The Japanese Journal of Antibiotics
Online ISSN : 2186-5477
Print ISSN : 0368-2781
ISSN-L : 0368-2781
61 巻, 4 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 帰山 誠, 水永 真吾, 満山 順一, 山岡 一清, 浅野 裕子, 澤村 治樹, 末松 寛之, 寺地 真弓, 土屋 雅子, 橋渡 彦典, 松 ...
    2008 年 61 巻 4 号 p. 195-208
    発行日: 2008/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    岐阜県下の医療施設において, 2005-2006年に分離・同定されたインフルエンザ菌 (Haemophilus influenzae) 194株の各種抗菌薬に対する感受性を測定し, 1999-2000年に分離されたH.influenzae280株の感受性と比較した。また, 2005-2006年に分離された株については, β-ラクタマーゼ (BL) 産生の有無, PBP3をコードするftsI遺伝子の変異, TEM型BL産生遺伝子の有無及び血清型を調べた。
    CLSIの基準等を参考にして, H.influenzaeを以下のように分類した。すなわち, BL非産生でampicillin (ABPC) 及びampicillin/sulbactam (ABPC/SBT) のMICが1μg/ml以下の株をβ-lactamase-negativeampicillin-susceptible (BLNAS), BL産生でABPC/SBTのMICが2μg/ml以下の株をβ-lactamase producing ampicillin-resistant (BLPAR), BL非産生でABPC及びABPC/SBTのMICが2μg/ml以上の株をβ-lactamase-negative ampicillinresistant (BLNAR), BL産生でABPC/SBTのMICが4μg/ml以上の株をβ-lactamaseproducingamoxicillin/clavulanicacid-resistant (BLPACR) とした。
    1999-2000年分離株では, BLNAS71.8%, BLPAR7.9%, BLNARl9.6%, BLPACRO.7%の分離頻度であったが, 2005年-2006年分離株ではBLNAS38.1%, BLPAR4.6%, BLNAR54.6%, BLPACR2.6%であり, BLNAS及びBLPARが減少し, BLNAR及びBLPACRの分離頻度が増加していた。
    ftsI遺伝子の変異及びTEM型BL産生遺伝子の有無に基づき, 2005-2006年分離株を分類したところ, gBLNAS24.2%, gBLPAR4.1%, gLow-BLNARlO.8%, gBLNAR57.7%, gBLPACR-II3.1%であり, 薬剤感受性による分類に比べてgLow-BLNARとgBLNARを合わせたBLNARの割合が高かった。
    2005-2006年分離株に対する各種抗菌薬のMIC50, MIC90は, garenoxacinで0.0039, 0.0156μg/ml, tosufloxacin及びciprofloxacinで0.0078, 0.0l56μg/ml, levofloxacinで0.0156, 0.0313μg/ml, norfioxacinで0.0313, 0.0625μg/ml, piperacillin/tazobactamで0.0625, 0.25μg/ml, piperacillinで0.0625, 0.5μg/ml, ceftriaxone及びcefditorenで0.125, 0.25μg/ml, ceneram, chloramphenicol及びtetracyclineで0.5, 1μg/ml, cefbtaximeで0.5, 2μg/ml, ABPC, ABPC/SBT及びcefdinirで2, 8μg/mlであった。1999-2000年分離株と比較すると, 2005-2006年分離株に対するβ-ラクタム系薬のMIC50は4倍以上に上昇した。
  • 後藤 元, 武田 英紀, 河合 伸, 渡邊 卓, 岡崎 充宏, 島田 馨, 中野 邦夫, 横内 弘, 森 健, 猪狩 淳, 小栗 豊子, 山 ...
    2008 年 61 巻 4 号 p. 209-240
    発行日: 2008/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    2005年10月-2006年9月の間に全国12施設において, 下気道感染症患者366例から採取された検体を対象とし, 分離菌の各種抗菌薬に対する感受性および患者背景などを検討した。これらの検体 (主として喀痰) から分離され, 起炎菌と推定された細菌411株のうち406株について薬剤感受性を測定した。主な分離菌の内訳はStaphylococcus aureus70株, Streptococcus pneumoniae85株, Haemophilus influenzae78株, Pseudomonasaemginosa (非ムコイド型) 46株, P.aeruginsa (ムコイド型) 14株, Klebsiellapnumonin21株, およびMomxella subgenus Branhamella catarrhalis 40株であった。
    S.aureus70株のうち, Oxacillin (MPIPC) のMICが2μg/ml以下の株 (Methicillin-sensitive S.auns: MSSA) およびMPIPCのMICが4μg/ml以上の株 (Methicillin-resistant S.amus: MRSA) は, それぞれ38株 (54.3%) および32株 (45.7%) であった。MSSAに対しては, Imipenem (IPM) の抗菌力が最も強く, 0.063μg/mlで37株 (97.4%) の発育を阻止した。MRSAに対しては, Arbekacin (ABK) およびVancomycin (VCM) の抗菌力が最も強く, 1μg/mlで全菌株の発育を阻止した。S.pnumoniaeに対する抗菌力はカルバペネム系抗菌薬が最も強く, 特にPanipenem (PAPM) は0.063μg/mlで全菌株の発育を阻止した。Faropenem (FRPM) の抗菌力も良好で, 0.25μg/mlで全菌株の発育を阻止した。これに対して, Erythromycin (EM) およびClindamycin (CLDM) では, 高度耐性株 (MIC: >128μg/ml) が, それぞれ32株 (38.1%) および19株 (22.6%) 検出された。H.influenzaeに対する抗菌力はLevonoxacin (LVFX) が最も強く, そのMIC90は0.063μg/mlであった。ムコイド型P.aeruginosaに対しては, Meropenem (MEPM) が最も強い抗菌力を示し, そのMIC90は0.59μ/mlであった。非ムコイド型P.aeruginosaに対してはABKが最も良好な抗菌力を示し, そのMIC90は8μg/mlであった。K.pneumoniaeに対する抗菌力は, Cefo.zopran (CZOP) が最も強く, 0.063μg/mlで全菌株の発育を阻止した。M (B.) catarrhalisに対しては, Ampicillin (ABPC) を除くいずれの薬剤も比較的強い抗菌力を示し, MIC90は2μg/ml以下であった。
    呼吸器感染症患者の年齢分布は, 70歳以上が全体の53.6%と半数以上を占めた。疾患別では, 細菌性肺炎および慢性気管支炎の頻度が高く, それぞれ44.3%および29.8%であった。細菌性肺炎患者から多く分離された菌は, S.aureus (15.4%), S.pneumoniae (23.4%) およびH.influenzae (21.3%) であり, 慢性気管支炎患者においてはS.aureus 25.4%) とS.pneumoniae (18.0%) の分離率が高かった。抗菌薬投与前の呼吸器感染症患者から多く分離された菌は, S.pneumoniaeおよびH.influenzaeで, その分離頻度はそれぞれ22.0%および21.4%であった。前投与抗菌薬別に分離菌種を比較したところ, マクロライド系抗菌薬が投与されていた患者からS.pneumoniaeおよびP.aemginosaが多く分離され, その分離頻度はいずれも35.3%であった。
  • シプロキサン®注第3回特別調査 (2005年)
    山口 恵三, 石井 良和, 山中 喜代治, 渡邉 直樹, 上原 信之, 賀来 満夫, 岡部 忠志, 伊東 紘一, 長沢 光章, 馬場 尚志, ...
    2008 年 61 巻 4 号 p. 241-268
    発行日: 2008/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    注射用cipronoxacin (CPFX) の再審査期間中に, 重症感染症患者からの臨床分離株を用い, CPFXおよび各種注射用抗菌薬に対する薬剤感受性特別調査を目的とした全国サーベイランスを3回実施することを計画し, 2001年から2005年にかけて全国39施設参加の下で実施した (Table 1)。すでに第1回目の特別調査 (2001年) については, その結果を本誌に報告した。今回, 第3回目の特別調査 (2005年) を全国34施設参加の下で実施し, 2005年1月から6月の間に各種臨床材料から分離, 同定された1,696株について, CPFXおよび各種注射用抗菌薬22種に対する感受性を微量液体希釈法で測定した。CPFXについては第1回目および第2回目の特別調査結果との比較検討も行った。
    Methicillin-susceptible Staphylococcus aureus, Streptococcus pneumoniae, Streptococcuspyogenes, Moraxella catarrhalis, Haemophilus influenzae, Klebsiella spp, Citrobacter freundii, Enterobacter spp., Proteus spp., Serratia marcescens および Acinetobacter baumanniiにおけるCPFXのMIC90は≤0.063-2μg/mLであり, 第1回および第2回と大きな変動はなかった。しかし, BrcherichiacoliのCPFX感受性率は第2回および第3回の調査においていずれも, 第1回特別調査に比べて低下していた。また, Morganella morganiiおよびPseudomonas aeruginosaでは, 経年的にCPFXのMIC90は大きくなる傾向にあった。肺炎のブレイクポイントに基づいて算出したCPFXに対する感受性率のうち, Pseudomonasaemginosaは85.2%, Stenotrophomonas maltophiliaは67.9%であり, この2菌種を除く主要な呼吸器感染症起因菌に対しては90%以上と高率であり, 第1回および第2回特別調査結果とほぼ同様であった。また, CPFXに対するこれらの感受性率はcefozopranあるいはimipenemと同等であった。これらの結果より, 主要細菌に対するCPFXの薬剤感受性試験結果は概ね良好と考えられ, 特にグラム陰性菌に対する抗菌力が優れていた。なお, 今後は経年的に感受性の低下傾向がみられたEscherichia coli, Morganella morganiiおよびPseudomonas aeruginosaの感受性動向について監視していく必要があると考えられた。
  • 齋藤 充生
    2008 年 61 巻 4 号 p. 269-288
    発行日: 2008/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    医薬品の副作用は担当医の専門分野とは異なる臓器にも発生し得ること, 重篤な副作用の発生頻度は一般に低く, 臨床現場において遭遇する機会が少ない場合があり得ることなどから, 初期症状が見逃されることがある。厚生労働省では, 平成17年度から4年計画で「重篤副作用総合対策事業」を実施し, その一環として, 患者及び一般医療従事者を対象とした重篤副作用疾患別対応マニュアルの作成を進めている。本稿では, 重篤副作用対策マニュアルの作成目的, 作成状況について紹介するとともに, 公開されたマニュアルのうち, 抗生物質, 抗菌薬が原因医薬品として挙げられているものについて, 簡単に紹介する。
    平成20年6月末現在, 29の副作用マニュアルが公開され, そのうち, 抗生物質・抗菌薬が関与する薬剤として挙げられているのは16あった。抗生物質・抗菌薬は現代の医療に必須であるが, 抗生物質・抗菌薬の使用に当たっては, これらの標的臓器以外に発生する重篤副作用にも注意を払い, 初期症状を見逃さないことが重要である。
feedback
Top