インフォームド・コンセントや医療情報開示を求める患者権利意識の高まりのほか, 医療内容の標準化・効率化・質向上, 在院日数短縮化, チーム医療促進など近年における医療改革に対応できるものとしてクリニカルパス(クリティカルパスともいう)が注目され, 多くの病院で導入されやすい疾患から導入されている。
一方, 今日多くの国立療養所が取り組んでいる神経難病は, ほとんどが成因不明, 治療法未確立, 慢性進行性, 看護・介護度が高いなどの特徴を有することから, 特に在院日数短縮化などクリニカルパスの目的に沿いにくい側面を有している.
そこで, 本シンポジウムでは, 序論:神経難病の特徴とクリニカルパス(CP)のほか代表的な神経難病として, パーキンソン病(PD), 脊髄小脳変性症(SCD)および筋萎縮性側索硬化症(ALS)を取り上げ, 神経難病医療に従事している4名の演者と2名の指定発言者により, 神経難病ではどの程度CPが応用できるか, その問題点などを講演していただくことにした.
川井氏は, 日本の医療特に難病では, 患者と医療従事者にコスト意識が低いことを指摘したのち, 神経難病でも目的が明確であること, 頻度が高い等の条件があればCPが役立ち, 患者満足度が向上したかなどの評価が必要と論じた.
水田氏は, PDでは治療結果が予測できないことから大まかな病態ごとにCPを作成すべきと論じた.
金原氏は, 患者満足度向上や患者自身の治療への積極的参加などを目的とするPDのCPが医療経済面でも寄与する可能性があると論じた.
中島氏は, SCDのCPでは, 診断確定のために遺伝子検査, MRI, SPECT検査を入れたものをつくる必要があると論じた.
今井氏は, ALSでは, 告知, 気管切開, レスパイト, 緩和ケアなど入院目的別に作成するのが良いと論じた.
望月氏は, 神経難病長期療養施設現場の声として, インターネット環境整備の必要性を論じた.
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