胸焼け, 食後の嘔吐, 体重減少を示し, 食道アカラシアが疑われた抗セントロメア抗体陽性の66歳女性例を経験した. 患者は外科手術(Jekler-Lhotka法)を受け, 症状は寛解した. その際得られた食道壁の組織標本ではAuerbach神経叢の減少または消失がなく食道アカラシアの所見を認めず, 平滑筋層の萎縮消失と膠原線維の増殖による置換がみとめられ, むしろ強皮症(全身性硬化症)に合致する食道所見を示した. 自己抗体の検索では, 抗セントロメア抗体が陽性であった. この抗体はCREST症候群に疾患特異性が高いことから, 本例はそれら(calcinosis, Raynaud, sphenomenon, esophageal dysmotlity, scle-rodactyly, telangiectasia)の症状のうちの食道蠕動障害のみが出現し, 他の4所見が欠落する(または病期が初期のため, まだ揃っていない)まれな症例と考えられた, 今後は他の症状の出現の有無にっき注意深い経過観察が必要と考える.
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