1999年8月から翌年7月までの間に全国9施設において尿路感染症と診断された412症例から分離された544菌株を供試し, それらの患者背景について性別・年齢別と感染症, 感染症と菌種, 年齢別感染症別菌分離頻度, 抗菌薬投与時期別の菌と感染症, 感染防御能低下に影響を及ぼす因子・手術 (以下因子・手術) の有無別の菌と感染症などにつき検討した。
年齢と性および感染症の関連についてみると, 男性の症例は50歳未満が少なく, 感染症ではカテーテル非留置複雑性尿路感染症が最も多かった。女性では20歳未満の症例が少なく, 感染症別には, 40~59歳でカテテル非留置複雑性尿路感染症が最も多く, その他の年齢層では単純性尿路感染症が最も多かった。感染症と菌種については
Escherichia coliは感染症が複雑になるに従い減少し,
Pseudomonas aeruginosaと
Enterococcus faecalisは感染症が複雑になるに従い増加した。これらを年齢別にみると, 単純性およびカテテル非留置複雑性尿路感染症では20歳以上の症例で
E. coliの分離頻度が加齢に伴い緩やかに減少した。また, カテテル非留置複雑性尿路感染症では
E. faaecalisとStaphylococcus aureusが加齢に伴い増加する傾向にあった。カテテル留置複雑性尿路感染症では年齢による違いは認められず,
P. aeruginosaと
E. faeccalisが多く分離された。抗菌薬投与前後の分離菌は, 単純性尿路感染症およびカテテル非留置複雑性尿路感染症では, 投与後に分離株数が著しく減少した。いずれの感染症でも
E. coliは投与後に減少し,
P. aeruginosa, E. faeccalisは投与後に増加した。因子・手術の有無別, 感染症別に分離菌をみると, 単純性尿路感染症では
E. coliは因子・手術の無で多く分離され,
Klebsiella spp. と
E. faecalisは因子・手術の有で多く分離されたが, 複雑性尿路感染症では因子・手術の有無による分離菌分布に大きな違いはなかった。
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