メタボリックシンドロームは, 内臓脂肪の蓄積をともなう腹部肥満に脂質異常, 血圧高値, 血糖高値が重複合併した病態である. メタボリックシンドロームを呈する者は多く, 厚生労働省が発表した平成17年度国民健康・栄養調査によると, 中高年者におけるメタボリックシンドロームやその予備軍は男性で2人に1人, 女性で5人に1人であった. わが国のメタボリックシンドロームの診断基準は腹部肥満を必須項目としており, 腹囲径で男性85cm以上, 女性90cm以上とされているが, 外国の診断基準では男性が女性より腹囲径は大きくなっている. メタボリックシンドロームは, 過食や運動不足など日常の生活習慣に密接に関連しており, 心筋梗塞や脳梗塞など動脈硬化性の心血管疾患をきたしやすいことから注目されている. 生活習慣病は, わが国における死因別死亡割合や, 国民医療費の約1/3を占めており, 今後, 人口の高齢化がさらに進展することからその割合は一層増加するものと考えられる. 生活習慣病の対策は疾病予防, 医療の視点からだけでなく社会的にも重要で, 生活習慣病を危険因子として発症する動脈硬化性疾患をいかに予防するかが今後の課題である. メタボリックシンドロームについては, 動脈硬化の危険因子重複の危険性を十分認識して, 治療と管理を行い, 患者にとって良好なQOLが維持できるように, 生活習慣の改善に向けた自己管理への動機づけや教育, 看護が求められる. また, 医療機関だけでなく地域と連携を図ることがメタボリックシンドロームを含む生活習慣病への対策として重要であり, 2008年4月からの厚生労働省の新しい健診, 生活習慣改善指導の義務化による成果が期待されている.
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