1998年1月から12月にかけて全国の医療機関より送付された各種領域臨床材料から分離した新鮮多数株を用いてlevofloxacin (LVFX) と同系統の抗菌薬ならびに各種β-lactam薬との抗菌力を比較検討した。
その結果, グラム陽性球菌において
Staphylococcus aureusのうちmethiciliin resistant
Staphylococcusaums (MRSA) の多くおよびcoagulase negative
Staphylococcus (CNS) の一部にはキノロン系抗菌薬に対する耐性株が存在したが, LVFXのMRSAに対するMIC
50は6.25μg/mlと試験に供した薬剤では最も低かった。また,
Staphylococcus epidermidisには今回用いたキノロン系抗菌薬に対し耐性株は少なかった。各種
Streptococcusに対しても同様で, LVFXのMICは全て1.56μg/ml以下と優れた抗菌力を示した。特にpenicillin resistant
Streptococcus pneumoniae (PRSP) を含む
Streptococcus pneumoniaeに対してもLVFXのMICは1.56μg/ml以下であった。
Enterococcusにおいては
Enterococcus faecalisに対しampicillin (ABPC) の抗菌力が最も強かったが,
Entmcoccus species。こはABPC耐性株が多く存在した。これらの耐性株を含む各Entmcoccusに対してもLVFXは優れた抗菌力を示した。
一方, グラム陰性菌において各種腸内細菌に対し今回用いたキノロン系抗菌薬3薬剤は優れた抗菌力を示した。
Citrobacter,
Serratiamarcescens, Proteusの一部にキノロン系抗菌薬に対し耐性を示す株が存在したが, その頻度はいずれも低く, 10%以下であった。ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌においても同様で
Pseudomonas aeruginosaに対しLVFXはciprofloxacin (CPFX) に次いで低いMIC値を示した。またAcinetobacterに対してはLVFXはCPFXに比べより強い抗菌力を示した。
その他のグラム陰性菌において,
Haemophilus influenzae, Branhamella (Movaxella) catarrhalis, および
Vibrio cholerae各菌種に対し, キノロン系抗菌薬は優れた抗菌活性を有し, それらの菌に対するMIC
90はLVFX, CPFXともに0.10μg/ml以下であった。
Neisseriagonorrhoeae, Campylobacterの一部の株はキノロン系抗菌薬に対し中等度耐性株が存在したが, MIC
50では, LVFXはCPFX同様に0.39μg/ml以下であった。
嫌気性菌2菌種において
Peptostreptococcusの一部にキノロン系抗菌薬に抵抗性を示す株が存在したが,
Prqpionibacteriumacnesでは他のβ-lactam系抗菌薬同様, キノロン系抗菌薬のMIC
90は全て0.78μg/ml以下であった。
以上の結果からLVFXは近年分離された感染症起炎菌に対して幅広い抗菌スペクトラムを有し臨床において有用な抗菌薬であることが示唆された。
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