老年精神分裂病者について, 症伏の変化を病初, 最盛期と比較検討し, その特性と処遇上の問題点を考えた. 対象は(1)高令発病群, (2)慢性分裂病群, (3)精神外科手術を受けた群, (4)脳器質性障害の関与の明らかな群の4群, 計18例で平均67.7才, 平均経過年数は29.8年, 男女各10, 8例.各群を通じ高令化に伴い比較的消退した症状は頑固な閉居, 拒絶, 粗暴な振舞など行動面に関するもの, 児戯性, 空笑, 眉ひそめ, 易怒性など感情に関するもの, 関係・注察・追跡・嫉妬妄想, 街奇性, 歪んだ言語, 滅裂思考などで, これに反し残存するものは単純化し, かつ弛緩した幻覚, 被害・誇大妄想, 邪推的態度, 表面的・通俗的に変化した接触性, 自閉や孤立, 受動的, 依存的な意欲面などである.これらをとおしてPraecoxgefühlの減少, 感情・行動面の平坦化, 病的体験への距離をおいた態度, 受動的ながら集団生活など現実への再適応の傾向が指摘される. これらと対比して非分裂病群の特性が検討されたが(3)及び(4)群の分裂病者では, これら器質性疾患にみられる変化により病像が付加・修飾されている.
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