長崎医療センターにおける高齢者19名について, BIPM(ビアペネム)の有効性の検討を行った. 投与されたBIPMの投与量は6.7mg/kg/dayであった. BIPMの母集団平均パラメータ(2コンパートメントモデル)を使用し, 患者19症例の血中濃度を計算した結果, Cmaxは18.40μg/ml, T
1/2/βは1.58hr
-1, CLtotは6.64L/hrおよび血中濃度―時間曲線下面積: area under the concentration-time curve (AUC)は49.98μg・hr/mlであった. C反応性蛋白: creactive protein (CRP)は有意な差はなかったものの改善傾向が認められた. 白血球: white blood cell (WBC) (P<0.0001)および体温(P<0.001)は改善した. 腎機能については, 19症例中1症例においてSCrが増加した.
Streptococcus pneumoniae (以下,
S. pneumoniae)の場合, %MIC以上の濃度を維持する時間: time above MIC (TAM)が50%以上になる到達確率: target attainment (TA%)は, 最小発育阻止濃度: minimum inhibitory concentration (MIC) (0.25μ9/ml)の場合97.5%で, MIC (0.5μ9/ml)の場合89.1%であることが示唆された. また,
Pseudomonas aeruginosa (以下,
P. aeruginosa)感染を想定した場合, MIC
50 (1μ9/ml)の場合, %TAMが50%以上になるTA%は56.2%であり, %TAMが30%以上になるTA%は90.3%であった. また, MIC
90 (16μ9/ml)の場合, %TAMが50%以上になるTA%は8.6%であり, %TAMが30%以上になるTA%は29.3%であった. これらのことより, BIPMに対して感受性が高くMICが低い
S. pneumoniaeに対しては, 1回300mg・1日2回の投与で, 有効性が得られる可能性がうかがえた. しかしながら, BIPMに対して感受性が低くMICが高い
P. aeruginosaの感染症では, 投与量の増量や投与回数の増加等の投与設計が必要と思われた. しかしながら, 代謝や排泄機能が悪化した高齢者への投与は, より慎重に行い投与設計の検討が必要と思われる.
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