スローウイルス病と考えられている脳疾患であるCreutzfeldt-Jakob病(C-JD)と胃疾患の合併した2例を報告する. 症例1は69才男性で, 意識レベルの低下を主訴に来院し, 発症後の全経過1月11日で死亡し, 剖検にて胃癌, 肝硬変, 肺気腫などがみられた. 症例2は69才女性で, 下血, 貧血を主訴に来院し, 発症後15日目に死亡し, 剖検では胃潰瘍, 脂肪肝, 陳旧性肺結核, 腎萎縮, 卵巣のう腫, 後腹膜出血などを認めた. 脳は組織上どちらも空泡変性と神経細胞の萎縮ないし消失があり, 黒質にはクル様斑があり, 芯の部は銀, PAS, コンゴレツド陽性であつた.
本邦におけるC-JDは, 1975年の水野の集計によれば27例にすぎない. C-JDと胃疾患との合併例の報告はいまだにみられない. 偶然の合併の外に, 胃潰瘍の場合Cushing潰瘍と同様の機序, 自律神経失調などによることが考えられた. 他に, C-JDと皮膚疾患との合併例が2例報告されている.
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