2002年8月から2003年7月までの間に全国13施設において, 尿路感染症と診断された患者から分離された菌株 (
Stophylococcus aureus, Enterococous faecalis, Escherichia coli, Klebsiella spp., Pseudomonas aeruginosa) を供試し, 各種抗菌薬に対する感受性を測定した. 菌株を単純性尿路感染症由来と複雑性尿路感染症由来 (カテーテル非留置とカテーテル留置を含む) の2群に分類し, 1993-2001年の感受性と比較した.
Smreusの薬剤感受性は, 2001年度までの成績と同等でVancomycin (VCM) が最も強い感受性を示した。E.faecalisの薬剤感受性も2001年度までの成績とほぼ同等であった.
E.coliの薬剤感受性は, ペニシリン系薬剤を除き, 全般的に良好で, 2001年度までの成績とほぼ同等であった. セフェム系薬剤で最も良好な感受性を示したのはCefozopran (CZOP>およびCefbirome (CPR) であった (MIC90:≤0.125μg/mL). Cefotiam (CTM) は10年前と感受性の低下はみられず, MIC90は≤1μg/mLと良好であった. カルバペネム系薬剤およびCanmonam (CRMN) に対する感受性もCZOP同様に良好であったが, キノロン系薬剤に対する複雑性尿路感染症群の感受性は, 2000年度以降低下しており, 耐性株の出現が示唆された. Klebsiella spp.の薬剤感受性は, 2001年度までの成績とほぼ同等であった.セフェム系薬剤ではCefmenoxime (CMX), CPR, Cefixime (CFIX), Flomoxef (FMOX), およびCZOPが良好で, そのMIC90は≤0.125μg/mLであった. Paeruginosaの薬剤感受性は全般的に低かった. セフェム系薬剤では, MICが≥256μg/mLの高度耐性株が散見されたが, CZOPおよびCeftazidime (CAZ) の複雑性尿路感染症群では, 感受性を示す株 (MIC:≤2μg/mL) が, それぞれ26.8% (15/56) および39.3% (22/56) 認められた. その他の薬剤に対する感受性は, 2001年度までの成績と大きく異なるものではなかった. しかし, カルバペネム系薬剤に対する感受性は, 2000年度ごろから低くなる傾向を示しており, Meropenem (MEPM) に対しては, 単純性尿路感染症群で22.2% (2/9), 複雑性尿路感染症群で3.6% (2/56) の株が高度耐性 (MIC: ≥256μg/mL) を示した.
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