2002年から2003年にかけて関西医科大学附属病院にて臨床材料より分離された
Streptococcus pneumoniae, Haemophilus influenzae, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Staphylococcus aureus, Streptococcus agalactiae, Streptococcus pyogenesおよびExtended spectrumβ-lactamase (ESBL) 産生菌について, 現在上市されている経口セフェム系薬cefaclor (CCL), cefroxadine (CXD), cefdinir (CFDN), cefixime (CFIX), cefpodoxime (CPDX), cefteram (CFTM), cefcapene (CFPN), cefditoren (CDTR) の抗菌力を比較した。また, Pharmacokinetics/Pharmacodynamics (PK/PD) 理論を用い, Time above MIC (以下TAM) が40%以上を示す各薬剤の濃度を決定し, 各菌種に対する有効率を求めた。
S.pneumoniaeではCDTRがMIC
50, 80, 90全てで他の薬剤よりも低値であり最も優れた抗菌力を示し, それぞれ0.25μg/ml, 0.5μg/ml, 0.5μg/mlであった。 しかし, CDTRの有効率は58.5%であり, CFTMが最も高く66.1%であった。
H.influenzaeでは, 抗菌力はCDTR>CFTM>CFPN=CFIXの順であった。 MIC
90はCDTRで0.25μg/ml, 次いでCFTMで0.5μg/mlであった。 有効率もCDTRは100%を示した。
H.influenzaeに対してCDTRの除菌率が高いことを裏付ける結果であった。 E.coliではCCL, CXDを除きMIC
90は0.5~1μg/mlであった。
K.pneumoniaeに対する抗菌力はCFIX>CFDN=CPDX>CFTMの順であった。 近年, 問題となっているESBL産生菌ではほとんどが>4μg/mlを示した。
S.agalactiaeおよび
S.pyogenesには全ての薬剤が良好なMIC値を示した。 Methicillin sensitive Staphylococcus aureus (MSSA) ではCFDNおよびCXDで有効率が高かったが, 他の薬剤はほとんどが低値であった。 近年, 経口抗菌薬の繁用によりセフェム系に対する耐性化が進んでいる。 ESBLではその耐性が高度なため有効, 無効が比較的明瞭であるが, Penicillinb inding protein (PBP) の変異では耐性度が軽度のため治療効果について判定することが困難であることが多い。
S.pneumoniaeでは, PK/PDを用いた評価では通常投与量では有効率が低く, 一回投与量の増量や投与回数を増やす必要があると考えられた。 このように, 今後はPK/, D理論に基づいた有効性の評価を行い適切な抗菌薬治療を施行し, 耐性菌を増加させない投与方法を確立する必要があると考えられる。
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