医療
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36 巻, 10 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 吉岡 秀憲, 安冨 徹, 田代 真一
    1982 年 36 巻 10 号 p. 943-947
    発行日: 1982/10/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    特発性門脈圧亢進症の病因を究明するため自己抗体及び特定の臓器に対する抗体を検索した. 自己抗体の検索には既製の抗体との反応を検査し, 臓器に対する抗体の存在には免疫化学の方法を用いた. 使用した臓器は肝, 脾及び門脈血管で, これを125Iでラベルし, 血清との間に2抗体法で抽出した後, polyacrylamide gel electrophoresisにかけた.
    本症の患者は1つ以上の自己抗体と反応したが他の肝疾患では認めなかつた.
    肝, 脾に対する抗体が本症の患者の血清にみられ, 肝, 脾と同一の分子量を有する抗原に反応した. 3例共分子量は異なつていた. 他の肝疾患及び健康人では認められなかつた.
    以上の所見より本症の患者の血清は何らかの自己抗体とcross bindし, 肝, 脾に対する共通の抗体が存在する可能性がみられた. これは本症の成因が肝と脾に対するimmune attackによるものかも知れない. 抗原のspecificityに更に検討を要するものと思われる.
  • 矢毛石 陽三, 吉田 冲, 重清 政章, 洲鎌 盛一, 玉置 博, 庄野 勉
    1982 年 36 巻 10 号 p. 948-953
    発行日: 1982/10/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    緊急食道静脈瘤出血時の処置として種々の方針がとられているが, 肝性脳症を伴つたリスク不良症例や, 肝癌や門脈血栓を伴つた場合には, 救急手術も行い難い. 最近とりあげられている内視鏡下の硬化栓塞療法や, 経門脈的栓塞療法も, 実際臨床上は施行し難い場合が多い. 私どもは従来から, 摘脾, 労食道血行郭清とともに行われて来た器械吻合による食道離断術を, 単純化, 迅速化し, 最小限の手術侵襲とすることにより, 従来ならば救急手術を回避していた症例に応用施行することにより, 重症例の緊急出血をかなり良好な成績で救命, 延命出来たと考えるので, 緊急手術として11例, 標準手術施行不能例に対して6例の合計17例の経過について報告した.
  • 吉岡 秀憲, 酉川 勝仁, 田北 秀夫, 土屋 宜之, 西脇 洸一, 小泉 欣也, 工藤 昂, 岡本 美穂二, 牧野 耕治, 安冨 徹
    1982 年 36 巻 10 号 p. 954-958
    発行日: 1982/10/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    食道静脈瘤より出血を来した23例に手術が行われた. うち18例は出血時に緊急手術が行われ, 5例は保存的に止血した後再出血が予想されたため短期間の後手術が行われた. 20例は肝硬変症で3例は特発性門脈圧亢進症であつた. 年令では50才台をピークに, 次いで40才台に多かつた. 肝硬変例は男性が大多数であつた. 直達手術が19例に行われ, 門脈体循環シヤント手術が4例に行われた. 手術死亡は4例でいずれも肝硬変症で肝不全のため術後早期に死亡した. 最長10年4ヵ月, 最短1年の経過を観察し, この間6例が死亡した. 3例は肝癌合併により死亡し, 2例はアルコール性肝不全により死亡した. 他の1例は原因不明の死をとげた. 術後の食道静脈瘤の残存については, 食道離断の13例中2例に, シヤント手術では3例全例に程度は軽いが認められた. シヤント後の肝性脳症の発現はみられていない.
  • 西海 正彦, 佐藤 昭雄, 竹内 広
    1982 年 36 巻 10 号 p. 959-963
    発行日: 1982/10/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    国立東京第二病院内科で扱つたSLE32例につきその血管障害について臨床的, 免疫学的および一部病理組織学的に検索した. 9例(28%)に血管障害が認められた. これらは臨床的に手指潰瘍(6例), 下腿皮膚の類壊死(2例), 指先部壊疽(1例), 全身性血管炎(1例), 肺高血圧症(1例), その他毛細血管炎によるものなど障害血管の大きさと分布により多様な臨床症状を認めた. 血管障害を示したSLE症例にはレイノー現象が多く腎症は少なかつた. 自己抗体ではnRNP抗体を有するものが多かつた. また一部に補体結合性DNA抗体を含む免疫複合物が血管障害の発症に関与していると考えられる症例が認められた.
  • ―我が国の国立療養所における食塩摂取量の調査―
    国立療養所循環器研究会
    1982 年 36 巻 10 号 p. 964-967
    発行日: 1982/10/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    我が国は食塩摂取量が多く, それに比例して高血圧の発生頻度も高いとされている. しかし近年食習慣の改善により, 食塩摂取量はかなり少なくなつてきているのではないかと期待されている. 今回我々は我が国各地の食塩摂取量を正確に把握するため, 国立療養所循環器研究会に所属する施設を中心として, その地域の食塩摂取量を測定しようと試みた. まず最初に各施設における食塩摂取量を正確に測定し, 今後の調査の基礎資料とした. 入院中の患者の24時間尿中のNaとクレアチニンを3日連続測定し, 食塩摂取量を推定した. 全施設の平均は10.81±3.15g/日と1日11g以下であつたが, 最も多い施設は最も少ない施設の1.8倍の食塩を摂取している成績を得た. 3日連続測定し, 各日の間の相関関係をみてみると, 良い相関関係にあり, 1日の測定で代表出来るであろうという成績を得た.
  • 矢野 方夫
    1982 年 36 巻 10 号 p. 968-971
    発行日: 1982/10/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    前置血管はまれな産科合併症で, 大部分は分娩後に診断されることが多く, 母体への影響はないが, 胎児死亡率は極めて高く50~100%といわれる. したがつて早期の診断と治療が大切である. 1978年国立東京第二病院産科において2例の前置血管を経験した. 1例は一部前置胎盤に前置血管を合併した極めて稀な症例で, 分娩前前置血管の疑いを持ち, 帝王切開分娩をしたが児を救命し得なかつた. 他の1例は陣痛発来と同時に児心音の悪化を認め緊急帝王切開を施行し, 術後に前置血管と診断されたもので児を救命し得た. 分娩前に診断がつけばもち論, 何らの症状がなく, 急激な児心音の悪化を認めた場合は前置血管に疑いをもち, 帝王切開, 鉗子, 吸引などによる分娩に踏み切るべきである.
  • 柴田 昇, 田代 豊一, 有吉 孝
    1982 年 36 巻 10 号 p. 972-974
    発行日: 1982/10/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    右下肢腫脹, 右鼠径部腫瘤を主訴として来院した38才, 女性の症例で, 術前悪性腫瘍を疑い腹膜外に開腹した. 腸骨静脈から大腿静脈にかけての悪性腫瘍で, 組織学的に平滑筋肉腫と判明した. 術後外来で経過観察中である. 本邦では静脈原発の平滑筋肉腫症例は2例のみ報告されている.
  • 山地 康文, 西海 正彦, 中村 公一, 村木 良一, 徳永 信三
    1982 年 36 巻 10 号 p. 975-978
    発行日: 1982/10/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    膠原病諸疾患に伴う皮膚潰瘍はしばしばステロイド剤他に反応せず「難治性皮膚潰瘍」と呼ばれる. 我々はMCTD, 強皮症, および悪性慢性関節リウマチの各1例に認めたそのような皮膚潰瘍に対し, プロスタグランデインE1の朝夕2回長期連日点滴静注療法を試み, いずれにも有効であつた. この方法は動注法に比較し得る効果があり, 副作用はむしろ少なく, 居者の苦痛も少ないので今後試みられるべき治療法であると考えられた.
  • 青木 義雄, 小坂 諭, 堀 誠
    1982 年 36 巻 10 号 p. 979-985
    発行日: 1982/10/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    1979年から1981年における, 小児期細菌感染症の各症例から分離された, 黄色ブドウ球菌のうち, 各年次別に有意の100株を用いて, 抗生物質20剤の感受性パターン, 入院, 通院患者別分離株の耐性分布率, 交差耐性像, Phage型別率などの年次的な推移を検討した結果, 年次別, 薬剤別による差はみられたがPCs, AGs, CEPs及びその他の薬剤に対して, 耐性株の分布率は多くの薬剤でやや増加の傾向が見られている. 入院, 通院患者別分離株の各薬剤に対する耐性株分布率は, 経年次的に両由来株は接近し, なかには通院患者分離株が入院患者分離株を凌駕している薬剤も散見される. 交差耐性株の分布率は, 5剤以下の群では通院患者分離株に多いが, 6剤以上多剤の交差耐性株の分布率となると, 入院患者分離株に著しく多い. Phage型別率の推移は1968年から1981年の14年間のものであり, その経過より推察すると, 4年を1つの周期としてI群, III群のPhage型別菌が交互に分離株の主流をなしているように考えられた.
  • 上田 泰章
    1982 年 36 巻 10 号 p. 987-992
    発行日: 1982/10/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    昭和48年6月より奈良県北部地方にて, 単独医により, 施設と出張検診の併用による乳癌の集団検診を開始した.
    昭和56年9月末までに20253名の受診者があり, 34名の乳癌を発見した. (発見率0.168)出張検診の方が受診者が多かつたが, 施設検診の方が乳癌の発見率は高い.
    受診者の年令では30才代に受診者が最も多く, 30才代より50才代までの発見率は余り差がないが, 60才以上では発見率は高くなるが, 20才代には発見乳癌はない.
    精検率は検診開始2年間は高いが, 徐々に低下し, 平均3.8%である.
    発見率は新住民の増加が著明である町部に高く, 村部ではわずか1名である.
    発見乳癌は病期の早期のものが多く, 34例中29例は1期(85.3%)で, 組織学的に6名に腋窩リンパ節転移があつたのみである.
  • 土岐 博信, 石川 盛寛, 和田 俊裕, 湯本 泰弘, 石光 鉄三郎
    1982 年 36 巻 10 号 p. 993-997
    発行日: 1982/10/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    症例は, 27才男性で, 末梢血と骨髄に異型性のある骨髄芽球がみられ, 急性骨髄性白血病と診断された. 特徴的なことは, 骨髄塗抹標本の鉄染色で, ringed sideroblastがみられ, 骨髄血での染色体分析では, 8トリソミーがみられたことである. 患者は, 2ヵ月間の経過観察中に, 突然, 脳出血のために死亡した.
    本症例は, 鉄芽球性貧血が10年間の経過ののちに急性骨髄性白血病に移行したものと考えられ, 特異な8トリソミー染色体異常を伴う興味ある症例であるので, 文献的考察とともに報告する.
  • ―全経過が極めて短かつた自験2剖検例を中心に―
    三宅 周, 河野 宏, 植田 昌敏, 浮田 実, 尾上 公昭, 杉山 明, 岩原 定可, 荒木 文雄
    1982 年 36 巻 10 号 p. 998-1004
    発行日: 1982/10/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    スローウイルス病と考えられている脳疾患であるCreutzfeldt-Jakob病(C-JD)と胃疾患の合併した2例を報告する. 症例1は69才男性で, 意識レベルの低下を主訴に来院し, 発症後の全経過1月11日で死亡し, 剖検にて胃癌, 肝硬変, 肺気腫などがみられた. 症例2は69才女性で, 下血, 貧血を主訴に来院し, 発症後15日目に死亡し, 剖検では胃潰瘍, 脂肪肝, 陳旧性肺結核, 腎萎縮, 卵巣のう腫, 後腹膜出血などを認めた. 脳は組織上どちらも空泡変性と神経細胞の萎縮ないし消失があり, 黒質にはクル様斑があり, 芯の部は銀, PAS, コンゴレツド陽性であつた.
    本邦におけるC-JDは, 1975年の水野の集計によれば27例にすぎない. C-JDと胃疾患との合併例の報告はいまだにみられない. 偶然の合併の外に, 胃潰瘍の場合Cushing潰瘍と同様の機序, 自律神経失調などによることが考えられた. 他に, C-JDと皮膚疾患との合併例が2例報告されている.
  • 大塚 一成, 朔 元則, 山田 寛保, 上尾 裕昭, 鎌田 重之, 牛島 賢一, 増田 正孝, 池尻 泰二
    1982 年 36 巻 10 号 p. 1005-1009
    発行日: 1982/10/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    昭和44年1月より昭和53年12月までの10年間に, 国立福岡中央病院にて手術を行つた1030例の胃癌症例のうち, 切除不能であつた111例について, その臨床像を種々の角度から検討した. 非切除例の直接生存率は, 6ヵ月生存率22.6%, 1年生存率4.7%であり, 術後平均生存日数は123日であつた. この生存率は, 単開腹や胃腸吻合術などの術式の違い, 患者の年令, 性, あるいは化学療法の種類などによつて有意の差をみることは出来なかつた. しかしこの結果を同一期間中に行つたStage IV症例に対する絶対非治癒切除例22例の成績と比較すると, 絶対非治癒切除であつても6ヵ月生存率63.6%, 1年生存率31.8%を得ることが出来ており, その差は歴然たるものがあつた. たとえ肝転移や腹膜転移が高度であつても, 可及的に主病巣を切除することが延命につながることが明らかとなつた.
  • 高嶋 成光, 吉澤 順一, 平井 隆二, 森脇 昭介
    1982 年 36 巻 10 号 p. 1010-1014
    発行日: 1982/10/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    過去1年6ヵ月間に国立病院四国がんセンターで施行した乳腺細胞診は371例であり, このうち乳頭分泌物, のう胞液細胞診を除いた288例の穿刺吸引細胞診を対象に触診, ゼロマンモグラフイー, 超音波診断と比較し, その適応と限界を検討した.
    乳癌85例に対する細胞診正診率は76.5%であり, 触診65.9%, ゼロマンモグラフイー54.1%, 超音波診断50.6%に比べ良好であつた.
    組織型別では細胞診は硬癌の成績が劣つているが, 他の診断法では逆に硬癌の成績は良好であり, これらを併用することにより, 硬癌の正診率低下を防止できる.
    細胞診は的確に腫瘤を穿刺し, 細胞が採集できれば, 大きさにかかわらず診断可能であり, 他の診断法に比べ微小例の診断に有利である.
  • 高橋 信介, 豊田 純三
    1982 年 36 巻 10 号 p. 1015-1018
    発行日: 1982/10/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    炭酸リチウムなどを含め, 大量の向精神薬療法によつても長期間何らの変化を示さなかつた精神分裂病による多動, 衝動的衒奇症状及び重篤な不眠に対し, GABAが著効を呈した2症例を報告した. 症例1には39, 症例2には1.5gを従来の向精神薬と併用した.
    GABAは血液脳関門を通過せず, またその中間代謝産物の効果も考えられない. 従つてGABAの神経筋接合部に対する抑制性の末梢作用によつて, 筋肉からの求心性インパルスパターンが恒常的に変化し, これによつて中枢での精神運動性表出に対する反応水準, すなわち閾値が変化して新たに設定される(Reset)可能性のあることを推定した.
  • IV. 車椅子
    椿原 彰夫, 本田 哲三, 大谷 清
    1982 年 36 巻 10 号 p. 1019-1021
    発行日: 1982/10/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
  • 1982 年 36 巻 10 号 p. 1022-1024
    発行日: 1982/10/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
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