全国の国立病院, 療養所, 計250施設を対象にMRSA検出検査の実施状況, 入院, 外来別に受診患者のMRSA検出状況, MRSA検出入院患者の収容状況, 退院状況などについてアンケート調査を行い, 182施設(73%)より返送された回答の集計分析から次のような現状が明らかになった. MRSA検出検査は150施設は院内で, 11施設は外部依託検査で実施されていたが, 検査のやり方が必ずしも正確でない施設のあることが分かった. MRSA検出率(黄色ブドウ球菌検出症例数に対するMRSA検出症例数の百分比)が病院全体として, 正確に年間(12ヵ月)集計されている施設は国立病院(国病)群で36施設, 療養所群では16施設と少なく, 院内の感染情報のシステム化は不十分であった. 国病36施設の平成2年度の入院患者のMRSA検出率は6~81%(31施設は60%以下), 外来患者のMRSA検出率は0~61%(22施設は10%以下)で入院患者のMRSA検出率が高値であった. 療養所16施設のMRSA検出率は入院患者で0~50%, 外来患者で0~20%であり, 国病群に比べて低値であった. MRSA検出入院患者の収容状況については, 回答のあった147施設のうち, 質問項目の複数回答で, 59施設(40%)はMRSA検出患者全員を個室収容しており, 75施設(51%)はMRSA検出患者の一部を個室, 他はMRSA検出患者のみ同室収容していた. 現状では比較的隔離収容されていると考えられる. MRSA検出患者の退院, 転院に関しては, 複数回答で, 約50%の施設はMRSAが消失するまでに退院, 転院させていないが, 約40%はMRSAが検出されている状態で退院, 転院させていることが明らかになった.
抄録全体を表示