日本大腸肛門病学会雑誌
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65 巻, 5 号
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原著
  • 岩谷 昭, 瀧井 康公
    2012 年 65 巻 5 号 p. 249-252
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/28
    ジャーナル フリー
    目的:大腸癌手術症例において血清p53抗体を測定し,腫瘍マーカーとしての臨床的意義を検討した.対象および方法:2002年3月から2004年12月までの間で,術前に血清p53抗体が測定された大腸癌手術症例450例について検討した.結果:陽性率は大腸癌全体でp53抗体20.7%と,CEAには劣るもののCA19-9と同程度だった.p53抗体のstage別陽性率はI:15.2% ,II:22.8%,III:24.6%,IV:31.7%であり,stage IではCEAより陽性率が高かった.p53抗体とCEA,CA19-9との間に相関関係はなかった.p53抗体値が治癒切除後も下降しなかった症例は10例あり,そのうち9例は再発をきたした.結論:血清p53抗体は,早期発見や術後モニタリングを行う上で,新たな大腸癌の腫瘍マーカーとして,有用である可能性がある.
臨床研究
  • 金澤 周, 山名 哲郎, 森本 幸治, 金子 由紀, 高橋 聡, 西尾 梨沙, 岡田 大介, 古川 聡美, 岡本 欣也, 佐原 力三郎
    2012 年 65 巻 5 号 p. 253-258
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/28
    ジャーナル フリー
    目的:Colonic inertiaに対する外科治療の適応と有用性につき検討する.
    対象・方法:Colonic inertiaの診断で手術を施行した4症例を対象とし,手術適応決定までの診断および手術と術後結果につき検討する.
    結果:Colonic inertiaの診断は臨床症状と大腸通過時間検査に基づき行い,保存的治療が困難な場合に限り,追加検査を施行し,手術適応を決定する.手術4症例は腹腔鏡補助下結腸全摘-回腸直腸吻合術を施行し,全例女性,平均35歳,精神疾患の既往はなく,術前は全例で排便補助を要したが術後は不要となり,退院後の排便回数は著明な改善を認めた.
    結論:Colonic inertiaに対する診断・手術適応は,各種検査を施行し慎重に行う必要がある.また,本症に対する腹腔鏡補助下結腸全摘-回腸直腸吻合術は,重篤な合併症を認めず,排便状況を改善することから,有用な術式と考えられた.
症例報告
  • 小島 正継, 目片 英治, 清水 智治, 園田 寛道, 竹林 克士, 石田 光明, 岡部 英俊, 谷 徹
    2012 年 65 巻 5 号 p. 259-265
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は48歳の閉経女性.腹部腫瘤,下腹部痛を自覚し受診.S状結腸に1cm大のIsp腫瘤を認め,生検の結果は腺癌であった.腹部CTでは両側卵巣に巨大な多房性嚢胞性腫瘤,肝にも同様の腫瘤を認めた.血清CEAは高値を示した.開腹したところ,大腸原発巣近傍腹膜に播種病変を認めた.術中迅速病理検査では,肝臓腫瘍,卵巣腫瘍はともに腺癌であり,大腸癌転移と診断した.S状結腸切除,D3リンパ節郭清,単純子宮全摘,両側付属器切除,播種病変切除を行った.術後診断は大腸SM癌であった.その後,化学療法,肝部分切除を行ったが,術後1年11ヵ月後に癌死した.大腸癌卵巣転移は稀ではなく,その予後は不良とされる.ただし,その大腸原発巣はほとんどが進行癌である.しかし,大腸早期癌であっても卵巣転移する可能性はあり,腹膜転移所見や卵巣の形態異常などを認めたときには,両側卵巣切除を考慮する必要があると考えられた.
  • 長谷川 毅, 日月 亜紀子, 金原 功, 妙中 直之
    2012 年 65 巻 5 号 p. 266-271
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/28
    ジャーナル フリー
    転移性卵巣腫瘍の原発巣として,大腸癌は比較的稀であるが,近年増加傾向にある.我々は,1999年~2009年7月までの約10年間に272例の女性大腸癌の切除症例を経験し,4例の異時性卵巣転移を経験した.症例1は73歳.横行結腸癌手術後2年4ヵ月に両側卵巣を切除し,その4年11ヵ月後に癌死した.症例2は66歳.直腸癌手術後1年3ヵ月に両側卵巣を切除し,その1年5ヵ月後に癌死した.症例3は35歳.横行結腸癌手術後6ヵ月に両側卵巣を切除し,術後3年9ヵ月に癌死した.症例4は60歳.S状結腸癌手術後1年1ヵ月に左卵巣を切除し,術後4年1ヵ月現在も生存している.大腸癌の異時性卵巣転移の本邦報告例は自験例を含めて36例であった.大腸癌異時性卵巣転移症例は予後不良であるが,外科治療と補助化学療法を併用することが長期生存に重要であると考えられる.
  • 岩川 和秀, 徳永 尚之, 常光 洋輔, 磯田 健太, 濱野 亮輔, 西江 学, 宮宗 秀明, 大塚 眞哉, 岩垣 博巳
    2012 年 65 巻 5 号 p. 272-276
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/28
    ジャーナル フリー
    悪性腫瘍が腹壁に再発し広範囲に腹壁を切除する場合は,腹壁再建が必要となる.今回われわれは,結腸癌の腹壁再発に対して,広範な腹壁切除術を施行し形成外科的に筋皮弁にて再建した症例を経験したので報告する.症例は78歳,女性.虫垂炎,腸閉塞,腹壁瘢痕ヘルニアの手術歴あり.3年前に盲腸癌に対して腹壁の一部合併切除を伴う拡大結腸右半切除術を受けていた.腹壁再発病変が皮膚へ露出し,S状結腸浸潤による腸閉塞をきたしたため準緊急に手術を行った.小腸,膀胱および子宮への浸潤部は部分切除を行い,S状結腸切除を伴う広範な腹壁切除を行った.腹壁欠損部は11×7cmの大きな欠損となったため右側大腿筋膜張筋皮弁による腹壁再建を行った.術後経過は順調で,良好なQOLが得られた.
  • 澁川 成弘, 西田 勉, 山田 拓哉, 新崎 信一郎, 飯島 英樹, 筒井 秀作, 辻井 正彦
    2012 年 65 巻 5 号 p. 277-282
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/28
    ジャーナル フリー
    治療抵抗性の潰瘍性大腸炎に合併した末梢関節炎にInfliximab(IFX)が奏功した1例を経験した.症例は20歳代,男性.2008年7月より直腸炎型の診断で治療が行われるも病勢コントロール困難であった.各種治療に抵抗性で,経過中に病型は全大腸炎型へと進展しADL低下を伴う末梢関節炎も出現したため,精査加療目的にて2010年4月当科転院となった.入院後,IFX 5mg/kgを開始したところ,末梢関節炎に対しては著効し,腸管病変に対しても奏功した.IFX導入6,15ヵ月目の評価として,腸管の画像所見に対するIFXの改善効果は軽度に留まっているが,貧血進行,血便・下痢回数の増加,腸管狭窄症状など認めず,腸管症状は安定したまま経過している.そして,IFX導入18ヵ月が経過した現在も,8週ごと5mg/kgにて維持投与継続中であり関節症状は著効を維持している.
  • 鈴木 紳祐, 木村 英明, 國崎 玲子, 遠藤 格
    2012 年 65 巻 5 号 p. 283-287
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は84歳女性.Crohn病に対して内科治療中に下腹部痛,発熱を主訴に受診した.来院時のCT検査でCrohn病による回腸穿通,回盲部腸間膜内膿瘍と診断した.保存的加療後にCT検査を再検したところPress Through Package(PTP)による回腸穿通を認めたため,回盲部切除術を施行した.術後経過は良好で現在外来通院中である.PTP誤飲による消化管穿通·穿孔はときおり経験するが,Crohn病の狭窄部にPTPが穿通した報告は,本邦では自験例のみであった.若干の文献的考察を交え報告する.
  • 伊藤 大介, 中島 紳太郎, 飯田 直子, 大熊 誠尚, 羽田 丈紀, 小川 匡市, 柏木 秀幸, 池上 雅博, 矢永 勝彦
    2012 年 65 巻 5 号 p. 288-293
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/28
    ジャーナル フリー
    隣接臓器の癌が経上皮性に連続して周囲表皮内に浸潤し,Paget病様の病理像を呈するPagetoid spreadと呼ばれる現象は比較的まれな病態である.一般的には皮疹,発赤,びらんなどの皮膚病変を伴うことが多いとされている.今回,我々は術前に肉眼的皮膚病変を認めなかったが,病理組織検査にてPagetoid spreadが診断された肛門管腺癌の1例を経験した.症例は77歳男性,排便時出血を主訴に当科を受診した.歯状線直上に15mm大の粘膜下腫瘍様の隆起性病変を認めた.生検の結果,肛門管腺癌と診断し,腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術(D2郭清)を施行した.術後,病理組織検査で肛門管から肛門周囲皮膚の扁平上皮内に浸潤するPaget様細胞が認められた.Pagetoid spreadを伴う直腸肛門管癌は比較的まれであり,皮膚病変が認められない場合には術前診断が非常に困難である.若干の文献的考察と検討を加えて報告する.
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