臨床上適切な抗菌薬を使用するために, 2002年12月から2003年2月までに, 長野県内28基幹病院における呼吸器感染症分離菌のうち, 肺炎球菌 (
Streptococcus pneumoniae: S. pneumoniae) 140株, インフルエンザ菌 (
Haemophilus influenzae: H.influenzae) 131株, 緑膿菌 (
Plseudomonas aeruginosa: P.aeruginosa) 178株の分離状況及び各種抗菌薬に対する感受性の調査を行った。
結果は以下に示す。
1.
S.pneumoniael40株中,
penicillin-susceptible S.pneumoniae (PSSP) は47.1%, penicillin-intermediate
S.pneumoniae (PISP) は43.6%, penicillin-resistant
S.pneumoniae (PRSP) は9.3%であった。
2.PISPやPRSPでは, PSSP同様カルバペネム系抗菌薬やグリコペプチド系抗菌薬で高い抗菌活性が認められた。しかし, 一部の菌ではセフェム系抗菌薬やキノロン系抗菌薬に耐性を示す菌も認められた。
3.
H.influenzae131株中, ABPC感性インフルエンザ菌は73.3%, β-lactamase producing ampicillin resistant
H.influenzae (BLPAR) は8.4%, β-lactamase negative ampicillin resistant
H. influenzae (BLNAR) は18.3%であった。
4.BLPARやBLNARに対し, カルバペネム系抗菌薬やキノロン系は優れた抗菌活性を示した。しかし, 4つのカルバペネム系抗菌薬の中でも抗菌活性には差が認められた。セフェム系の中でも, 特にceftriaxone (CTRX) の抗菌活性は優れていた。
5.
P.aeruginosa178株中, 各種抗菌薬への耐性率はそれぞれおよそカルバペネム系11-16%, キノロン系15%弱, アミノグリコシド系0.6-8%であった。これら2系統の薬剤に耐性を認めた株は3株あったが, 3系統すべてに耐性を示す株はなかった。
6.今回検討した肺炎球菌, インフルエンザ菌, 緑膿菌に対する抗菌活性は, 同一県内であっても抗菌薬感受性に地域格差が生じていた。
以上より地域のサーベイランスを行うことは, 感染症の治療に当たり有益な情報提供となり得ると考えられた。
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