性菌の比率が減少し, 代わってB. flagilis groupを主とする嫌気性菌の増加と好気性グラム陽性菌の漸増傾向が認められた。薬剤感受性では, Staphylococcus aureusにはVancomycinに対する耐性株は認めなかったが, Arbekacinに対しては1株が100μg/mlのMICを示した。Enterccoccus spp.にはVancomycin耐性株はみられなかった。P. aeruginosaに対するMeropenemとImipenem/cilastatinのMIC90はともに25μg/mlであり, 1995年度の分離株に比べカルバペネム薬に対する耐性の進行が認められた。
  • 松崎 薫, 西山 貴子, 長谷川 美幸, 小林 寅哲, 金子 明寛, 佐々木 次郎
    1999 年 52 巻 5 号 p. 431-438
    発行日: 1999/05/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1998年に全国の医療施設において分離された臨床分離3taphylococcus aureus, Streptococcuspneumoniae, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Haemophilus influenzae, Peptostreptococcus species6菌種各15株に対するfaropenem (FRPM) のMICならびにMBCを測定し, 各種経口β-lactam薬と比較した。その結果, FRPMは好気性および嫌気性グラム陽性球菌に対し, 比較対照薬に比べ極めて強い抗菌活性を有していた。またグラム陰性菌に対しては新しい世代のセフェム系抗菌薬とほぼ同等の抗菌力を有していたが, K.pneumoniaeに対しては若干劣っていた。H.influenzaeに対してはcefdinirとほぼ同等であった。またFRPMのS.pneumoniaeに対するMBCはMICと同じ値を示し, 他の試験菌に対してもその差はほぼ一管以内であった。
    以上のことから経口ペネム系抗菌薬のFRPMは強い殺菌力を有しており, 臨床において有用であることが示唆された
  • 石郷 潮美, 入山 純司, 浅野 裕子, 水口 一衛
    1999 年 52 巻 5 号 p. 439-447
    発行日: 1999/05/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新セフェム系抗菌薬であるcefozopran (CZOP) の臨床分離株に対する薬剤感受性を調査し, 細菌学および臨床的 (肺炎) ブレイクポイントからみた有用性について評価し, 以下の結果を得た。
    1.細菌学的ブレイクポイントからみたCZOPの評価では, メチシリン耐性Staphylococcusaureus (MRSA) やEnterococcus spp.に対しては感性率が低かった。しかし, 市中感染の起因菌として分離頻度が高いメチシリン感性Staphylococcus aureus (MSSA), EscherichiacoliおよびKlebsiella spp.には感性率が100%, さらにEnterobacter spp., Serratia sp., およびCitrobacter sp.に対しても90%以上の感性率を有していた。また, Pseudomonas aeruginosaにも感性率80%以上を示し, CAZと同等かそれ以上であった。このことからCZOPの抗菌スペクトルの拡大と抗菌力の増強が示唆された。
    2.臨床的 (肺炎) ブレイクポイントからみたCZOPの推定有効率は, 外来症例では87.5%, 入院症例では51.9%であり, 特に外来でのempiric therapyでのfirst choiceとして十分可能な選択薬剤のひとつとして考えられた。
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