治療継続にもかかわらず, 特に終末期に近づく頃は本人も懸命に努力してたのに救命し得ず55歳で死亡した慢性膵炎の長期臨床経過と剖検所見を報告する.
35歳, 十二指腸潰瘍でBillrothII法胃切除. 38歳, 慢性膵炎(アルコール性, 膵石症)の診断. 43歳, 糖尿病出現. 血糖コントロール不良で, 低栄養状態強く, 当院受診(48歳)Kwashiorkor徴候, 39.5kg, 164cm, 血清蛋白5.79/dl, コレステロール145mg/dl. 消化酵素剤, 鉄剤, 脂溶性ビタミン, 半消化態栄養, インスリン(1日58単位)投与により改善. その後(53歳時)インスリン使用量は減少し1日16単位. 54歳, 肺炎・胸膜炎にしばしば罹患, 高血圧症・尿蛋白出現. 49kg, 血清蛋白6.8g/dl, コレステロール164mg/dl, クレアチニン0.7mg/dl, 血圧コントロール困難55歳, 心不全発症, 肺水腫. 剖検所見:膵萎縮著明, 肝脾鬱血, 心筋肥大, 泡沫状喀痰, 食道癌(限局性). 死因としては心不全が示唆され, 糖尿病性血管障害が心不全をもたらした一因と考えられた. 胃切除と慢性膵炎に基づく低栄養状態も血管障害の進行に関係したと思われる. 入院を繰り返し(当院11回), 仕事に専念することはなかった
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